ゴールデンウィーク只中、むしゃくしゃしたことがあり、飲みに出掛けた。赤羽に行こうと「まるます家」 をネットで検索すると、なんとテイクアウトのみの対応。赤羽はだめか。なら、数日前に行った北千住はどうか。「幸楽」なら開いているだろう。だが、いかんせん遠い。では池袋はどうだ。いや、どこか開いている店もあると思うが、なんだか気が重い。電車に乗らなくてもいいところ。それはもう十条しかない。「天将」なら、やっているんじゃないか。根拠のない確信が、自分に十条行きを決断させた。
徒歩にて十条銀座へ。
13時過ぎの商店街はそこそこ人が歩いている。
立ち飲みの「勝」。開店しそうだが、まだ準備中。そして「天将」。シャッターが閉まり、貼り紙がある。5月1日から休業。なに?昨日までは営ってたのか。
いや、「天将」がダメでも、十条には「三忠食堂」があるじゃないか。店の前まで行ったが、シャッターが閉まっている。何か様子が変だ。こちらは休業ではなく、閉業だった。いやはや、我々北区民は何か大切なものを失ってしまった。
さて、万策尽きた。もうどこか適当なところで飲むしかない。十条銀座を戻ると、「じゃじゃ馬」が店を開けていた。一年くらい前に、リニューアルした店だ。店頭にビリケンさんが鎮座する。手前の踏切に続く、細い道では、2階の中華が営業している。どちらにするか、消去法で、「じゃじゃ馬」を選んだ。
ぐるりと厨房を囲むカウンターだけの店。その店内は決して狭くはない。珍しい造りである。先客は一人。常連さんらしき、おばあちゃんである。
カウンターに座る前、得意の時間稼ぎをして、壁のメニューをチェックしたが、何も情報は得られなかった。仕方ない。適当に、「酎ハイ」をオーダーするか。
マスターは男臭い、関西の兄貴といった感じで、「プレーン?」と一言返してきた。どうやら、「酎ハイ」はあるようだ。
その「酎ハイ」はタンブラーで出てきた。宝焼酎のタンブラーだか、中身がそれかは分からない。一瞬「樽ハイ倶楽部」かなとも思ったが、それほど甘くもなく、悪い味ではなかった。
壁には様々なものが貼られていた。メニューはファイルにまとめていて、壁はほとんどがポスターだった。ファイルのメニューはちょっと苦手だ。ページを繰って、いろいろ探さなければならない。ファイルが他の客にとられたら、待ってなければいけないし。ページをめくったが、魅力的なつまみはなかった。
ふと、頭上を見上げると、手書きの短冊が見えた。筆のようなものでバカボンパパが描かれており、「ポテサラ」とある。これはいい。そのポテサラをオーダーした。ほとんどじゃがいもだけの「ポテサラ」。にんじんやきゅうりの姿は見えない。実にシンプルな「ポテサラ」だが、味は悪くない。
やがて、一人の若者が店に入り席についた。そして彼はシャンパンを飲みはじめた。やんちゃそうな若者である。上方系の串揚げとおでんをメインにする居酒屋にシャンパンという組み合わせが異様だった。やんちゃそうな若者は昼間からシャンパンをあおり、饒舌に話す。どうやら、先客のおばあちゃんとも知り合いのようだった。
冷蔵庫にホッピーがあるのが見えた。「酎ハイ」の次に、「白ホッピー」をオーダーした。「酎ハイ」をやめたのは、味ではなく、あくまで量の問題である。
シャンパンをあおる若者は、商店街を歩く人の数であったり、マスク売りの話題だったり。途中、何度か話しに割り込もうと構えたが、ついぞそのタイミングはなかった。
もう一品、何かつまみはないかなと思っていたところに、手書きのメニューが、目 に飛び込んできた。それが燻製である。燻製セットは2種類。ベーコン、鯖、うずらにチーズの盛り合わせをチョイス。このラインナップにクラッカーがついて680円である。
「クラッカー以外は手作り」とマスター。それを自分は、「クラッカーも手作り」と聞き間違えた。思わず「クラッカーも?」と聞き返すと、「クラッカー以外ね」と言い直し、ちょっとした笑いが起きた。
この手作り 「燻製」が本当に旨かった。つまみとしては重すぎず、さりとて軽すぎず。ほどよいつまみだし、肉、魚、卵にチーズと、飽きさせない盛り合わせの数々。これで一気に楽しくなった。
序盤は重苦しい展開だったが、「燻製」で逆転。楽しい昼飲みになった。「三忠食堂」を失ったが、「じゃじゃ馬」を新たに獲得した。
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