画家の藤田嗣治は無類の猫好きでした。
こんな本まで出しているぐらいですから相当なものだったようです。
私自身は特に猫好きでもないのですが
あれこれ番組の資料を読んでいるうちにこの本を見つけ
ちょっとハマってしまいました。(笑)
猫と一緒の自画像を数多く描いてます。
おかっぱ頭に丸眼鏡は藤田嗣治のトレードマークですが
それ以上に、画家は愛らしい猫を自分のトレードマークとして描き続けました。
可愛いですねえ!
面相筆を使った独特の線描で描かれた猫は
見るからに毛並みも柔らかく、思わず抱きしめたくなるほどです。
エコール・ド・パリを代表する画家として
藤田はフランスで大成功をおさめたほとんど唯一の日本人画家ですが
当然、日々のパンにも困るどん底の時代もありました。
そんな暮らしの中でも「猫を切らしたことはなかった」と言いますから凄いです!
画文集の中にこんな一節があります。
盛り場から夜遅くパリの石だたみを歩いての帰りみち
フト足にからみつく猫があって
不憫に思って家に連れて来て飼ったのが1匹から2匹、3匹となり
それをモデルの来ぬ暇々に眺め廻し描き始めたのがそもそものようです。
夜更けのパリの露地で猫を抱き上げる藤田の姿が浮かびます。
ちなみに・・・彼が猫につける名前はすべて「ミケ」だったと言います。(笑)
ご存じのように猫には従順と反抗の二つの面があります。
普段は愛らしく穏やかな反面、突然、猛々しく野性に戻る瞬間もあって
藤田はその二つの顔をとても面白く思っていたようです。
藤田嗣冶と言えば裸婦が有名ですね。
独特の「乳白色の肌」は大評判を呼びパリ画檀の寵児となりますが
その裸婦の傍らにも必ず猫を描き込みました。
藤田は「奇行の画家」でも知られました。
個性的な風貌とともに、その言動はパリの社交界で常に注目の的でした。
生涯に5度にわたる結婚をし、数々の浮名も流しました。
それはとりもなおさず画家の「孤独」の裏返しでもあった訳ですが
その深い孤独を癒してくれる唯一の存在が猫だったのかも知れませんね。
「世界のフジタ」と呼ばれるほどの名声を得たものの
戦中に描いた「戦争画」を理由に日本では理不尽とも言える迫害を受け
ほとんど認められることはありませんでした。
戦後、そんな日本に失望した彼は再びパリに渡りフランスの市民権を獲得。
二度と日本の土を踏むことはありませんでした。
誰にも媚びず迎合せず、自分の思う道をゆく・・・
そんな頑固な生き方もちょっと「猫」に似ているような気がするのです。
で、本の中で私が一番気に行った猫がコレ。
とくに理由はありませんが、無垢で真っすぐな視線がとにかくカワユイ!
ひょっとして猫好きになるかも・・・