「平成大家族」
中島京子 著
家族には様々な問題がある。
色とりどりのように種々雑多な、
とりとめようもないけれど真剣な物事。
三世代の密やかな、そして幸せの行方。
他方では何気なさに見えたりもし、
けれどわたしの家のこと。
どうしようもなくもないことを何故といいたくなるほど、
辛辣ではなく、ゆるやかな微笑みが混ざる。
微笑みは中島京子の物語にとても染み居っている。
視点は家族のざまざまに描かれている。
介護される側から介護する側また少年や嫁や夫等。
中島京子という物語に触れあえたことに、
心は微笑み返す。物語のひとつを見つめ返しながら。
物語はあるのだ。心や体に。
ひとつひとつ。いくつも。
とてもとても細部に、見えるものや
また見えないものも。
そうして人をまた自然をまた命をまたぼくたちは、
ものがたり、物語るすべを得て、
見るもの聞くもの食べたもの触れたもの、
感じたもの、思考、をものがたり、その物語をまた含み入れる。
ミステリは困惑させるけれど、夢も与えさせる。
そう信じている。愛を信じる根源と共に。