社長に呼ばれ、会社を出た。例によって、居酒屋「村役場」での打ち合わせである。
JRの高架沿いを社長と並びながら、無言で歩く。
いよいよ「村役場」に近づき、左折するであろう交差点に差し掛かったとき、社長の足はそこをすり抜けた。
意外だった。一時期、「村役場」以外の店を新規開拓しようという気概があったが、ここ最近は落ち着いていた。「村役場」以外にいいお店を見つけたのだろうか。
御徒町駅南口に出ると右折し、高架をくぐった。すぐさま、左折し再び高架沿いを行く。
「すし屋銀蔵」にでも行くつもりなのだろうか。
左折して1分あまり、「ここに行くか」と指をさすのは「○金」という店だった。
一体どこで、この店の情報を掴んだのだろうか。
地下1階にあるこの店のシステムは一風変わっていた。
30分299円の飲み放題。これだけでも驚きなのだが、更にたまげたのは、酒がドリンクバーシステムになっている点である。
つまり、セルフなのだ。
酒は70種類との触れ込みだが、カクテルやハイボール、そして梅酒がぐだぐだとメニューに書かれている。理解できないのが、ハイボールの欄である。「いちご」や「りんご」、「みかん」といったフルーツ名が書かれているのだが、これがよく分からない。フルーツ味のハイボールがあるのだろうか。
ビールはスーパードライ。本格焼酎も6~7種類程度用意されており、へぼへぼ感はない。この他、「ウーロンハイ」「緑茶ハイ」といった定番メニューが続く。だが、それにつけても30分で299円の飲み放題とは恐れ入る。
我々は30分で4杯の生ビールを飲んだのだが、単純に計算しても1杯75円弱で飲んだことになる。ジョッキは小ぶりなのだが、それでもお得感は高い。
どうやって利益を出しているのだろうか。
気になったのは、酒肴の価格である。それほど安くないのだ。
「生ブロッコリーの塩茹で」が499円。「ポテトサラダ」が439円。「チョレギサラダ」499円。
飲み物の値段に対してアンバランスともいえる価格設定である。
主肴である焼き鳥が60円~、となっていたが、これもよく分からなかった。酔いに麻痺して、何が安くて、何が適正でないという感覚も段々と鈍ってきたのだった。
焼き鳥を数本頼み、テーブルに備え付けられている壺のタレをつけようと試みたのだが、このタレがすさまじかった。まず、壺のふたを開けた途端、目がしばしばした。
強烈なにんにく臭なのである。こってり度抜群のにんにくタレは超強烈な代物だったのである。
後日、社長に聞いてみた。
「○金は安かったですか?」と。
すると、こんな答えが返ってきた。
「なんだかんだいって高かった」。
この日以来、社長は二度と「○金」の暖簾をくぐっていない。
飲み物は信じられないくらいに安価だが、その分、料理にオンされているような気配がありありなのだ。
世の中にうまい話などない。だが、面白いビジネスモデルだと思う。
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