セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ダンガル きっと、つよくなる」

2018-04-07 23:35:28 | 外国映画
 「ダンガル きっと、つよくなる」(「Dangal」、2016年、印)
   監督 ニテーシュ・ティワーリー
   脚本 ニテーシュ・ティワーリー
   撮影 サタジット・パンデ
   音楽 プリータム・チャクラボルティー
   出演 アーミル・カーン
       ファーティマー・サナー (長女 ギータ)
       ザイラー・ワシーム (ギータ少女期)
       サニヤー・マルホートラ (次女 バビータ)
       スハーニー・バトナーガル (バビータ少女期)
       アパルシャクティ・クラーナー (従兄 オムカル青年期)

 ♪ダンガル!ダンガル!ゥォ ゥォ ダンガル!ダンガル!♪なのである。
 ダンガルとはヒンディ語でレスリング全般(レスラーを含む)を意味する言葉だとか。

 1970年代、アマチュア・レスリング国内チャンピオンにもなったマハヴィルだが、生活の為、引退、今は村でそれなりの尊敬を受けるだけの普通の人。
 彼の夢は息子をレスリングで国際大会金メダリストにする事だったが、生まれて来た子供は娘×4だった・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=rOrWAD5_tTA
  ※オリンピックは嘘、映画内では目標はあくまで国際大会で金メダルを獲る事になってます。
  ※確かにギータはロンドン・オリンピックに出場していますが、映画のクライマックスはコモンウェルス・ゲームズ(イギリス連邦国選手権)、オリンピック、世界選手権まで行くと吉田 沙保里選手、伊調 馨選手が壁になるからじゃないかな、ギータもバビータも彼女達には勝てなかった)

 小学生の娘二人(長女、次女)が同級生の男の子をボコボコにしたのを見て、マハヴィルは娘達に格闘技の才能が有る事を知り、突如、星一徹ばりの特訓を娘達に課す、自分の夢を実現させる為に。
 父親絶対主義で年端もいかない娘達が泣いて頼んでも聞かず、泣いて赦しを願っても女の命の髪まで切ってしまう絶対君主。
 しかし、インドの地方では、まだまだ、女は家事と産む道具でしかない現実を知り、父親の元へ戻る。
 そして、終盤、父親が長女に与える助言「敵はオーストラリアじゃない、女を下に見ている全ての人間だ」となります。
 映画としては、この前段と後段が上手く繋がっていない欠点がある、自分の夢の実現の為に娘を道具のように使っていた人間が、何時、啓蒙主義者に変身したのかと。
 でも、それが終盤の胸アツ展開で些細な瑕疵に思えてしまうくらい熱量がある。
 日本や欧米だったら、その転向を納得させるシーンを作らなければ到底受け入れられないけど、そこをインドは欧米・日本がとうの昔に置き捨てたパワーと熱量、そして、歌で誤魔化し(笑)押し切っちゃいます。
 この映画に関しては、そこで引っ掛かっちゃう人が、残念ながら、随分居るかもしれません。

 映画は面白いですよ、今年初めての鉦鼓亭イチ押し作品。
 この作品、スポ根ドラマの王道を少しも踏み外さず真っ直ぐに作っています、始り→反抗→特訓→挫折→と。
 でも、王道という定石はキッチリ作れば王道ならではの強靭な作品になりやすいし、ちゃんと成功してると僕は思います、終盤、涙ボロボロだったし館内のあちこちから泣いてる気配を感じました、女性は不向きかと思ったけど、かなりの数の女性が泣いていたと感じました。

 元々、アーミル・カーンはインドに於ける女性差別の解消を訴えてきた人で、上手く繋がっていないとは言え、後半部分には彼の思いがしっかりと入っていると思います。
 でも、演説になってない。
 そこが彼の選ぶ作品の良い所でインド映画の良い所、決してエンタティメントを忘れていないのが好きなんです。
 本当に彼の役者魂には恐れ入ってしまいます、「きっと、うまくいく」の大学生(40代で演じた)、「PK」の宇宙人、そして本作のレスラーを納得させる肉体の作り方、僕が最も尊敬するプロ中のプロの一人ですね。
 また、長女ギーダを演じたザイラー・ワシーム(少女期)、ファーティマー・サナー・シャイクの二人は本物の女子レスラーそのもので素晴しい好演だったと思います。(オーディションから適正を見て、採用後、長期の訓練をしたらしい)

 彼女たちの練習、撮影風景
 https://www.youtube.com/watch?v=kGZjouuqY4E
 半年以上、訓練したとか。インドの女優さんは大変だ・・・。

 冒頭、正直言えば字幕を追えなかったのでアヤフヤですが、「実話を盛った物語」と出てたのには、正直すぎて笑いました。(「ドリーム」も、これくらい素直なら・・・)
 取り敢えず、本年、暫定1位です。

 https://www.youtube.com/watch?v=x_7YlGv9u1g
 出演者全員スタントなしカメラトリック殆どなしのレスリングシーン、それだからこそ出る本物のリアルさ、素晴しい!!

※歌は何曲か入るけど踊りはありません。
※エンドクレジットに被さるテーマ曲?、燃える!!(笑〜エンドロールがリズムに合わせて妙にカクカクするのも可笑しい)
※従兄のオムカル、この人の回想記でもあるのだけどコメディリリーフ、この人のお陰で息抜きも出来るし上手く演じていたと思います。

 H30.4.7
 日比谷シャンテ 
コメント (9)
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