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居酒屋さすらい 1057 - 時代に取り残されつつあるのではないだろうか - 「鮒忠 十条店」(北区中十条)

2016-08-28 15:51:45 | 居酒屋さすらい ◆東京都内

十条の演芸場通りの人気居酒屋といえば、「田や」であるが、東に15mほど行くと、もうひとつ居酒屋があるのをご存じだろうか。

小さな提灯が店頭を飾り、濃紺の暖簾に「やきとり」と染め抜かれている。メニュー表が店頭に掲げられているが、文字が小さくて見えない。

店構えは「田や」に比べて地味である。

「鮒忠」。

時々見る居酒屋チェーン店。

いつか店に入ろうと思っていたが、ようやく好機が訪れた。

ひどい雨で、雨宿りをするためである。

 

店に入るとお客はまだ誰もおらず、ボクは拍子抜けした。

店内は閑散とした雰囲気だった。

お店には厨房に男性が一人、そしてオーダー係の男性が一人ずつ。

「いらっしゃい」と声をかける。

ボクはカウンターに腰かけた。

 

店内にBGMはかかってなく、やけに静かだ。いや、雰囲気が重苦しいと行った方がいい。

気のせいだと思うのだが、メニューを繰るボクの行動が見られているような気がする。

「失敗したか」。

少しだけ、ボクはそう思った。

 

「生ビール」(520円)に「鮒忠」自慢の焼き鳥を注文した。

焼き物は「もも」が200円。ねぎまが200円。

ちょっと高い。

「皮」や「ささみ」は300円もするので、ちょっと手が出ない。

 

さて、店に客はいっこうに入ってこない。

雨だからだろうか。

常連ならばすでに入店している時間である。この店の常連たちは遅いのだろうか。

 

ビールを飲み干し、「ウーロンハイ」(400円)に。

串焼きの焼き上がりまで、まだ時間がかかりそうなので、「皮つきフライドポテト」(480円)をオーダー。

しかし、480円て。

 

まず「皮つきフライドポテト」が運ばれてきた。

一人分ではない。

 

串焼きがきた。

小さくもないが、とにきり大きくもない。

これで200円か。

 

ここでオーダーしたものを小計してみた。

1,800円。

立ち飲みなら十分満足する金額だ。

 

いや、決して今の状況を満足していないわけではない。

焼き鳥はおいしいし、フライドポテトだって悪くない。

けれども、どこか虚しさがあるのは何故だろう。

 

「鮒忠」は戦後の居酒屋をリードしてきたことは間違いない。

しかしながら、その自負に甘んじてはいないだろうか。

大衆の実像が変化している。その変化に「鮒忠」は気付いているだろうか。

 

コストが高いことは悪いわけではない。

でも、それに見合うものがほしい。

居酒屋としてのワクワク感やグルーヴ感を。

 

小一時間ほどして、ボクは店を出た。

お通し代も入れたら、会計は2,000円を超えた。

その間、客は一人も入店しなかった。きっと、雨だけのせいではないだろう。

 

「田や」と明暗を分けているのは、時代の変化を読み切れていないところにあるのではないだろうか。

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