栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

政治不信ここに極まれり。

2010-11-13 00:20:09 | 視点
 週の前半、福岡を留守にしていたが帰福してビックリ。
前代未聞のことが起きていた。
今月14日に投開票が行われる福岡市長選の候補者が突然選挙戦から撤退したのだ。
過去、立候補を辞退した例がないではない。
ただし、それらは選挙告示前である。
今回のように告示後で、選挙戦の最中に撤退を表明した例は過去、全国的にも例を見ないだろう。
まさに前代未聞の出来事だ。

 撤退を表明したのは元福岡市教育長の植木とみ子氏だ。
今回の市長選候補者中、唯一の女性候補者であり、知名度もあり、いわゆる泡沫候補者ではない。
仮に当選が叶わなかったにしても上位争いに食い込んだに違いないだろうと私は見ていた。
少なくとも女性票はかなり集めたのではないだろうか。
それが9日に突然会見を開き「撤退」を表明したのだから、支持者には裏切りと映ったに違いない。
実際、それは裏切りだった。
支持者だけでなく、選挙民に対する。

 このところ政治が国民を裏切り続けているが、地方選でもこんな形で裏切られ、政治が信頼を失うとは。
植木氏の行為は仮にそれが迫られたものであったにしても、癒しきれないほどの深い傷を福岡の政治史に残したのは間違いない。
彼女は平成3年に福岡市市民局女性部長に就任して以降、一貫して役所内の各部署を経験し、最後の役職が教育長であったことを考えれば、彼女の今回の行動が子供達にいかに大きな傷を与えたか分かるはず。
もう大人は信頼できない、と言われるに違いない。

 表立った撤退理由は「表が伸び悩み、選挙運動を取りやめると決意した」というのだから笑止千万。
よくもまあ、こういう人が教育長を務めていたのだと思う。
結果を予測し、勝ち目がないと思えば諦めろ、と教育の現場で子供達に教えていたのだろうか。
とんでもない人が教育長だったものだ。
これでは福岡市の教育はおかしい。

 植木氏は選挙公報に次のような約束を掲げている。
「福岡から日本を突破する」
1.役所突破ー行動する役所へ
2.世界突破ー世界の中のFUKUOKAへ
3.既製突破ー前例のない都市・福岡へ

 突破するつもりが、いとも簡単に突破されてしまったではないか。
それも戦って負けるのではなく、敵前逃亡という最低の負け方で。
 選挙運動では「役所の中を知り抜いているのは私以外にいない!」と自信満々に主張していたが、あれは何だったのか。
あまりの自信ぶりに私などはちょっと謙虚さが足りないなどと思ったものだが、大体中身がない人間ほど声を大にして「実績」とやらを語りたがるものだ。
そういう意味では現市長の吉田氏も似たようなものだが。
市議会ではいつも死んだような目をしていた人間が選挙になった途端に生き生きとし、4年間の「実績」を主張しているのだから、思わず「へえー、そうだったのか。そんな実績を残していたのか」とビックリした。
前回の選挙時を除き、その後、吉田市長の存在を認識していた市民は少ないと思うが。(少なくとも私の周囲にはいなかった)

 さて、植木氏の突然の撤退に「密約説」が飛び交い始めた。
それはそうだろう。
でなければ説明が付かないというものだ。
第一、当の本人が告示直前に行われた立候補予定者8人の公開討論会の席上で「(立候補をやめて)副市長にならんかという懐柔があった」と明かしているのだから。
 しかも、自分が撤退すれば自分に入る票が他の保守系候補に流れ、市政の転換が図られると言うに及んでは、下司の勘ぐりと言われようと、密約説を信じてしまう。
少なくとも圧力があったのは間違いないだろうと思わざるを得ない。

 今回の撤退劇で一つはっきり言えるのは、理由のいかんを問わず、植木とみ子氏個人の信用はガタ落ちした(なくなった)ということだ。
さすがにそこまでは考えていなかったのか、あまりの反響の大きさにビックリしたのか、2日後の11日に自身のホームページに「全福岡市民の皆様へ」と題したお詫びのメッセージを載せている。ただし、程なく削除されたが。
 そこには「全福岡市民の皆様、市政突破できず、ごめんなさい。市の領域を超えた政治的圧力により投票の日を前に屈服しました」と書かれていた。
 どんな言い訳をしようとも、自ら圧力に屈したと認めたわけだ。

教育長の職にあったものが圧力に屈したのである。

子供達にどう説明するのだ。

将来に残した傷はあまりに深い。
これでもし、自民党公認候補が当選した後、市関連の何らかの役職に付いたら福岡市民を2度裏切ることになる。
そのことを植木氏は肝に命じておいてほしい。


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