居酒屋さすらい 1928 - レッズサポはいなかった - 「酒蔵 力 西川口店」（川口市並木）

Mちゃんにお願いしていた、仕事の報酬の支払いをどうするか？　直接本人に訊いたら、手渡しがいいとのこと。ならば、西川口で飲もうと、連絡すると、「兄さん、『かぶら屋』はどうですか？」と返信が返ってきた。

「え？　かぶら屋？　こないだ行った『とさか』は？」　

と返すと、なんだか様子がおかしい。ははぁ、さては妙な気遣いしてるな、Mちゃん。

そんでもって、その当日、「かぶら屋」に行くと、店内は激混みだった。「かぶら屋」の少し先には、「酒蔵 力」がある。浦和レッズサポーターの溜まり場、「力」には、あまり関わりたくないが、混雑しているお店にも入りたくない。「力」を覗くと、お客さんはまばらだった。うむむ、難しい選択である。廃れた酒場には、それなりの理由がある。それに、この店はレッズ推しだ。出来れば、関わりたくない。

レッズサポーターは、相変わらず、傍若無人な振る舞いをしているようだ。最近でも、コロナ禍の声出し応援が問題視され、PSG戦での旭日旗でも、物議を醸している。以前に遡れば、排外主義的な横断幕を掲げたり、暴力事件など、レッズサポの問題は枚挙にいとまがない。レッズサポの一部の人が、そうした暴挙を繰り返していると思うのだが、やはりどうも彼らには共感できないし、関わりたくはないのだ。

だが、混雑している店と空いている店を比較した時、この場合どうするか。コロナの再流行が兆しを見せる中、我々は後者を選んだ。

仕方ない。

店に入ると、テレビは、プロ野球のカープ対ヤクルトの試合が放映されていた。

「兄さん、カープですよ」とMちゃんは言った。困ったな。飲みに集中できないじゃないか。

「今季、カープはヤクルトに勝てないから」。

そうやって、自分は「ホッピー」白、Mちゃんは生ビールをオーダーする。そして、酔っぱらわないうちに、Mちゃんに報酬を支払った。Mちゃんの仕事には、ちょっと不満があった。ただ、この仕事は、ちょっと難しかったし、自分の指示も的確とは言えなかった。

「無駄遣いしちゃダメだよ」と言うと、彼は、「里帰りの資金にします」と返した。

「彼女と行くの？」と訊いたら、そうだと言う。どうやら、彼女とはうまくやっているらしく、少し安心した。

つまみのオーダーをMちゃんに任せると、「枝豆」、「さつま揚げ」をオーダーした。

何故、人は「枝豆」をオーダーするのだろう。「居酒屋さすらひ」の読者諸君ならば、ご存じだと思うが、自分は「枝豆」はオーダーしない。嫌いだからではなく、最もコスパが悪いメニューだと思うのだ。前回、「からあげ番長」でも、T根は、すかさず「枝豆」をオーダーしていた。何故、それを頼むか。全く解せない。

もつ焼きは一通り頼んだ。自分は基本的にタレを選ぶが、Mちゃんは、塩をチョイスした。ただし、「つくね」だけは、タレとしたのが、いかにもMちゃんらしかった。その「つくね」は、ちょっと貧弱だった。「とさか」を愛するMちゃんにとって、この貧弱な「つくね」は、許し難かったはずだ。

Mちゃんは、その後「水茄子」を追加した。もっと、腹にたまるものを頼もうよ、と言っても、頑なに拒んだ。

やっぱ、何か変だ。多分、最後、「自分が払いますよ」と言うのだろうと思っていたら、案の定そうだった。

いやいや、その報酬は手つかずのまま、持って帰ってほしいと思っていた。

「Mちゃん、気を使わなくていいから」。

君は、これまで搾取をされ続けてきた。いろんな会社を転々とし、家族とも別れた。子どもの養育費をばっくれている人なんて、たくさんいるのに、君はしっかり3人分も納めている。

気持ちだけ貰っとくから。

「また、Mちゃんに仕事をお願いするからから」と言って、別れた。今度は、Mちゃんの好きな「とさか」に行こうと思う。