三十路の食卓

食事の記録・食にまつわるあれやこれや
かっこいいごはんも いいかげんな飯も 全ては私のリアリズム(おおげさ)

なまりぶし

2013-03-11 10:41:48 | こんなものを食べてみました。
〈1月30日の食事〉
朝:チーズトースト キィニョンのスコーン コーヒー
昼:お弁当(玄米、鰤の醤油麹漬け焼き、ニラ入り卵、キャベツとしめじのごま和え)
夜:たまごサンド もっちチョコパン インスタントのパンプキンスープ

---------

池袋の西武に、平翠軒が出店していると知る。
本店が倉敷にある、美味しいもののセレクトショップである。
(倉敷に行った時には、立ち寄らせていただいた。)
そこで出会ったのが、鰹のなまりぶしのオリーブオイル漬けなのであった。



なまりぶしと言えば、思い出す話がある。
私が好きなマンガ『女の子の食卓』で、なまりぶしが出てくる回があったのだ。

ある小学生の女の子が、おつかいを頼まれた。
その中には、なまりぶしもあった。
その子を、下校途中のクラスメイトの女子集団が見かけ、呼び止める。
「何を頼まれたの?」と聞かれ、「◯◯と、◯◯と、なまりぶし。なまりぶし、お父さんが好きでね」なんて答える。
それを受けて、呼び止めた側のひとりが、尋ねる。
「それって、猫の食べ物でしょ?うちでは、ペットの△(猫の名前が入るが失念)にあげてるよ」

話題はそこから猫の話になるが、買い物を頼まれた女の子が複雑な顔をして黙っていることに、猫発言をした子が気付く。
帰宅後、気になって母親に尋ねる。
「私、変なこと言っちゃったのかなあ?」

なまりぶしの生臭さが嫌いで、家族の食卓には出してこなかった母親は反省し、なまりぶしとキュウリをマヨネーズで和えたサラダを少女に作り与えた。
少女は美味しさに感激し、買い物をしていた女の子に謝ることを決意する。
が。
謝ったその後、避けられていることに感付き、取り返しのつかないことをしてしまったと知るのだった。

少女は落涙し、「自分のことが初めて嫌いになったのは、あのときだ」というモノローグで話は終わる。
切ない話である。
別に「キャットフード食べてるんだ~」などと嘲ったわけではない。
お互い子どもだったから、不用意に傷つけてしまうし、悪意なく言ってしまった言葉にも傷つく。
ただ、こういうことは大人にだって起こりうる、とも思う。
それ以来、同じくなまりぶしを食べたことがなかった私にも、なまりぶしは切ない食べ物になってしまった。

それから数年、平翠軒にて。
数ある商品のうちこれが目に留まったのは、物語とは無縁ではないと思う。

食べてみる。
オリーブオイルに浸かっているから、少女たちが食べていたものとは大きく違うのだろうが。
なんというか、ツナピコをグレードアップしたような味だ。
この期におよんで貧しい表現てあるが、そう感じた。
要するに美味しくて、うむ、これを猫だけに食べさせるのは勿体ない。

その人の食文化は、幼少期の記憶までをも網羅した大切なものだから、自分との違いを感じても、驚きすぎるのはよくないことだ。
ましてや、あげつらうなんて。
自分にとって、なまりぶしはそれを学ばせてくれた食品なのである。

(余談)
封のラベルを剥がしたら、その跡が「開封」という文字が文様状で、妙に感激。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿