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BASEBALL馬鹿 BLOG

オレたちの「深夜特急」~インド編 アーグラー 8 ~

2016-08-20 15:47:47 | オレたちの「深夜特急」

夜も更けた頃、ボクが借りていたシングルルームのドアがノックされた。

それと同時にドアの向こうからわたしを呼ぶ声が聞こえた。

「熊猫。迎えにきたぜ。パーティをやろう」。

ドアを開けると、サリームがひとりでたたずんでいた。

「ついてこいよ。マルコが待ってる」。

サリームの後をついていくと、彼はゲストハウスの母屋の非常階段を昇り始めた。

電灯もなく、暗がりの中を人がひとりようやく通れるような階段である。

微かな風は吹いているものの、夜になっても気温はそれほど下がっていない。じっとりと背中に汗が滲む中、階段を昇る2人だけの足音だけが響く。

サリームの部屋にでも行くのだろうと思っていたが、着いたところは、建物の屋上だった。屋上といっても建物は3階建てであり、とびきり眺めがいいわけではない。

もっとも、屋上に出ても電燈があるわけではなく、満月に近い月明りだけが、頼りだった。

「こんなところでパーティかい?」

わたしがサリームに聞くと、彼は「Yes」とも「No」とも言わず、ただただ頷くだけだった。

やがて、少しずつ暗がりに目が慣れてくると、屋上の奥に誰かが座っているのが見えた。その人間は、我々の方に向かって巻舌の口調で何か言った。

どうやら座っているのはマルコらしい。

サリームはマルコの横に座り、わたしもその後に続いた。

マルコはグラスに注いだ何かを飲んでいた。目の前にウィスキーのボトルが置いてあり、我々の分も注いでくれた。

 

「チアース」。

サリームは小さい声でそう言い、我々は簡単に乾杯した。

こじんまりとしたパーティだった。

 

マルコは陽気に大きな声で、しきりに話をしている。サリームは「うん」と相槌を打つだけだった。

どうやら仕事の話しをしているようだったが、わたしは全く内容は分からなかった。

 

インドに着いて初めての酒だった。インド到着後10日になるが、酒を見るのも初めてだった。

したがって、ストレートのウィスキーはとりわけわたしの腹にズシンときたのである。だが、まさか退院当日に酒を飲めるとは思ってもいなかった。

 

すると、マルコは胸のポケットから煙草を出し、おもむろに吸い始めた。

わたしも同じようにポケットから煙草を取りだすと、マルコは「これを吸ってみろよ」とわたしに煙草を勧めてきた。

受け取って吸ってみると、変わった匂いがした。

「これは」。

わたしがそう言うと、マルコもサリームも笑いだした。

「ガンジャか」。

そうか。パーティとはこれが目的だったのか。だから、こんな暗がりの屋上なんかに集まったのか。

 

紙巻のそれは、サリームに渡り、マルコに戻って、そしてわたしに回った。そのやりとりが幾度となく続くうち、わたしの耳元でブザー音が鳴り始めた。

はじめは小微かな音だったが、やがて大きくなり響くようになった。

マルコとサリームに、「ブザーが鳴ってないか?」と聞くと、マルコはにやりとした顔で「どんなふうに?」と聞き、わたしが「ビビビビ」と擬音を口にすると、彼らは大爆笑となった。

彼らはしばらく、笑い転げ、その声はわたしの耳元で反響した。

 

煙草がなくなると、マルコはグラスのウィスキーを飲みほして、立ちあがった。

「気分がよくなったところで、サリームの家に行こうじゃないか」。 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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おおー! (ふらいんぐふりーまん)
2016-08-21 21:49:39
「はっぱ」登場だな。

インドの鉄板ネタと言っても良いかもしれないねえ。(笑)

さて、この後のサリームの家で、更に師は酩酊していくのだろうか。楽しみだよ。

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Unknown (熊猫)
2016-08-22 13:50:06
このときは「バッド」に入らなったんだよなぁ。

さて、これからどうなることやら。
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