業態転換する会社は少なくない。需要に合わせて、商品を変えていくからである。
進化論ではないが、強いものが生き残るのではなく、環境に対応できるものが生き残るのだ。
居酒屋には業態変換がない。強いていえば、立ち飲みが転んで、座り飲みになるくらいだろうか。居酒屋への業態転換はけっこうある。
うまい中華料理屋や食堂が居酒屋もどきに変わったりする。酒飲みが増えていったことで、いつしか居酒屋になるというものだ。その点、喫茶店も業態転換する資質は充分にある。最も多いのが、食堂化する喫茶店ではないだろうか。
末広町駅と湯島駅の間にある、「喫茶 ボンドール」も、恐らくその部類に入るだろう。「喫茶」と称し、「ボンドール」という名称も、かなり伝統的な喫茶店だったのだろうと想像する。ビルに掲げられた看板に独特のフォントで書かれた「ボンドール」の文字。昭和の喫茶店によく見られる、いかにもという文字。古典的な喫茶店にある由緒正しき純喫茶の名残が垣間見える。
その「ボンドール」は地下にあるが、地上の階段付近に、立て看板がしつらえてある。いわゆる道行く人へのキャッチなのだが、写真入りで、ランチメニューを訴求する。これでもか、というくらいのアピール度だ。それが、本当にうまそうなのである。洋食もあれば、ランチセオリーともいえる定食もあり、メニューは豊富。その看板を見ているだけで、かなり期待を持てるだろう。
店に入って、まごまごしないように、看板を見て、メニューを決めた。「黒豚のピカタ定食」。
暗い階段を降りて、地下の店に入る。
店内は喫茶店ではなく、食べ物屋だ。
店は3人の女性で切りもり。そのうちの一人に「黒豚のピカタ」を注文した。
定食屋と洋食屋は違う。どちらが上というわけでもないが、ボクは洋食屋に憧れる。
「ボンドール」も洋食メニューがあるが、洋食屋ではない。あくまでも定食屋だ。
運ばれてきた「黒豚のピカタ」。ボリューム満点のおかずとごはん、そして味噌汁、珈琲がついて910円。この金額は喫茶店レベルである。
「黒豚のピカタ」。
これがじつにおいしく思わず唸った。もうどこからどう見ても定食屋だ。このレベルなら、毎日でも食べたいが、しかし910円は安くない。
ごはんが固い。水を間違えたと思う。ごはんにはごま塩がまぶされている。これはちょっと余計だと思う。
食後のコーヒー。
洒落たコーヒーカップが秀逸。さすがは喫茶店だ。
いや、元喫茶店といったほうがいいのか。
いやいや、もしかすると、これが喫茶店の進化系。
コーヒーより、定食が魅力の喫茶店。