なんとなくまだホテルに戻りたくない。
そんな思いから、わたしはH部さんを誘って、再び真っ暗な高崎の街に出た。
深夜0時に差し掛かる高崎の街は、信号も点滅に変わり、更に闇の色を濃くした。
もう開いている店はないだろう。
わたしとH部さんがそう思った時、闇を切り裂くような派手な店舗が煌々と灯りを灯しているのを見つけた。
真っ赤な外観は鳥居のように見える。
近くまで行くと、そこはアイリッシュパブだった。
「RED LION」。
麒麟の次は真っ赤なライオンである。
我々が店に入るとカウンターの向こうから、「もうラストオーダーなんですよ」と声がかかる。
「あ、ビール1杯だけいいですか」。
とわたしが言うと、店主と思しき男性は「申し訳ないですね」と言った。
ほぅ。樽生のビールは4種類か。
「ギネス」。まぁ、妥当なところ。
「キルケニー」。なるほど。だが、珍しくない。
「バスペールエール」。ほほぅ。
そして「ハイネケン」。
「ギネス」はともかく、エールのビールを2種類も置くとは、アイリッシュパブも名ばかりではない。
この中から1杯のビールを選ぶのだ。
「キルケニー」か「バスペールエール」か。
前者はけっこうあちこちで見かけるが、後者はなかなかない。
瓶詰ならまだしも樽生は。
おもいきり悩んだのに、出した答えは「キルケニー」。
わたしは喉越しを選んだのだ。
あのエール特有の水のような薄さ。フルーツのフレーバーが口の中に広がる。
ジャスミンティーは眠りを誘う薬(by 尾崎亜美)だが、エールもそんな感じ。
優しいアルファ波をエールの薫りが誘う。
ゆっくりと味わいながら飲んだ。
「キルケニー」、やっぱりうまいな。
さぁ、深く眠ろう。
真実よ安らかに。
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