四谷に行った帰り、いつもなら四谷三丁目の駅前の「新記」でご飯を食べて帰るが、この日は家族がいなかったので、ちょっと冒険してみようかと思った。新宿御苑の「古月」に行ってみようかと脳裏をよぎったが、いやいやちょっと敷居が高い。そうか、御苑まで歩くのならば新宿はもうすぐ。それなら「岐阜屋」に行くか。
お店到着10時半。線路側を覗くとお客さんは誰もいない。それなら久しぶりに通路側に行くかとお店を一周して、店に入った。やはりお客さんは誰もいない。一瞬、お店は営ってないのかなと思い、「いいですか」とお店の人に聞くと仏頂面で「うん」とうなづくだけ。着席して、「酎ハイ下さい」というと、「11時から」と素っ気なく答えた。そうか、この日はまんぼう最終日。お酒の提供に制限があるなか。11時まであと30 分。他所を探そうかと思っても他も状況は同じ。なら、ちょっとぐるっと回ってくるか。
11時を5分ほど回って戻ってくると、お客さんはもうそこそこ入っていた。通路側は態度が悪い店員さんだったから、またもや線路側に入った。カウンターには自分を入れて7人の客。自分の正面には気難しい顔の爺さんと温和そうだが冗談が通じなさそうなおじさんが陣取っている。いかにも手強そうだ。
「酎ハイ」と「蒸し鶏」からスタート。
BGMはAMラジオの高校野球。その熱戦は延長戦へと突入し、タイブレークに持ち込まれたようだ。
午前中から「蒸し鶏」をつつきながら、「酎ハイ」をいただくという幸せ。もうたまんない。
ラジオ中継は風雲急を告げていた。タイブレークにより、両チームは延長13回から走者を背負うことになるが、先攻のチームは後がなく、送りバントをさせまいと外野手を一人内野に配置する奇策をとった。しかし、外野に大きな飛球を打たれ、外野手は捕球するものの、走者はタッチアップでそれぞれ進塁した。一打サヨナラのピンチに先攻チームがとったのは敬遠四球による満塁策である。ところが、結局塁を埋めたことで投手にプレッシャーがかかったのか、次打者にはストライクが入らず、カウント3-0とした。
目の前の気難しそうな爺さんが呟いた。
「押し出しか?」
次の投球で一つストライクをとったが、3-1からの5球目がはずれ、その瞬間ゲームは終わった。
すると気難しそうな爺さんはニヤっと笑って酒を飲んだ。
嫌な爺さんだ。
その隣にいる冗談が通じなさそうなおっさんは我関せずと黙々と料理を口に運ぶ。ちなみに彼がオーダーしたのは「中華丼」である。
「酎ハイ」をおかわりし、そろそろ〆の検討に入らなければならない段になって、はて困った。「ラーメン」にするか、それとも「炒飯」にするか。気持ち的には「ラーメン」だった。けれど「炒飯」も捨てがたい。ただ、3杯目の「酎ハイ」をおかわりする時に「ラーメン」をコールしようと思っていたが、どういうわけか「炒飯」と言ってしまった。それは何故か自分も分からない。
それはまさに高校野球と同じ、「炒飯」のサヨナラ勝ちだった。
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