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居酒屋放浪記NO.0107 ~遥かなる上野駅~「居酒屋 けんちゃん」(台東区上野)

2007-02-19 12:15:57 | 居酒屋さすらい ◆東京都内
 「肉の大山」を出て上野駅へと向かう。もうこの先は上野駅まで立ち飲み屋はないはずである。
 マルイの脇道を駅方向へ。周囲はクリスマスに浮かれる煌びやかな装飾と若者たちが入り乱れる。その一方で、行くあてすらなくただただ途方に暮れるホームレスがあちらこちらを徘徊している。
 この冬は暖かくて過ごしやすいが、まともな冬なら夜を明かすのも命がけだろう。上野周辺にいるホームレスは東北地方からの出稼ぎ労働者なのだろうか。
 上野駅は東京を目指して出てきた東北出身者にとって、特別な建物だ。古くは集団就職から、季節労働者、そして普通に上京してきた者にとって。
 いつでも故郷に帰れるように、或いは望郷の思いから、彼らは上野駅辺りをねぐらにしているのだろうか。
 
 マルイに差し掛かると、目の前に上野駅が姿を現す。
 その外観はわたしが幼い頃からあまり大きく変わっていない。
 わたしは夏休みになると、決まって毎年母方の祖母の家に遊びに行った。岩手県一戸町。東北新幹線が開通するまでは、片道10時間の長旅だった。
 わたしが、毎年楽しみにしていた行事だ。
 大抵は東京に住んでいた叔母と共に田舎へと向かうのだが、待ち合わせの場所は上野駅広小路口にあった銅像「乙女の祈り」前だった。
 今やこの銅像、もうとっくの昔に撤去された。以前、「乙女の祈り」があった場所の前に今は「ハードロックカフェ」ができている。
 叔母にとっても、きっと上野駅は特別な場所であっただろう。東北の片田舎から上京して35年余り、きっと楽しいことよりも辛いことのほうが多かったに違いない。実家へ帰りたくなったことも一度や二度ではあるまい。田舎へ帰ろうと思い、上野駅まで来て、引き返したこともあるのではないか。東北地方の出身者にとって上野駅は文字通り「心の駅」であるはずだ。
 
 「どこかに故郷の香りを乗せて入る列車のなつかしさ。上野はおいらの心の駅だ。くじけちゃならない人生があの日ここから始まった」(『あヽ上野駅』唄=井沢八郎)。
 1月17日に亡くなられた井沢八郎さんの歌碑の脇を通って、上野駅広小路口に入った。構内はすっかり綺麗になっている。様々な店が出来て、昔のような面影はもうない。確か、ハードロックカフェの横に階段があって、地下鉄への通路になっていたはずだ。
 「男はつらいよ」(山田洋次監督=69年松竹)の記念すべき第一回、寅さんがさくらの結婚話を破談させてしまった後、再び家を出て旅に出る段になって、後を追ってきたテキ屋の登に一喝した場所は、多分その地下通路階段下にあった食堂である。
 
 さて、前段が長くなったが、御徒町~上野駅間の長い立ち飲みラリーは終わった。一応、上野駅内に立ち飲み屋がないか、物色してみた。すると、立ち食いの寿司屋(魚かし日本一)があった。もしかして、様々な日本酒とか揃えている店かもしれないと思い、立ち寄ってみたが、生ビールしかなかった。
 次回はいよいよ鶯谷に向けて新たなラリーを始めるぞ!と思ったその日、会社のK山さんが無料情報誌「ホットペッパー」(リクルート)を持ち出してきて、こんなことをわたしに言った。
 「この立ち飲み屋行ったことある?」
 そこには、「居酒屋 立ち飲み けんちゃん」という文字。御徒町から徒歩数分。
 うむむ、ここは見逃していた。更にホットペッパーのその欄を読み進めて行くと、「生ビール250円」しかも、「プレミアムモルツ250円はマジっす!」と書いている。更に更に「沼津直送の刺身も干物も250円」だって。
 いいじゃな~い。「ケンちゃん・チャコちゃん」みたいで。
 
 早速その日の晩、レッツラゴーゴー。
 御徒町駅、春日通りを上野駅方面に渡ってケンタッキーフライドチキンを右折すると、そこは飲食店が軒を連ねる小路。アメ横と並行するこの路地に「居酒屋 けんちゃん」はあった。だが、中を覗くと店内は椅子がしっかり完備している。奥行きが長く、店の奥はL字になっている。もしかするとそのL字に曲がったスペースが立ち飲みなのかと思い、わたしは店の暖簾をくぐったのである。  
 
 右手に厨房、左手の壁に沿ってカウンターが続いている。店の一番奥まで進み、そのL字の鍵部分まで行ってみて、わたしは失望した。「けんちゃん」は立ち飲み屋ではなかったからである。
 思い切り、座り飲みじゃん!
 しかし、「ホットペッパー」には立ち飲みと!そして、店の看板にもしっかりと立ち飲みと書いてあるじゃないか。わたしは憤りを感じながら、仕方なく椅子に腰掛けた。
 まずはお手並み拝見。プレミアムモルツの生を貰うか。
 しかし、プレミアムモルツのジョッキが僅かに250円。にわかに信じられないが、無料情報誌にはそう謳われている。
 果たして、ビールジョッキが運ばれてきて、早速飲んでみると、なるほど確かにまさしくこの黄金色の液体はサントリーのプレミアムモルツに間違いなかった。
 これは、安い!ジョッキも普通の大きさだ。わたしが希望した立ち飲み屋ではなかったが、このプレミアムモルツを安く飲めただけでも来る甲斐があった。
 
 さて、肴を何にしようか、と壁に貼られているメニューを眺めていると、ふと飲み物メニューに目がとまった。そこには「プレミアムモルツ350円」書いてある。おいおい、話しが違うぜ」と思ったが、ハッピーアワーとかで、早い時間に来店すると「250円」で提供してくれるのか、などと色々思いを巡らしてみたのだが、どこにもそんな注意書きは書いていない。「まぁ、とりあえずいいさ」と思い、まず「牛すじ煮込み」(400円)を頼んだ。
 
 しばらくすると、誰もいなかった店に少しずつ客が入ってきた。そのうちの一人がやたらとうるさい。既にどこかで飲んできたような雰囲気で、酔いに任せて若い女性の店員に絡んでいる。
 はじめは適当にあしらっていた彼女だが、次第にそのおっさんの客を無視するようになった。するとその客の声のトーンが一段とあがった。店のBGMには「世界中の誰よりもきっと」(唄=中山美穂&WANDS)がかかりはじめ、何だか、楽しく一人で飲める雰囲気ではなくなってきた。
 しかし、それでも沼津直送という海の幸を味わいたい。メニューには「イワシ醤油干し」、「タコブツ」、「ふぐみりん」「黄金イカ」などと書かれている。
 だが、その間も依然として、おっさんの怒声にも似た声が聞こえてくる。
 とりあえず、わたしは女性の店員に芋焼酎のロックと黒はんぺん(100円)を頼み、さて魚を何にしようか、という段になって、怒鳴っていたおっさんがとうとう暴れだしたのをみて、これ以上おいしくお酒を飲めそうにないな、と思い注文はそれだけに留めた。
 
 あとは、もう黒はんぺんを焼酎で流し込むようにして、急いで食べ、飲み、店を後にした。お勘定を計算すると、やはりプレミアムモルツの値段は一杯350円だった。
 
 翌日、会社に行ってK山さんが持っている「ホットペッパー」を今一度開いて確認すると確かに「プレミアムモルツ250円はマジっす!!」と豪語してある。
 そして、その一方では「元気な立ち飲み居酒屋」とも書かれていた。確かに、その部分のキャッチはある意味本当だと思った。

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5 コメント

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お~ここは (怪鳥)
2007-02-19 14:42:37
以前、一度通りかかった事あります。安そうな居酒屋だな、と思ったから、イスはあったんだろうな~。
「客が暴れだした」ってのは凄いね。逃げるように食べて呑んでる君の姿が想像できておかしかったよ。助けてあげないと!(笑)本当に¥250なら助けたかな・・・・。
返信する
それはヒドーイ (まき子)
2007-02-19 17:16:43
昔は立ち飲みだったけど、そのうちイスとテーブルが置かれるようになっちゃったんですかね~。
(そんなお店もチラホラ見たことあるもので)

でも、250円って豪語してあるのにそれはちょっとヒドイような気が!
さりげなーく店員さんに聞いても良かったのかも?!
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ひどいよねぇ。 (熊猫刑事)
2007-02-19 21:21:43
JAROに電話しちゃうぞ!って感じでしょ。
でも、気が弱いから店の人に一言言えなかったッス。
いや、もしかすると、ホットペッパーはわたしの見間違い
かな、とも思ったし。

怪鳥も一度目の前を通っていたか。でも、怪鳥のお眼鏡に叶わなかったのは何故?
つまみの種類は申し分ないんだけれどねぇ。
誇大広告はいかんよ。誇大広告は。

まき子さんのお察しの通り、以前は立ち飲み屋だったみたいです。
やっぱ、椅子があるほうがいいのかなぁ。

お店の方からの反論をお待ちしていま~す。
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答えは簡単 (怪鳥)
2007-02-20 09:38:30
それは、真昼間だったからです!ホットペッパー持参すれば、という条件つきだったとか?
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くまなく (熊猫刑事)
2007-02-20 13:20:30
お店の欄を読んだけれど、書いてなかったなぁ。
よく、考えると「プレミアムモルツ」をジョッキ1杯250円にすると、あわないよねぇ。

350円でも十分安いか¥。
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