セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ロシュフォールの恋人たち」

2012-08-03 23:41:28 | 外国映画
 「ロシュフォールの恋人たち」(「LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT」1966年・仏)
   監督 ジャック・ドミィ
   音楽 ミッシェル・ルグラン
   出演 フランソワーズ・ドルレアック
       カトリーヌ・ドヌーブ
       ジョージ・チャッキりス
       ジーン・ケリー
       ミッシェル・ピッコリ

 「シェルブールの雨傘」のジャック・ドミィ監督が再びカトリーヌ・ドヌーブとミッ
シェル・ルグランを起用したトリオ第2作。
 「シェルブールの雨傘」がハリウッドと違うスタイルで独創性に溢れた作品だ
ったのに対し、この「ロシュフォールの恋人たち」はアメリカン・ミュージカルに
挑戦した作品と言えます。
 伝統あるアメリカに挑戦した勇気は認めます、ミッシェル・ルグランの作った
ナンバーにも優れたものが有りました、が、やはり、これはアメリカン・ミュージ
カルの亜流でしかない、フェイクにすぎないと思います。
 この映画を観て思い浮かぶものが多すぎるんです、「ウェストサイド物語」、
「巴里のアメリカ人」、「雨に唄えば」、ドミィ監督が「あんな映画を作ってみたい」
と思うのは勝手ですが、この作品は真似の範疇を出ていません。
 ジョージ・チャッキリス、ジーン・ケリーを呼んだ時点で勝負は付いてます。
 「あれ」をやってくれ・・・じゃね。
 あそこまで、何で「ウェストサイド物語」に拘るのか、僕には理解できない。
 オープニング・シーンしかり、「クィンテッド~トゥナイト」しかり。
 あの感覚を「ソフトで粋なフランス・スタイルに」と考えたのでしょうが、「ウェス
トサイド物語」は押さえきれない若いエネルギーとスピードを荒々しいダンスと
歌に昇華し、それをダイレクトに観客へ向けて爆発させたもの。
 定められた枠をぶち破るパワーが命だったものを、綺麗な枠の中に納めよう
とすれば、動物園の檻で昼寝してる虎を見せるだけになるのは当たり前なんで
す。
 ジーン・ケリーも「可哀そう」の極致、何ひとつ新しい挑戦はなく今までやった
事をなぞるだけ、彼である必要がまるでない、「退屈だったでしょう」と同情して
しまいます。
 また、ハリウッドなら、まずOKテイクにならないシーンが沢山有り、それが一
つ一つミュージカル映画としての質とテンションを落としているんです。
 やはり「シェルブールの雨傘」と違ってハリウッドと同じ土俵に上がってしまうと、
ハリウッドに「一日の長」が有り、簡単には埋められない差が歴然とありました。

 ナンバーの中では「双子座の姉妹」、「流れ者の二人」が好きです。
 ただ「協奏曲の第3楽章」は、チャイコフスキーとラフマニノフをごちゃ混ぜにし
たようなメロディで、M・ルグランの個性がまるで感じられませんでした。
 デルフィーヌ(C・ドヌーブ)の恋の行方の見せ方。
 この「恋」の落ち着き先は途中から完全に明らかなのですが、その落とし方は
実にフランス映画。
 この作品を評価するとしたら、ここだけかもしれません。(笑)

 長い間、未見のままだった作品で、常に「シェルブールの雨傘」の陰にいた作品。
 今回観た感想は「若い時の直感」に間違いはなかった・・・でした。


※ただでさえ、あの映画この映画を連想させるのに、それをやってる大セットが「ア
 メリカの夜」の撮影が行われたニースの撮影所っぽい。
 「アメリカの夜」のオープニング・シーンの屋外セットと「ロシュフォール~」の広場
 を囲むセットを比較してみて下さい。
 僕の中では「アメリカの夜」のセットの中で繰り広げられる、あの映画、この映画
 という感じででした。
※M・ピッコリが純真なオッサンというのは、意外すぎて可笑しい。
 
 

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6 コメント

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わたしもこれは (宵乃)
2012-08-04 13:01:36
あんまり楽しめなかったんですよね。理由は鉦鼓亭さんと違って、整然とした?ダンスが苦手という単純なものですが。
「ウェストサイド物語」も苦手で、ああいうビシィっとした動きとか、全員の動きが揃ってるとか、軍隊みたいで好きになれないんですよ。もっと自由に楽しむ雰囲気(実際は計算されてるんでしょうけど)が好きです。
わりと評判がよくて楽しみにしてたので、肩透かしでした。ハリウッドの真似っこだったのか~。
鉦鼓亭さんの直感が選んだ「シェルブールの雨傘」もいつか挑戦してみたいです。
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「ひきしお」~「ハッスル」、「終電車」の頃のドヌーブが好き (鉦鼓亭)
2012-08-04 17:17:18
宵乃さん、いらっしゃいませ!
 コメントありがとうございます。

全員の動きが揃ってるとか、軍隊みたいで好きになれないんですよ>
ピシッと決めなきゃいけませんから「軍隊調」という指摘は外れていないと思います。
ただ、ミュージカルのナンバーはオーケストラのコンチェルトだと僕は思っています。
バイオリン、フルート、ティンパニー、誰か一人でも音を外せば不協和音の記憶が残ってしまう、「ロシュフォール~」は「ウェストサイド~」と違ってテンポが遅いからシンクロしないと、余計、目だって(不協和音)しまうんです。
僕の中では、そこら辺もポイントを落とす原因になってます。
(「ウェストサイド~」だって完全には合ってないのですが許容範囲内、「アメリカ」なんて、どれくらいテイクを重ねたのか、想像を超えてます)


「ウェストサイド物語」>僕は日本のヤクザ(東映映画)が生理的と言っていいくらい大嫌いで、不良が主役の「ウェストサイド物語」も35年前見た時は、その影響で印象が世間ほど良くなかったんです(悪くはなかった)。
でも、又、映画をチラホラ見るようになって、レビューを見ると、殆んど大絶賛。
これは、再見しなければと思ってた時に「午前10時の~」が始まって。(笑)
府中で再見しました。
で・・・、評判通りでした。(笑)
特にジェット団、シャーク団、アニタ、トニー、マリア達が歌う「クインテッド(決闘~トゥナイト)」のシーンでは、生まれて初めて「背筋がゾクゾクッ」(言葉通り)としました。
長い間、ミュージカルは「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディ」の順番だったのですが、3年前から『ウェストサイド物語」がTOPになってます。

「シェルブールの雨傘」>宵乃さんには(ストーリーが)合わない!血が上りますからやめといた方がいいです。
僕は「シェルブール~」のラストシーンは「太陽がいっぱい」と並んで一番好きなんですけど、これはお勧めできません。

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ドヌーブはいい! (ロッカリア)
2012-08-08 23:51:45
音楽はとっても好きです。
最近ではCMで使われてましたけど。

ドヌーブのこの頃って、最高に綺麗でしたね。
『リスボン特急』でドロンと共演した時なんて、世紀の共演!なんて文字が躍ってました。
『うず潮』もいいですよ。

私も何故か、やくざ映画が苦手、と言うよりは嫌いでしたねぇ。
でも、『ウエスト~』と比較するとは、鉦鼓亭さんも結構斬新ですね~。
当時、そんな事は考えも付きませんでしたよ。
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ドヌーブのファースト・カットは美しかった (鉦鼓亭)
2012-08-09 22:34:18
 ロッカリアさん、こんばんは。
 コメントありがとうございます!

ちょ~っと化粧が濃くなかったですか?(笑)
何か人工的な感じがして・・・、一番、目が行ったのはカフェのウェイトレスでした。
ドヌーブ>この人も好きな女優さんで、あちこちの名画座にドヌーブ目当てで出掛けました。
「シェルブールの雨傘」も勿論、綺麗で初々しくて良いんですけど、「昼顔」、「哀しみのトリスターナ」の頃が綺麗のピークじゃないかと、僕は思っています。
ドヌーブの映画で好きなのは「シェルブール~」、「ハッスル」、「うず潮」、「ひきしお」、「終電車」。
(「反撥」は未見、「城の生活」は忘れてしまったので是非見直したい)

「リスボン特急」>この時でしたっけ来日したのは、「ロードショー」で大きく取り上げてましたよね。
名画座ですけど期待して観に行きました。
映画は余り二人を活かしきれてなかったような・・・。

「ウェストサイド物語」>やっぱり、変わり者なのかな、僕は。(笑)
当時、何か好きになれなかったんですよね。
期待が高すぎたのか、世評に反発したのかも。
ホントに日本のヤクザ映画は肌に合わなくて、でも「冬の華」だけは例外で結構好きでした、あと、健さんとミッチャムの「ザ・ヤクザ」も嫌いじゃないです。
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こんばんは☆ (miri)
2015-07-04 22:21:27
横入りのようで申し訳なかったのですが、鉦鼓亭さんが宵乃さんの記事へのコメントに書かれていた
「ローラは新聞記事の形で「ロシュフォール」に出てますね」のお言葉が気になり、再見しました♪

その件はたしかに出ていましたが、
「ローラローラ」という名前の60歳を過ぎた踊り子、白髪の小柄な老女
との事で、「ローラ」という映画の主人公とは別人物のようでした。

ただ、別件で、監督が「ローラ」という映画を愛していらっしゃった事がハッキリと分かった事と
初見時にイミフだった事が意味を持って納得出来た事で、再見して本当に良かったです。
この映画はあんまり再見する気がなかったので、そういう気持ちにさせて下さり、有難うございました♪

私の記事は9日木曜日に他の映画と共にアップしますので、
もし良かったらお願いいたします。

しかし、こちらの記事・・・笑・・・ちと酷いような気が???

>この「恋」の落ち着き先は途中から完全に明らかなのですが、その落とし方は実にフランス映画。
>この作品を評価するとしたら、ここだけかもしれません。(笑)

ここだけ??? だけ~???

>僕の中では「アメリカの夜」のセットの中で繰り広げられる、あの映画、この映画という感じででした。

そうですか・・・まぁ色々な映画をご存知なのでね・・・
私は初見が5年前なのですが、その時はまだほとんど何も知らなかったので楽しめました♪

>※M・ピッコリが純真なオッサンというのは、意外すぎて可笑しい。
 
これは・・・ピッコリさんがロミー・シュナイダーと共演していた作品では
こういう役柄がありましたですよ、ハイ☆
意外と思わない私が少数派だとは思いますが(笑)。

雨が多いですネ~! 岡本監督でスカッといきたいですネ☆


.
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汗 汗 汗 (鉦鼓亭)
2015-07-05 00:04:38
 miriさん、いらっしゃいませ!
 コメントありがとうございます

ローラ>60歳を過ぎた踊り子
ゲッ! ローラという名前に反応してしまったのか・・・。(汗)
他の方のブログで、あの「ローラ」が・・ってのを複数見たので、自分も錯覚してしまいました。
ありがとうございます!!
これで恥のタレ流しせずに済みます。(汗)

「シェルブールの雨傘」を初めて観たのは16,7、(男だって)「恋に恋してる」真っ最中(笑)。
「ロシュフォールの恋人たち」は巡り合わせの悪さも有って50代半ば・・・。(笑)
(10~20代の頃、シェルブールは上映が有ったけどロシュフォールは余り無かったと記憶してます、これ「観たい」で気になる作品でもあったので、当時、観れなかったのは、都合が余程合わなかったか、上映が殆ど無かったんだと思ってます)

M・ピッコリ>
意外と思わない私が少数派だとは思いますが(笑)。
>miriさんには、まるで敵わないけど、僕も彼をよく見掛けてるので、出てきただけで「コイツ、絶対、ウラがあるだろ」。(笑)
単純な役だと「ひきしお」が記憶に有るくらい。

岡本喜八監督
>「観てみなければ」という個人的興味と、もう一つ、シガラミという厭な理由で去年から追っています。
昔と、ここ1年で主要な作品は観た気になってたら。(爆)
初期の「暗黒街の顔役」と「江分利満氏の優雅な生活」を借りてきました。
借りる前も、借りた後も「どちらにしようか?」、未だ決めかねてます。(笑)
岡本監督は自身の個性を「諧謔」と言ってて、僕は「その線」を気に留めて観るようにしています。
(「諧謔」は、僕が何より大事に思ってる事の数少ない一つ(最近、錆びついてる))
今の所、「独立愚連隊」シリーズに(「血と砂」、「どぶ鼠作戦」を含む)、それを感じます。
只、監督の最高傑作は、若い時に観て、その後も何回か観た「日本の一番長い日」じゃないかと僕は思っています。

※岡本監督の視線(従軍当事者の怒り)は「日本の一番長い日」と「肉弾」で出尽くした気がします。
只、「肉弾」(ATG)は余りに安普請(予算)で、観てると居たたまれなくなってしまいます。
※今春、舞台挨拶でみね子夫人が、イラク戦争のニュース画像を見ながら「もう、戦争映画(フィクション)なんて作れないな・・・と当人が言ってたた」と話してました。
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