
2016年20月15日号の「ブルータス」は中華の特集である。久しぶりに手に取ってみると掲載されている幾つかの店が、このコロナ禍で閉業していることに愕然とする。不運だったのか、それともタイミングか、はたまた政治が悪かったのか。それは分からない。ただ、長い歴史と人気を誇るお店の味が途絶えることはなんともいたたまれない。ましてや今、大好きな「光栄軒」が再び休業しているため、よもやという思いも頭をよぎる。
もう一つ自分にとって重要な中華は小島にある「幸楽」だ。お父さんとお母さんの二人三脚のお店は外観を含めて、途方もない時間を刻んできたであろうことは想像に難くない。店にお邪魔する度に、お店のお父さんもお母さんも元気なんだけど、一体おいくつなんだろうと思ってきた。
宮谷烈さんが執筆された「浅草橋を歩く」によると昨年5月20日現在、お父さんの小林賢吉さんは76歳。そのお歳とは思えない動きにいやはやとにかく恐れ入る。
1月7日、お店に向かう。会社から片道約20分かけて。あの最高にうまい、「ナシゴレン」と「ラーメン」のセット、「半ナシラーメンセット」をいただきに。
お店はいつ行っても大盛況だ。この日も、僅か一つ椅子が空いていただけ。しかも、ひっきりなしにお客さんは訪れる。10人と入らない店内は常に満員だ。一見忙しないようなお店にも思えるが、実は癒しの空間である。その雰囲気はまさにお父さん、お母さんの慈愛の空気そのもの。それはもう年の功である。お客さんに若い女性客が少なくないのもよく分かる。
「半ナシラーメンセット」をオーダー。
お店は混んでいても料理はすぐ運ばれてくる。これが自分にとってはかなり助かる。何しろ、お店の往復だけで35分かかるから。
「半ナシ」にチャーシューが一枚ついてきた。
「ちょっとサービスしといたよ」とお父さん。
たまに見かけるお客さんとして、少しは認知されたかなと嬉しくなった。
その「ナシゴレン」、抜群にうまい。本物と比べてどうかというのはさておき、ケチャップだけに留まらない深い味わいが素晴らしい。
いや、うまいのは「ナシゴレン」ばかりじゃない。セットのラーメンな滋味なスープが「ナシゴレン」とのマリアージュに拍車をかける。ラーメンのお出汁も優しさに満ち溢れているのだ。
本来、「半ナシラーメンセット」は800円だけど、この日は700円だった。お客さんに、「え?800円じゃないの?」というと、「今日はサービスの日よ」と返ってきた。
そんな日があるのか。まだまだだな、自分。
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