
銭湯の「やなぎ湯」を出ると、強烈な日差しに目眩すら覚えた。
その陽光はもはや梅雨のものではなく、真夏を感じさせるに充分なものだった。
暑い。
そして、喉はカラカラだ。
日曜日の昼下がり、この東十条界隈で開いている居酒屋を探すことは至難の業のようにも感じられるが、実はおいらには酒場にありつく確信めいたものがあった。
東十条駅北口そば。東十条商店街からやや南に入ったところにある「立ちのみ 大安 本店」なら開いているだろうと。
かつてからこの店を気にかけていた。
表の看板に「立ちのみ」と書かれていたためで、幾度となく目の前を通り過ぎては中を窺ったりした。
店の前を通り過ぎるのは、大抵休日の日中。そんな時分にも関わらず、店は開店していた。
果たして、この日も店はめでたく開いていたのである。
勢いよく扉を開けてみた。
目の前に長いカウンター。その向こうには、6畳間ほどの小上がりになっている。
そう、看板には「立ちのみ」と記されているが、ここは立ち飲み屋ではない。
どうやら、かつてはおでんの立ち飲み屋だったらしい。こちらの方のホームページにはそう記されている(7月11日の欄)。
さて、扉を開けて店内を見渡すと、客は誰一人いなかった。それどころか、お店の人もいない。「おや?」と思ってよく目を凝らすと一瞬ギョッとしてしまったが、店のオヤジが暇を持て余しているように奥の椅子に座ってこちらの様子を窺っていた。まるで「ツインピークス」の第一話を思い起こさせるような光景だった。
「いらっしゃい」。
オヤジは無愛想においらに言った。
おいらは、入り口にほど近いおでん鍋の目の前の席に座り、生ビールを注文した。
生ビールはアサヒスーパードライ。キーンと冷えたジョッキに注がれた黄金色がとてもとても愛おしく感じる。
つまみはもちろん目の前でゆだっている「おでん」。なんと全品一律の80円。ソーセージをはじめとした練り物はこの7月に値上げをしたばかり。この値段を維持できるのは、本当に凄いことだ。
ちなみに10月18日に店の前を通り過ぎたが、「80円均一」は未だにキープされていた。
おつゆはさっぱりの鰹だし、やや濃いめのスープだが、決してくどくはない。その点、コンビニの味とは一線を画している。どちらかといえば、昔ながらの懐かしい風味だ。
これをつまみに日曜の昼間から酒が飲めるというのは、実にたまらない。
おいらは、「しらたき」「たまご」「ちくわぶ」「はんぺん」を頼んだ。「牛すじ」は残念ながら品切れのようだった。
店の主人は多くを語らず、さりとて全く寡黙というようでもなかった。「店は何時から開いているのか」というおいらの質問に「朝の10時だよ」と答える。「そんなに早く開けてお客が来るの?」と訊くと「それがね、意外と来るんだよ」と返してきた。
驚いたことに平日の10時からもお客が現れるというのだ。店は年中無休。「休むのは昼休みくらいかな」とご主人は冗談を飛ばした。
ビールがなくなる頃、おいらは酎ハイを頼んだ。
するとご主人もそれに呼応するかのようにご自身の分も作られて、グラスを傾けていた。
酎ハイにはレモンスライスが沈む。こうしたちょっとしたアクセントが入ると実に嬉しいものである。
そんなポツリポツリとした会話の合間に聞こえてくるのが、日テレの野球の実況。讀賣が珍しくデーゲームを戦っている。相手は横浜だ。
ちなみにこの日7月13日現在の讀賣の順位は2位だが、まさか、この後驚異的な末足を見せて「メークレジェンド」をやってのけるとは当然誰も知る由もない。
その実況にまじって微かに聞こえる調べはどうやら演歌のようだ。やはり東十条商店街には演歌が似合う。
だが、その抑揚もテレビの野球中継と轟音を唸らせる数十年前の遺物にも見える巨大な業務用のエアコンによってほとんど聞こえてこない。ご主人は演歌のBGMを流していることを忘れているのか。それとも故意にテレビと演歌をユニゾンさせているのか。
さて、その後おいらは酎ハイを2杯お代わりして店を出た。
勘定はしめてちょうど1,500円。なんとも安い。
結局、その間誰一人お客は入ってこなかった。静かな日曜日の昼下がり。そうそう、ちょうど1週間前のこの時間、おいらは蒲田の居酒屋で競馬中継を見ていた。つまり、妻と子供と離ればなれになってまだ1週間しか経っていないのだ。その日から今日まで8件の居酒屋を渡り歩いた。
もう随分と時間が過ぎたようにさえ感じてしまう。
爆音をかますエアコンから開放されたものの外は真夏のような暑さだった。
これから本格的な夏が訪れようとしている。
冷たいビールを求めて熊猫の旅は続く。
その陽光はもはや梅雨のものではなく、真夏を感じさせるに充分なものだった。
暑い。
そして、喉はカラカラだ。
日曜日の昼下がり、この東十条界隈で開いている居酒屋を探すことは至難の業のようにも感じられるが、実はおいらには酒場にありつく確信めいたものがあった。
東十条駅北口そば。東十条商店街からやや南に入ったところにある「立ちのみ 大安 本店」なら開いているだろうと。
かつてからこの店を気にかけていた。
表の看板に「立ちのみ」と書かれていたためで、幾度となく目の前を通り過ぎては中を窺ったりした。
店の前を通り過ぎるのは、大抵休日の日中。そんな時分にも関わらず、店は開店していた。
果たして、この日も店はめでたく開いていたのである。
勢いよく扉を開けてみた。
目の前に長いカウンター。その向こうには、6畳間ほどの小上がりになっている。
そう、看板には「立ちのみ」と記されているが、ここは立ち飲み屋ではない。
どうやら、かつてはおでんの立ち飲み屋だったらしい。こちらの方のホームページにはそう記されている(7月11日の欄)。
さて、扉を開けて店内を見渡すと、客は誰一人いなかった。それどころか、お店の人もいない。「おや?」と思ってよく目を凝らすと一瞬ギョッとしてしまったが、店のオヤジが暇を持て余しているように奥の椅子に座ってこちらの様子を窺っていた。まるで「ツインピークス」の第一話を思い起こさせるような光景だった。
「いらっしゃい」。
オヤジは無愛想においらに言った。
おいらは、入り口にほど近いおでん鍋の目の前の席に座り、生ビールを注文した。
生ビールはアサヒスーパードライ。キーンと冷えたジョッキに注がれた黄金色がとてもとても愛おしく感じる。
つまみはもちろん目の前でゆだっている「おでん」。なんと全品一律の80円。ソーセージをはじめとした練り物はこの7月に値上げをしたばかり。この値段を維持できるのは、本当に凄いことだ。
ちなみに10月18日に店の前を通り過ぎたが、「80円均一」は未だにキープされていた。
おつゆはさっぱりの鰹だし、やや濃いめのスープだが、決してくどくはない。その点、コンビニの味とは一線を画している。どちらかといえば、昔ながらの懐かしい風味だ。
これをつまみに日曜の昼間から酒が飲めるというのは、実にたまらない。
おいらは、「しらたき」「たまご」「ちくわぶ」「はんぺん」を頼んだ。「牛すじ」は残念ながら品切れのようだった。
店の主人は多くを語らず、さりとて全く寡黙というようでもなかった。「店は何時から開いているのか」というおいらの質問に「朝の10時だよ」と答える。「そんなに早く開けてお客が来るの?」と訊くと「それがね、意外と来るんだよ」と返してきた。
驚いたことに平日の10時からもお客が現れるというのだ。店は年中無休。「休むのは昼休みくらいかな」とご主人は冗談を飛ばした。
ビールがなくなる頃、おいらは酎ハイを頼んだ。
するとご主人もそれに呼応するかのようにご自身の分も作られて、グラスを傾けていた。
酎ハイにはレモンスライスが沈む。こうしたちょっとしたアクセントが入ると実に嬉しいものである。
そんなポツリポツリとした会話の合間に聞こえてくるのが、日テレの野球の実況。讀賣が珍しくデーゲームを戦っている。相手は横浜だ。
ちなみにこの日7月13日現在の讀賣の順位は2位だが、まさか、この後驚異的な末足を見せて「メークレジェンド」をやってのけるとは当然誰も知る由もない。
その実況にまじって微かに聞こえる調べはどうやら演歌のようだ。やはり東十条商店街には演歌が似合う。
だが、その抑揚もテレビの野球中継と轟音を唸らせる数十年前の遺物にも見える巨大な業務用のエアコンによってほとんど聞こえてこない。ご主人は演歌のBGMを流していることを忘れているのか。それとも故意にテレビと演歌をユニゾンさせているのか。
さて、その後おいらは酎ハイを2杯お代わりして店を出た。
勘定はしめてちょうど1,500円。なんとも安い。
結局、その間誰一人お客は入ってこなかった。静かな日曜日の昼下がり。そうそう、ちょうど1週間前のこの時間、おいらは蒲田の居酒屋で競馬中継を見ていた。つまり、妻と子供と離ればなれになってまだ1週間しか経っていないのだ。その日から今日まで8件の居酒屋を渡り歩いた。
もう随分と時間が過ぎたようにさえ感じてしまう。
爆音をかますエアコンから開放されたものの外は真夏のような暑さだった。
これから本格的な夏が訪れようとしている。
冷たいビールを求めて熊猫の旅は続く。
それがいかに贅沢か。ようやく最近知りました。
だって、それが出来るのは、その日1日予定がない人の特権だもんね。
怪鳥、今度は昼間ホッピーでいきましょう。
逆に私は『昼間から呑む酒は美味いと思う女』です。
2人ともお酒は好きですが、ちょっとそういう部分ズレがあるので面白い。
それにしても、おでん80円って…安っ!
夫婦は趣味や考え方に違いがあるからこそ、いいのでしょうね。
旦那さんは、何故昼間からお酒を飲まないんですか?
眠くなるから?それとも昼間はいっぱい汗をかいて、夜まで楽しみをとっておきたいから?
釣り好きな方のようですから、昼間からビールをグイっといっちゃうタイプかと思ったんですが。
ライチ!さんは昼酒やっちゃっているんですか?悪妻を自認されているようですから、けっこうやっちゃっていたりなんか、しちゃったりなんかして。
本文中にも書きましたが、現在も「おでん80円均一」は継続中です。
物価が値上がりしているご時勢にホントすごい努力だと思います。
五反野・幸楽
あたりは昼から酒が呑めますねえ・・・
ご参考まで
ありがとうごあいます。
当ブログで検索してくる事例に「昼間から飲める店」というのがあります。
昼間から開いてる手ごろな居酒屋情報が不足しているようです。
わたしの気になっている店は御徒町の大蒜(さんまる)。
当ブログでも紹介した「立ち飲み 市場」の隣に店を構えています。
通勤で8時45分に毎朝店の前を通り過ぎますが、もう開店しているんですよ。
一体、何時に店を開けているのやら。
しかも、もう飲んでいるお客もちらほら。
この店は朝から潜入してみたいです。