まろの公園ライフ

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紙上再録・男たちの旅路

2014年03月03日 | 日記

雨の週末・・・
仕事もせずにテレビばかり見ていた。
最近、楽しみにしているのが「男たちの旅路」の再放送である。
もう30年以上も前のテレビドラマなので、きっと知らない人も多いのだろうが・・・

脚本家・山田太一の代表作と言っていいだろう。
ガードマンという世界を舞台に戦中派世代と戦後の若者たちを対比させ
その価値観の違いから来る対立や葛藤を描いた傑作だった。
警備会社の司令補である吉岡晋太郎(鶴田浩二)は特攻隊の生き残り。
死んだ仲間への思いを引きずりながら未だに独身を通している。
その部下である陽平(水谷豊)や、女性警備士の悦子(桃井かおり)たちが
毎回、さまざまな「事件」に遭遇しながらドラマは進行する。



とにかく水谷豊が若い!
「相棒」の杉下右京はこの頃からすでに群をぬく演技で
ひょうきんで蓮っ葉な当時の若者を実にイキイキと好演していた。
桃井かおりもすでにこの頃から桃井かおりで
ちょっと気だるいアナーキーな現代女性を自然体で演じていた。

日曜に見た「別離」はシリーズの最終回だった。
吉岡は陽平から「悦子と結婚したい。気持ちを聞いてくれ」と頼まれ
仕方なく彼女をアパートに呼んで気持ちを聞くが、彼女は申し出をキッパリ拒否。
そのかわり「今日は家に帰りたくないからここに泊めて」と言いだす。
悦子は以前からずっと吉岡の男らしさに惹かれていたのだ。
当然、吉岡は彼女のただならぬ様子に事情を問いただすのだが・・・

悦子は医者から「再生不良性貧血」であることを告げられていた。
体の「造血機能」が低下する難病である。
驚いた吉岡はすぐさま一緒に病院へ行こうと言うが
悦子は「今夜はここに泊めて、司令補と一緒にいたいの」と言い張って聞かない。

  「何故私を泊めないの? 私がいいって言ってるならいいじゃない」

  「人にはそれぞれ生き方がある」

  「格好いいこと言って。結局臆病なのよ。私がしつこいと困るからでしょ? 
  私がお金せびると思う? それとも、結婚してくれなんて言い出すと思う?
  それとも、司令補って女嫌い?女になんにも感じないのかしら?」

  「私はもうたしなめる年齢だ」

  「人が、人がどんな思いで、泊めてって言ったと思うのよ?
   帰りたくないのよ。ひとりのアパートへ、暗いアパートへ、帰りたくないのよ。
   つまらない、常識みたいなことばっかり言って。
   人の淋しいことなんか全然わからないで」

吉岡は苦悩する。
悦子の奔放さに戸惑いながらも
彼女のひたむきさに激しく惹かれていく自分に気づく。

結局、悦子は入院し
吉岡は自分一人で彼女を看病する決心をする。
仕事の間をぬって頻繁に病院を訪ね、何度も自分で献血をする。
しかし、社内では「同じ職場の女を囲っている」「仕事の手抜きをしている」と
噂になり、やがて疲労が原因で大きな仕事のミスを犯す。
社長の小田(池辺良)は辞表を提出しようとする吉岡を料理屋に呼ぶ。
小田は軍隊時代の上官でかつての戦友である。

   「彼女を抱いたかい?」

   「いいえ」

   「なぜ抱いてやらん。そんな淋しい話があるか。
    病気だけ治してやるなんて、そんな馬鹿な話があるか」

   「入院してるんです」

   「じゃあ、せめて結婚の約束をしろ。その子も、それを待ってる筈だ」

   「若い娘です。元気になれば、気持が変わるかも知れない」

   「そんなことは知ったことか。溺れてやせんじゃないか。
    分別でがんじがらめじゃあないか」

   「溺れてます。この私が、仕事が手につかなかったんです。
    淋しがってやせんか、不自由をしてないか。腑抜けのようになって
    あの娘のことばかり考えていたんです」

悦子の病気は悪化する。
ある日、内臓出血して危篤状態に陥る。
輸血の必要があるという吉岡の頼みに警備会社の仲間が集結する。

   「頑張るんだ。みんないるぞ。みんな悦子頑張れって、言っているぞ」

   「駄目らしい」

   「何を言う」

   「生きたいわァ」

   「当たり前だ。諦めたら駄目だ」

   「本気で生きたいって思うまでに手間がかかったわ。
    特攻隊の頃とちがって、いまは手間がかかるのよ」

   「わかった。つまらんことを言うな」

   「ごたごた嫌なこと一杯あって、スカッと生きたいっていうふうにならないのよ」

   「そうか-(黙らせたくてうなずく)」

   「スカッと生きたいと思ったら、死ぬ時だなんて、そんなもんかもねえ」

   「死ぬときなもんか」

   「でもまだ、私歪んでいるのかもね。こんな年の離れた司令補
    好きになっちゃったんだもんなあ」

   「(無理に苦笑し)くさるようなことを言うな」

   「でも、本当に好きなのよ。本当に好きになっちゃったんだもんなあ」

   「悦子」

そのやり取りを聞きながら
恥ずかしながら、涙がこみあげてどうしようもなかった。(笑)

やがて悦子は静かに息を引き取る。
最後の最後に吉岡の愛を確認した安堵を胸に・・・

   「司令補も好き? 私を好き?」

   「一緒になろう。元気になったら、一緒に住もう」

   「とうとう」

   「悦子」

   「言った。やっと言った(笑うような泣くような声を出し、涙が溢れる)」

   「悦子」

つつましい葬儀が終わったあと、吉岡は疾走する。
無精ヒゲでやつれた吉岡が北へ向かう特急列車に揺られるシーンで
ドラマは終わるのだが・・・

涙でぐちゅぐちゅになった瞼を拭きながら
身も世もなく女に溺れた・・・なんて経験は俺にあったのだろうかと
思わず下世話なことを考えてしまった。
あったような気もするし、なかったような気もする。

本当に「生きた」と呼べる時代の記憶がドンドン希薄になっているなあ・・・

 


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2 コメント

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観ていましたよ (おふみ)
2014-03-03 10:53:17
再放送ではなく、リアルタイムで。
鶴田さんカッケー♪って。
(どんな子どもぢゃ 笑)

でも今観たらきっとまろさんと同じように
涙腺ダム決壊、顔面ハリケーン必死かと。

また再放送してほしい・・・
返信する
はああ~♪ (まろ)
2014-03-03 12:41:53
おふみ様
リアルタイムが子供の頃と聞いてかなりショックではあります。(笑)

私もリアルタイムではありますが、その後、何度も再放送を観て
ストーリーはもちろん役者の台詞まで覚えている始末です。

高倉の健さんをいろいろ言いますが、やはり鶴田浩二ですよ!
理知的で抑制があって男の色気たっぷりで、まさにカッケー!です。

そんな話を焼酎バーでぜひ!(笑)
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