本当は「笹新」に行くつもりだった。
「みますや」で席を隣にしたおっさんが「オレの好きな店はここと『山利喜』、 そして『笹新』だな」と呟いた、その店である。
また、近年多くの出版物が出回る居酒屋本にも多数紹介され、その名を轟かせている名店である。
地下鉄人形町の駅を降り、歩くこと2分。こぢんまりとしたその居酒屋は案の定、満席だった。
席数、僅か28席の人気店は常に満員との情報だったからだ。
だが、ガラリと戸を開けて満席を確認したわたしは、かの太田和彦氏のように、近所を一周して再び出直してくる気持ちは消え失せた。「笹新」のご主人らが余りにも冷たかったからである。
店に入ってきたわたしに対して、一言も発っしず、その目はいかにも「見かけない顔だな」と言わんばかりだった。
いたたまれなくなったわたしは「あっ満席なんですね」と言い訳して、そそくさと店を出たのであった。
恐らく同店は各居酒屋本に掲載されることによって、様々な客が出入りするようになり、その結果常連さんが入店できない事態が多くなったことは想像に難くない。
そのため、一見と思しき客にうんざりしていると考えるのはうがちすぎだろうか。
そういや、「居酒屋味酒欄」(太田和彦著=新潮社)の改訂版に同店は掲載されなかった。
店主が掲載を断ったのかもしれない。
しかし、それにしてもこの対応はないだろう。わたしは憤慨して、「笹新」を後にしたのだった。
甘酒横丁をそのまま歩き、適当なお店を探すことが出来ず、一本北の筋をまた人形町駅のほうに戻ってみると、なんと1軒の立ち飲み屋を発見することができた。
店の名前は「立呑み 魚平」。
格子のガラス窓がノスタルジーを誘う。
早速、お店に入ってみると、若い店員、まだ20代と思われる店員が一人できりもりしていることに驚いた。
お店は10坪にも満たない小さな、本当に小さなお店。
彼が店主かと思って、「感心ですね。まだ若いのに」と言うと、その若い店員は 「この店は近所の『おか吉』の姉妹店です。ボクはその社員です」と答えが返ってきた。
「魚平」はその若い彼が一人できりもりしているようだ。
店内は厨房側のカウンターとその向かい側にある壁に沿ったカウンターの二列で構成され、厨房側にはご隠居風のご老人が一人、壁側にはスーツをまとったサラリーマン風の二人組みが既に酒を飲っていた。
わたしはご老人の隣に立ち、まずは生ビール(一番絞り450円)を注文した。
ビールと引き換えに千円札を差し出すと青年の店員は「後払いでいいですよ」と言った。
支払いシステムは後払い式である。
酒肴にポテトサラダを頼んだ。
僅か200円ながらかなりの大盛。しかも手作りで本格的だ。
青年店員に「手作りでホントにうまい!」と告げると彼は相好を崩しながらわたしにお礼を言った。
そのハキハキとした物言いはとても好感が持てる爽やかさだった。
店内に貼られたメニューを眺めているとその名の通り魚の料理が多く、それが同店の一つのウリになっているようだった。それにしても魚料理がメインの立ち飲み屋も珍しい。
その料理の一例を挙げる。
「クジラ刺身」(300円)「さんま塩焼き」「さんまフライ」。
その中からわたしは「イナダ刺身」(200円)をチョイスした。
「本日のお薦め」という目玉商品は僅か200円というもの。ネタといい値段といい、これは驚きだ。刺身にはやはり日本酒がいい。
280円の「コップ酒」(雅の詩)というのがあり、それをもらった。このネーミング、なんとも立ち飲み屋らしく好感が持てる。
店の壁には千葉の勝浦漁港のポスターが、日本酒のラインナップに勝浦の酒「腰古井」があるところをみると、同店の姉妹店は勝浦漁港から魚を仕入れていると想像できる。
だからこそ「イナダ」が200円で楽しめるのだろう。
この青年店員の真摯な客さばきと相まって、この店、かなりの穴場である。
「みますや」で席を隣にしたおっさんが「オレの好きな店はここと『山利喜』、 そして『笹新』だな」と呟いた、その店である。
また、近年多くの出版物が出回る居酒屋本にも多数紹介され、その名を轟かせている名店である。
地下鉄人形町の駅を降り、歩くこと2分。こぢんまりとしたその居酒屋は案の定、満席だった。
席数、僅か28席の人気店は常に満員との情報だったからだ。
だが、ガラリと戸を開けて満席を確認したわたしは、かの太田和彦氏のように、近所を一周して再び出直してくる気持ちは消え失せた。「笹新」のご主人らが余りにも冷たかったからである。
店に入ってきたわたしに対して、一言も発っしず、その目はいかにも「見かけない顔だな」と言わんばかりだった。
いたたまれなくなったわたしは「あっ満席なんですね」と言い訳して、そそくさと店を出たのであった。
恐らく同店は各居酒屋本に掲載されることによって、様々な客が出入りするようになり、その結果常連さんが入店できない事態が多くなったことは想像に難くない。
そのため、一見と思しき客にうんざりしていると考えるのはうがちすぎだろうか。
そういや、「居酒屋味酒欄」(太田和彦著=新潮社)の改訂版に同店は掲載されなかった。
店主が掲載を断ったのかもしれない。
しかし、それにしてもこの対応はないだろう。わたしは憤慨して、「笹新」を後にしたのだった。
甘酒横丁をそのまま歩き、適当なお店を探すことが出来ず、一本北の筋をまた人形町駅のほうに戻ってみると、なんと1軒の立ち飲み屋を発見することができた。
店の名前は「立呑み 魚平」。
格子のガラス窓がノスタルジーを誘う。
早速、お店に入ってみると、若い店員、まだ20代と思われる店員が一人できりもりしていることに驚いた。
お店は10坪にも満たない小さな、本当に小さなお店。
彼が店主かと思って、「感心ですね。まだ若いのに」と言うと、その若い店員は 「この店は近所の『おか吉』の姉妹店です。ボクはその社員です」と答えが返ってきた。
「魚平」はその若い彼が一人できりもりしているようだ。
店内は厨房側のカウンターとその向かい側にある壁に沿ったカウンターの二列で構成され、厨房側にはご隠居風のご老人が一人、壁側にはスーツをまとったサラリーマン風の二人組みが既に酒を飲っていた。
わたしはご老人の隣に立ち、まずは生ビール(一番絞り450円)を注文した。
ビールと引き換えに千円札を差し出すと青年の店員は「後払いでいいですよ」と言った。
支払いシステムは後払い式である。
酒肴にポテトサラダを頼んだ。
僅か200円ながらかなりの大盛。しかも手作りで本格的だ。
青年店員に「手作りでホントにうまい!」と告げると彼は相好を崩しながらわたしにお礼を言った。
そのハキハキとした物言いはとても好感が持てる爽やかさだった。
店内に貼られたメニューを眺めているとその名の通り魚の料理が多く、それが同店の一つのウリになっているようだった。それにしても魚料理がメインの立ち飲み屋も珍しい。
その料理の一例を挙げる。
「クジラ刺身」(300円)「さんま塩焼き」「さんまフライ」。
その中からわたしは「イナダ刺身」(200円)をチョイスした。
「本日のお薦め」という目玉商品は僅か200円というもの。ネタといい値段といい、これは驚きだ。刺身にはやはり日本酒がいい。
280円の「コップ酒」(雅の詩)というのがあり、それをもらった。このネーミング、なんとも立ち飲み屋らしく好感が持てる。
店の壁には千葉の勝浦漁港のポスターが、日本酒のラインナップに勝浦の酒「腰古井」があるところをみると、同店の姉妹店は勝浦漁港から魚を仕入れていると想像できる。
だからこそ「イナダ」が200円で楽しめるのだろう。
この青年店員の真摯な客さばきと相まって、この店、かなりの穴場である。
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