三十路の食卓

食事の記録・食にまつわるあれやこれや
かっこいいごはんも いいかげんな飯も 全ては私のリアリズム(おおげさ)

ばたばたと山形、寒河江

2013-08-14 21:04:48 | ちょっと遠くに行きました。
〈6月17日から23日の食事〉
大きい写真は22日のもの。

6月17日



暑くなってきたのに伴い、生ゴミの処理を「新聞紙の上で水分をできるだけ吸わせて乾かし、のちにまるめて捨てる」に切り替えた。
水気が何よりの腐敗の源と言うことで、臭い対策である。
暑くない時期の「ゴミが出た段階でビニール袋に入れて、即ゴミ箱へ」よりも格段にかさばるのたが、背に腹は変えられないというわけだ。
とはいえ、春先よりはよっぽどゴミの総量は低くて、花粉症の時に使うティッシュの量に改めて驚愕させられるのであった。


6月18日



偏食がだいぶ収まってから、高熱を発することがなくなった、という話を以前書いた。
それ以外にももたらされた効能があったと、先日気づいた。
爪が丈夫になったのである。
私はかつて爪が薄く剥がれてしまうことに悩んでいたのだが、最近は剥がれる気配すら皆無なのだ。

マニキュアの類いをしなくなったせいか…と思ったが、身繕いに一切構わなかった10代の頃さえ、爪は脆かったのである。
これは食生活がもたらせたものなのでは。

爪の主原料はたんぱく質であり、たんぱく質は肉や魚や豆から摂れる訳で、なるほど日々充足しているわと思うのだが、でも待てよ。
肉を嫌いだった時期はないし、食べてきた自覚はあったけど、あの時足りてなかったのか。
もしかして、炭水化物と油ばかりで構成されたものだったのでは。
そういえば、最初に働いていた会社では、カップ麺だけで食事を終わらせていたことが結構あったのであった。

食べるもので体も体調も作られる。
そんなことに改めて気づいて、身震いしている。

…と、書いていたのは8月5日の朝のこと。
こんなことを書いていながら本当に恥ずかしいことなのだが、その晩に扁桃腺炎をやらかしてしまい、39℃台で安定・最大40℃の高熱を出してしまった。
おまけに熱が収まったあと、建てつけの悪い窓を開けるときに引っかけ、爪を割ってしまったのである。
豪語した途端にこれか。
おごれるものは久しからず、ってこういうことなのかもしれない。


6月19日



体は食べたもので作られるとはいえ。
ひとつひとつの量ではなく、食材の数を増やして食べて行きたいものだ、と思うものの難しい。
特に食が細くなりつつある今、コンビニのご飯ものに頼ると、ほとんどそれだけでお腹がいっぱいになってしまう。
けど、なるだけどんぶりものではなく、幕の内式のお弁当を選ぶようにしよう。
こう考えると、つくづく自分にとって自作弁当は命綱なのだと痛感する。


6月20日



レトルトカレーは美味しいけど、だから野菜足りないってばよ!
…レトルトカレーを食べたかったら、半分にして残りはタッパーにでも移しておくべきなのかなあ…


6月21日



次の日の出発が早いため、前日に宇都宮に前乗り。
母と妹とともに、寿司に舌鼓を打つ。

この回転寿司店はマンガで紹介されたことがあるようで、その回のみを抜粋して編集された小冊子が置いてあった。
それを読むと、我が栃木県は寿司の消費量が全国2位だったか、とにかく寿司をよく食べる県民性を持つらしい。
海なし県なのだがなあ。
海を持たないからこそ海産物に憧れるってことなんだろうか。


6月22日



何故宇都宮に前乗りしたかって、理由はこれだ。
山形・寒河江へ、母と妹とさくらんぼ狩りの日帰りバスツアー!
お昼は山形牛のしゃぶしゃぶだ!
その出発が宇都宮駅周辺に朝7時台で、当日始発で東京の我が家から向かっても間に合わないということで、前乗りと相成った。

さくらんぼ。
実はあまり関心のない果物だったもので、妹に誘われた時に難色を示したのたが、一番新鮮な瞬間を丸かじりって、やっぱり違うもんです。
それはそれはとても美味しくて、出かけるのを渋っていてすみません。

それにしても、初めての東北訪問となりました。
他にも色々と巡ってみたい。




6月23日



山形の道の駅にて、燻製ゆで卵・スモっちを発見、購入。
それを早速次の朝食時に食す。
家族も気に入ってくれたようでよかった。
そしてバタバタと東京戻り。

---------

ダイジェストはまだ続きます。


いざ鎌倉、三軒茶屋

2013-03-31 16:41:45 | ちょっと遠くに行きました。
〈2月24日の食事〉
朝:トースト ずんだジャム 紅茶
昼:チーズハンバーグのランチセット @ミカサ/大船
夜:日本酒いろいろ 焼き鳥 明太子の糠漬け炙り @赤鬼/三軒茶屋

----------

ルーティン潰しの仕上げ、というべきか。
鎌倉方面に、髪を切りにいったのであった。
それまで懇意にしていた美容師さんが結婚を機に店を辞め、ご主人と一緒にご主人の実家に近い方で新たに店を出すのだという。
髪型を変えたいときは行きますね、なんて話をしていたのだが、今がその時だ。
いざ鎌倉。

その前に腹ごなし…という訳で、大船のミカサへ。
その昔、松竹の映画の撮影所が近くにあったらしく、撮影班がよく訪れた店なのだという。
クラシックな洋食店という佇まいながら、ボリュームに富んだメニューが多いのは、撮影班を胃袋で支えた経緯ゆえか。
同居人の頼んだ「カツメシ」が、圧巻。
下からバターライス、トンカツ、バターライスという順に盛られた皿は、小高い丘のようである。
少しもらったが、美味しかった。
私が頼んだチーズの乗ったハンバーグもむろんのこと。

その後美容室に行き、久々の再会に喜び頭をさっぱりさせた後は、鎌倉駅に移動。
誕生日が近いあの人へ、そして私に、ジャムを買おう。
して、ジャムと焼き菓子の店、ロミ・ユニ・コンフィチュールへ。
鎌倉滞在はわずかその為だったが、それでもゆったりといい気分に浸れる鎌倉、最高。

三軒茶屋に移動。
私がよく行く居酒屋の主人たちが、口々にいいと教えてくれた居酒屋・赤鬼に行くのだ。
たどり着いたのは日曜の遅い時間ながら大にぎわいで、客が去ってはまた別の客がやって来るという盛況ぶりだ。
そしてそんな混みようながら、食事が待たされずに出てくる素晴らしさよ。
もちろん、味も素晴らしいものであった。
引っ越して以来三軒茶屋には行きにくくなったけど、それでもまた行きたい。

といった一日。
髪の毛と一緒に、イライラといった毒素まで削げ落とした思いだ。
日々の生活が嫌いになる前に、また小さな旅を打ち立てよう。

時をつなぐ道具たち(母娘旅行記・白川郷編)

2013-02-28 22:18:35 | ちょっと遠くに行きました。
〈1月20日の食事〉
朝:朝食バイキング @ひだホテルプラザ
昼:五瓶餅 飛騨牛まん 飛騨牛のメンチカツ 甘酒
夜:キノコ入りクリーミーチーズのおやき トマトチーズカレーおやき 緑茶 アルフォート @諏訪湖サービスエリアで買ったものを高速バスの車内で

------------

朝食を終え、少しだけゆっくりしたら、もう出発だ。
高山でやっているという朝市に後ろ髪を引かれながらも、バスに乗り込む。
一時間ほど揺られ、着いた先は白川郷。

今回の旅では、滞在時間を3時間とした。
90分しか居られなかった去年のリベンジである。

バスの発着場所から橋を渡り、白川郷の集落へ。
そしてそこから更に展望台行きのバスに乗り、展望台で町並みを臨む。
と、ここまでは去年と大差なし。
違うのは、時間をゆっくりとった分、散策も飲食も思う存分楽しめたことである。

白川郷は、豪雪に耐えうるような家と屋根のつくり=合掌造りで有名で、その町並みは世界遺産に登録されているのだが、寺社が多い他の世界遺産と大きく違うところは、「ひとのお家」ということである。
要は、人が住む家なのだ。
だったら外観のみを見れるってこともなく、中には一般解放されているお宅もある(もちろん博物館のように受付があって、住人の方が普段使うお部屋は閉ざされているのだけれど)。
うち一つにお邪魔いたしました。
去年は時間がなくて行けなかったんだよねえ。
ごめんください、お邪魔します。

柱が、黒い。
これは確か、囲炉裏からあがったススによって黒くなり防虫・防水の役目を果たすのではなかったっけ。
よく磨きこまれ、ピアノの黒鍵のように美しく光っている。
そしてくだんの囲炉裏や、使い込まれた古い茶箪笥などを見つけるたびに、心がうち震えるような思い。

圧巻だったのは、階段を登っていった先だった。
かつて蚕を飼っていた部屋(昔、白川郷では天井裏を利用しての養蚕がさかんだったのだ)では、過去に生活を支えてきた道具の数々が展示されている。
現在50代の母は、縄をなう機械なんかを「見たことある!」などと声をあげていた。
生家にも似たような道具があったらしい。
そういう話を聞くと、「昔」というのはかつてあった時間のことで、そこから脈々と色々なものが受け継がれて「現在」に至るのだなあと、当たり前の事に思いを馳せてしまう。

頭上を見れば、手が届きそうな距離で茅が確認できた。
あの三角形を構成するものが、すぐそこに。
またまた感激。

昼食は、展望台行きのバスの停留所近くにあった「お休み処 ちとせ」にて。
昨日と同様、しっかりとした一品メニューではなく、軽食的なものを何品かいただくことに。
ここで食べた飛騨牛まんが、これがまあ美味かった。
2つに割れば、ふかふかの温かいまんじゅうから、飛騨牛で作られた餡が湯気とともにお目見えする。
一面雪で白い世界を歩いて冷えた体が解されるようだ。
またこれだけでも食べに行きたいなあ。





最後に土産物をひやかし、いったん高山行きのバスで出たあとに復路となる。
高山と白川郷に別れを惜しみながら、新宿行きの高速バスに乗り込んだ。
そして午後10時過ぎに新宿着。
長く密な二日間が、こうして終わった。

バスの乗車時間が長かったためにヘトヘトになってしまったが、旅が終わってしまえば、よいところばかりが思い出されるというもの。
二年続けて冬に行き、白い高山・白川郷しか見ていないからその他の姿も見たいし、何より滅多にない3人での旅が楽しかった。
また行きたいな。

そんな感じで充実したこの2日間。
ツアコンよろしくよく動いてくれた妹に、感謝。





私が吉田豪になった日(母娘旅行記・高山編)

2013-02-27 11:19:20 | ちょっと遠くに行きました。
〈1月19日の食事〉
朝:ランチパック トマトジュース
間食:いきなり団子
昼から夕方にかけて:甘酒 飛騨牛の串焼き 飛騨牛の煮込み 飛騨牛炙り寿司 小鯛焼き など
夜:飛騨牛づくしコース @ひだホテルプラザ

-----------

朝5時には起きて、6時には電車に飛び乗っていた。
行き先は新宿。
そんな朝もはよから何しに、といえば高速バスに乗るため。
向かうは岐阜県・高山、そして白川郷である。

去年、妹と高山・白川郷に行った。
だがしかしバスツアーで行ったため、気の済むまで楽しんだとは言い難かった。
なんせ白川郷の滞在時間は90分で、映画よりも短い。
そして白川郷の見事な景色と、高山での買い物の楽しさに、やっぱり実家の母も連れて行きたいと思った。
そんな訳で母娘3人、交通手段・高速バスと宿だけ決め、あとは道中自由という旅を決め込んだのである。

さて、行きのバスではこんな事があった。
バスのシートは2人分が1セットゆえ、母と妹が並んで座って私がその前の席に座ったのだが、私の席の隣のおばちゃんは母・妹の席の通路を挟んだ隣の人と連れ合いらしい。
だったら席を交換しませんか、お連れ同士隣になった方がよいでしょうと持ちかけると、母・妹と隣席の方は頑なに断る。
何でも「この人(連れの、私の隣の席の人)おしゃべりだから、寝せてくれないんだもの。朝早く起きてるんだから、バスの中では寝ていきたいのに…。だからわざと席を外したの!」と言う。

そ、そうですか…と指定席を交換せずにそのまま発進すれば、なるほどと納得したのであった。
おばちゃん、初対面の私にも物怖じせずに、しゃべるしゃべるしゃべる。
私も私で聞き出すような形となってしまいらおかげで個人情報が開けっ広げだ。
二人の娘さんの片方は清澄白河に勤めていて、もう一人は地元の埼玉に就職を決め、更にはその娘さんは毎週スノボーに行き、関ジャニ∞の大ファン、父母に娘二人という家族構成ゆえに父の立場が物凄く弱いことなど、旅には関係ないおばちゃんの情報が私の中にストックされることとなった。
何だろう、私はこのおばちゃんにとって吉田豪か。
知りすぎてる女か。

とまあ、私も眠りたかったのだけど、退屈しなかったことと、有益な現地情報をゲットできたことを感謝しよう。
名も知らないおばちゃん、ありがとう。

サービスエリアでの休憩を挟んで6時間弱、高山駅近くの停留所着。
ホテルにチェックインして荷物を置いたら、さあ、散策に買い物に買い食いだ。
そう、買い食い。
今回はちゃんと昼食をとらずに、街を歩いて目についたものを買い食いし、夕食までの腹を満たそうという算段なのである。

一番手は、去年の高山散策でも飛騨牛の串焼きに目を見張った六捨番。
さっと炙って塩をふっただけの串焼きが、何でこんなに美味しいのか。
そして今回初めて食べた牛筋の煮込みも、とてつもなく美味しい。
幸先のよいスタートだ。

その他、色んな店で飛騨牛の炙りを握り寿司にしたものや、甘酒や、小さな鯛焼きや。
色んなものに舌鼓を打っては、胃の中に落とし込んでいった。
これも3人で行ったからこそで、昨日の一人買い食いの愚行を改めて思ってしまう。

そして買い物テンションが高まって、いつもより多く土産物を買い込んでしまったのも、3人で行ったからこそなのだと思う。
欲しいものが2つあったとして、迷ったら両方買っちゃう…というのも、ほかの2人がそうしているからつられる行為なのだったりして。
そうしてずっしり買ってしまったお酢の瓶、重かったなあ。
もちろん、黒がシックな街並みも存分に堪能いたしました。

宿に戻りゆっくりした後に、夕食。
飛騨牛づくしの和風コースは、普段あまり牛肉を食べない身からすれば、一年分ほどの牛肉を食べたことになるんではなかろうか。
量が多くて平らげるのに苦心したが、そんな満ち足りた腹でも美味しいのって、本当に美味しい料理だってことだろう。
ご馳走さまでした。

旅の疲れと満腹さで、部屋に戻ればもう起き上がれない。
しばし寝入ったあと、力を振り絞るようにして入浴を済ませ、のろのろと就寝。
明日は、白川郷である。


倉敷へ

2012-10-22 09:07:24 | ちょっと遠くに行きました。
〈9月28日の食事〉
朝:カロリーメイト・チョコレート味 緑茶
昼:カレーライス アイスティー
間食:ぶどうのスムージー
夜:鮮魚のアヒージョ ソーセージの盛り合わせ ビール二種類ほど @テイキー/都立大学

----------

ひとり旅最終日。
行き先は倉敷である。

瀬戸内海の島々に行くにあたり、東京からなら高松まで飛んで船、というルートもあったのだが、何故岡山を駐屯地にしたか。
といえば、飛行機が苦手でなるだけ乗りたくないというのもあるが、大きな要因が、倉敷にも行きたいからなのであった。
島へも倉敷にも、岡山からのアクセスはよいのだ。

さて、お世話になったホテルをチェックアウト。
岡山駅から倉敷駅までは電車で20分弱、その上電車の本数も多い。
乗り遅れに怯えなくていいという、安堵といったら(と思ってたら、実際一本乗り遅れました)。

倉敷での目的は、散策と買い物。
駅から15分も歩けばもう、目に美しい美観地区のお目見えだ。
水路の両脇にはすらっとした柳に、白さが青空に映える蔵が並ぶ。
水路には、なんと白鳥まで…!
こんな町中で白鳥を見たことなど、今まであっただろうか。
歩くだけで心が洗われるような街である。



さて、倉敷は昔から有名な帆布製品やデニム、近頃では可愛らしい色・柄のマスキングテープと、ガーリー寄りの文化と親和性が高いものの生産が盛んである。
(正確には、デニムは倉敷駅のまわりではなく、倉敷市の中でも児島という街で盛んらしいが)
特にマスキングテープはよく買うし使うから、テープの直営店に行けたのは感激だ。
また、帆布の小物なども購入。
つくづく、物欲との闘いにもなる街でもある。

そして、平翠軒。
数年前のデイリーポータルZの記事(「岡山のおいしいものブティック「平翠軒」」)で読んで惹かれ、以来ずっと行きたいと思っていたこちらに、遂に訪問である。

平翠軒は、お店のオリジナル食品のほか、全国各地・世界各国からの選りすぐりのいいものを集めた、〈食〉のセレクトショップである。
記事のおかげで予備知識はあったものの、実際に目の当たりにしたときの、ところ狭しと置かれた食の世界には、ただひたすら圧巻。
そのどれもこれもが、今まで見たことがないようなもの。
手当たり次第欲しくなってしまって困り果て、一度店を出て昼食を摂り、冷静になってから再訪したほどである。
候補を絞って絞って数点を買ったが、もう少し買えばよかったと今さらながら後悔している。
いや、また行こう。



その後、雑貨屋を巡りカフェ休憩もし、最後には渡し舟で水路を巡って、フィニッシュ。
渡し舟の上では、船頭さんから街や蔵の話を聞いた。
歴史を知るか否かで街の姿は変わって見え、貴重な体験だった。

岡山から、東京への新幹線に乗る。
戻ってからの夕食を同居人と摂ったせいか、早くもこの旅は夢ではなかったかと思えてくる。
が、土産物や写真を見れば、紛れもなく私はそこにいたわけで。

瀬戸内海の島々、また行きたいな。
日にちと場所を吟味した結果、今回は駐屯地にしてしまったけど、岡山市内もゆっくり回りたい。
うむ、何度でも思い出したい、いい旅であった。

旅二日目・1 豊島へ

2012-10-19 21:24:19 | ちょっと遠くに行きました。
〈9月27日の食事〉
朝:玄米クリームブラン・イチジク 緑茶
休憩:りんごの炭酸飲料 @地中美術館内カフェ
夜:ドライカレー 生ビール @Little Plum

-----------
記事一覧
最初に結論を申し上げると、この日に食を堪能したのは夕食だけだ。
しかも、昼抜きだ。
いやあ、なんせ時間がなかった。
それは何故かといえば。

ひとり旅二日目。
ベネッセの運営する〈アートの島〉3つのうち、この日は最大の島である「直島」、そして「豊島(てしま)」を巡ろうとしていた。
が、いかんせん島間のアクセスは、そんなにいいわけではない。
美術館の開館時間や電車・船のダイヤを慮って色々計算すると、直島をメインにしたうえで両方一日で廻るには、12時前に豊島に到着後、14時30分くらいに出る豊島発・直島着の船に乗るしかない。
というのを調べて判明したのが、ひとり旅一日目の夜。

豊島にいられる猶予は約2時間半…それって、「巡る」と称していいものだろうか。
移動時間を考えたら鑑賞に費やせる時間はもっと限られるし、ましてや食事なんて。
ああ、昨日犬島行ったあと豊島に行けばよかったんだ。
昨日のペースだったら犬島発・豊島着の船には十分間に合ったし、豊島と岡山を結ぶ船は多いから、帰りもゆとりを持てたはず。
ひとつでも乗り物を間違えたらアウトという、こんな切羽つまった気分で今日一日を過ごすなんて。
どれもこれも、下調べが甘いせいである。

まあ、変えられない運命を嘆いたって仕方ない。
気を取り直して、岡山駅より電車で宇野に移動、そこから豊島へと向かう。
港に程近い場所から発着しているシャトルバスに乗り込み、一路「豊島美術館」へ。



この豊島美術館が、素晴らしかった。
いびつな半球状の白いドームの天井に、ぽっかりと開いた大きな穴。
下には泉のような、大きな水たまり。
足下を見れば、つつーと泉に向かって流れる水、そして水を生む小さな球体。
裸足の足に伝わる床は冷たく、かすかな音さえ響く(それこそ、腹が鳴る音さえ…恥ずかしかった)。
なんとも不思議で、それでいて心地の良い空間だった。

しばし放心し、すっかり虜になるも、ゆっくりとはしていられない。
後ろ髪を引かれるように、美術館をあとにする。

美術館から港へ戻る道には、じつはタクシーを呼んでいた。
なるだけ出費は抑えたいが、ちょうどいい時間にシャトルバスが出ていなかったのだ。
結果的に、それは吉であった。
今まで沢山の観光客を運んでいたであろう運転手さんから、豊島美術館のいいところをとくと聞けたのである。

ドームの天井にあく穴はガラスなどがはまっている訳じゃないから、天候や時間によってまったくの違う姿を見せること。
特に印象深かったという、どしゃぶりの雨の日に見せた姿。
晴れたあとには、ドームから伸びるような感じに虹がかかったのだという。
極め付きは、他に客もない時にたった一人で美術館の中に入ること。
さぞかし別世界に連れて行かれたような気分になることだろう。
それ味わいたい!もう一度行こう、今度は他の物も見たいし!と、決意を固くしたのであった。

そして、直島への船に乗る。
まだ旅は終わらない。



-----------

という訳で、長くなってしまったので旅二日目は2回に分けてお送りします。
続きはこちらよりどうぞご覧ください。

旅二日目・2 直島へ

2012-10-19 21:21:41 | ちょっと遠くに行きました。
〈9月27日の食事〉
朝:玄米クリームブラン・イチジク 緑茶
休憩:りんごの炭酸飲料 @地中美術館内カフェ
夜:ドライカレー 生ビール@Little Plum

-----------

こちらからの続き。
ゆえに、食事写真・内容は重複になります。

-----------

さて、直島着。
時刻は既に15時近い。
美術館の閉館は18時、別のアートプロジェクトは16時である。
依然としておちおちしていられないので、先を急ぐ。

島の町営バスに乗り、まずは「家プロジェクト」へ。
これは元々存在していた古民家などを、色々なアーティストがアート化した作品群である。

その中でもっとも印象的だったのは、「南寺」だ。
(って、実を言うと、時間切れで全部廻りきれなかったんだけど…)
建物の中は途方もないほどの暗がりで、手で壁に触れて確認しながら前に進む。
が、実はずっと弱い光で満たされていて、目が慣れて初めてようやく届くのだ。
ものを見るのには光が必要である。
普段は気に留めないそんな事実を思い出させてくれた、貴重な体験であった。

さて、どんどん次に行こう。
「直島の美しい景観を損なわないように」と、建物の大半が地下に埋設されたつくりなのが、「地中美術館」。
フロアがすべてB1よりも下ながら自然光が降り注ぎ、一日・または四季を通して作品の表情が変わるのだという。
これまた、条件を変えて再度訪れたい場所である。
こちらでは観賞後にカフェで一休みし、ようやく一息ついた。

地中美術館をあとにし、港へ行くバスの停留所までは歩く事にした。
その30分ほどかかる道の途中途中の海岸に、半ばほっとかれるようにして、アート作品が点在しているのである。
(※スタイルとしてはこんな感じだが、「ベネッセ ハウスミュージアム」の所蔵作品)
時刻は既に17時台、空がオレンジから紫色に染まりかけ、夕日を受けて光る瀬戸内海がきらきらと美しい。

そして、これだ。
草間彌生さん作、「南瓜」。




なにしろこの作品の写真が目に止まり、「これ見たいな。そうだ、一人旅の行き先はここにしよう!」と決めたほど、強く惹かれた作品である。
そりゃあもう何枚も写真に収めたし、脳内には「やっと会えたね…」という気障なセリフが湧いてきたさ。
とにかく、満足だった。

一日歩き回って、すっかり汗みどろだ。
じゃあ汗を流したいよね…というシチュエーションにピッタリなのが、「I♡湯」である。
何か、といえば銭湯なのだが、これもまた大竹伸朗さんによるアート作品なのである。
衣食住のうち「住」に該当するものまでアートだなんて、どれだけアートに満ちあふれているのですか、直島は。

目に満足、体もすっきり…としたところで、ようやく胃を満たす。
港近くのカフェバーにて、ドライカレーを、ビールを。
染みた、染みた、美味しかった。
ごちそうさまでした。

島で過ごす時間を名残惜しみながら、岡山行きの最終フェリーに乗って直島をあとにした。
時間の心配をしないで夜の島を楽しめるし、時間のなさから鑑賞を見送った作品・美術館もあるし。
次は島に泊まって巡りたいな、と強く思った。

こうして終わった「島巡りの旅」。
道中で何回か旅の様子をツィートしたのだが、岡山に住む方や各島でアート巡りをしたことがある方から、おすすめスポットのリプライをもらえたのが嬉しかった。
特に豊島へは、時間のなさからあきらめかけていたから、もし勧めてもらわなかったら諦めていたかもしれない。
あの素晴らしい空間を味わうことなくこの地を去っていたらと思うと、ぞっとするわけで。
本当に勧めていただけてよかったです。
改めてありがとうございます!

岡山に眠って一眠り。
目が覚めたら、一人旅最終日だ。

----------

おまけ

直島・豊島は香川県なのだが、うどん県知事であらせるキャナメのポスターをみて、ここは香川県なのだと強く意識。


犬島へ

2012-10-18 20:55:13 | ちょっと遠くに行きました。
〈9月26日の食事〉
朝:ハムとチーズのサンドイッチ(イトキトのライ麦パン使用) ほうじ茶
休憩:犬島ジンジャーエール @犬島チケットセンター内カフェ
間食:ぶどうのパフェ @ホテルグランヴィア岡山・カフェレストラン オリビエ
夜:デミカツ丼定食 @平井食堂

----------

毎年恒例となりつつある、夏期休暇を利用した一人旅。
今年は行き先を瀬戸内海にした。
ベネッセが運営するアートの島々を巡るのだ。

一日目のこの日は、まずは東京から新幹線で岡山へ。
そこから電車やバスを乗り継ぎ、宝伝港という港から小さな船に乗る。
そうして辿り着くのが本日の目的、犬島だ。

犬島に着くなり、港から程近い距離にある『精練所』へ。
しょっぱなにして、本日のクライマックスでもある。

精練所は、明治時代に製銅工場として使われていた遺構を、美術館にリノベーションしたもの。
収納物は、建物内部の構造を生かした美術作品あり、三島由紀夫邸の築材や言葉を使用した作品ありと、盛りだくさんである。
が、個人的にもっとも胸を打ったのは、建築物としての精練所の姿そのものだ。



私はもともと、鉄骨やコンクリート、レンガなんかを利用した近代的な建物が好きである。
木の温もりより、無機質な物の織り成す直線や曲線に美を見出だす質だ。
さらにそれが経年変化を見せ、朽ちていたりなんかしたら最高。
真っ青な瀬戸内海や、のどかな樹木とのコントラストもまた絶妙。
この精練所は、まさに自分好みの空間なのであった。



チケットセンター内のカフェにて、オリジナルのジンジャーエールでひと休み。
来た道を逆に辿って岡山駅に着けば、既に夕方17時台。
時間に追われて食事時間が取れなかったり、また暑いなか歩いたことから食欲そのものが湧かなかったりして昼食しそびれていたのだが、このタイミングで軽い食事を摂ることにした。
食事代わりにしていいのか、そもそも軽いのかそれといった感じだが、フルーツパフェである。

岡山は白桃や(さすが桃太郎のくにである)マスカットなどのフルーツの生産が盛んで、それらを使ったフルーツパフェを作る店が増えているらしい。
それで食べてみたかったのだ。
選んだのは、秋の始まりらしく、ぶどうを使ったパフェ。
洋酒が効いた大人っぽい味わいで、美味しくいただきました。



宿泊先のホテルにチェックインし、荷物を整理してしばし休憩。
落ち着いたら、早くも夕食である。
さて何食べに行こう、えびめしにひるぜん焼きそばにデミカツに、ああでもやっぱりカキオコってのが食べたいな、と事前に知った岡山のご当地グルメが頭を巡る。
が、くだんのカキオコ(牡蠣のお好み焼き)は岡山市のグルメではなく、また今は牡蠣の旬ではないから、あったとしても冷凍物らしい。
それなら、他のものにしよう、デミカツかな。

実を言うと、デミカツ丼(デミグラスソースをかけた豚カツの丼)を食べるのは初めてではなかった。
ここ岡山の名物であるはずだが、なぜだか九十九里のお弁当屋さんでも食べたことがあるのである。
そういう意味では新鮮味はないのだが、美味しいものを食べて満足するのは大切だ。
そうしていただいた平井食堂のデミカツ丼は、とても美味しかった。

お店からの帰りは、歩いて帰れる距離なのにわざわざ路面電車に乗ってみた。
路面電車のない街で育ったせいか、あればおっと思って乗りたくなるし、旅情も駆き立てられるのである。

こうして過ぎていった、ひとり旅一日目。
この日受けた衝撃と、明日以降への楽しみを胸に、いそいそと眠りについたのであった。

江ノ島へ〈後編〉

2012-07-05 23:38:33 | ちょっと遠くに行きました。
〈5月27日の食事〉
朝兼昼:しらすのピザ 生しらすの前菜 サラダ ウーロン茶 @PICO・江ノ島店
間食:ようかん
夜:アイスクリームやビールやチーザなんかをグダグダと

----------

書く時間を確保出来ないまま7月に突入して驚いております。
まだ5月の内容ですよ、こんにちは。
こりゃあ、次回以降はしばし一週間まとめスタイルにせねばなるまい。
とにもかくにも、自転車で江ノ島に行ってきた・後編であります。

さて、せっかくここまで来たのだから、名物めいたものを食べてから帰ろうと思ったのである。
そこで白刃の矢が立ったのは、七里ガ浜にあるbillsである。
世界一の朝食ってのにありつこうじゃないの。
そこで、自転車は藤沢駅近くの駐輪場に預け、江ノ電へと乗り込む。
汗だくでコジャレたカフェへ単身乗り込む勇気がなかったのと、体力の消耗をできるだけ抑えたかったからである。

店に辿り着いたのは、午前9時45分くらいだっただろうか。
七里ガ浜駅で降り立った客が思いの外多かったもんだから、嫌な予感はしていたのだが、入口付近で残酷なことを告げられる。
なんと、3時間待ちだと言うではないか。
いやあ、店舗が増えた上に、ここが一番郊外にあるからと油断しておりました。
そんな状況に置かれようが、ここは日曜の人気店。
本気で行きたかったら、もっと早めに着くべきなんだろう。

またあとで伺うことにし、じゃあその間の3時間をどうするか。
ならばと、また江ノ電に乗って江ノ島で時間潰しをすることにした。
自転車を停める場所が望めず、また汗だくで人だかりの中を歩く気にもなれなかったので、昨日は江ノ島の賑わっている辺りには行かなかったのだ。

江ノ電の江ノ島駅に降り立つ。
海へと続く通りを行けば、あちこちに海産物の名を書いたのぼりが、メニュー表が。
中でも目を惹いたのは、生しらすの文字だ。
そうか、今は生しらすが旬なんだな。
と認識しているうちに食べたくなるのが人情ってもんで、あっさり予定を変更することに。
まあ、billsはまた今度余裕を持って行こう。

そして「しらすピザ」の文字に惹かれたこちらにて、朝兼昼食を。
しらす丼などではなく粉もんの洋食にしたのは、billsのパンケーキへの執着心がまだ残っていたからなのかもしれない。
生しらすの前菜も、釜上げさしらすのピザも、美味しくいただきました。

藤沢に戻って、自転車を引き取る。
海に近いせいか、陽射しがとてもギラついているように感じる。
スポーツドリンクをしっかり用意して、今度こそ出発だ。

帰り道は、遠回りになるけど分かりやすいルートである国道246号をメインに使った。
もし当初予定通り厚木に行っていれば、確実に使っていた道である。
代表的な街でいうと、246は渋谷を通過する国道だ。
だから行き先を告げる看板には「渋谷」の文字がいつまでも現れ、この道を走っていれば間違いないのだと、頼もしいことこの上ない。

だかしかし、道の起伏が並ならないのであった。
アップダウンの連続に息も絶え絶え、まさか下り坂で時速50kmオーバーするとは。
(普段は下り坂にて出る40kmが最高である)
体も干上がるようで、トータル1.2リットルはスポーツドリンクを飲んだのでは。
探し回らなくても自販機が容易く見つかる、この国の置かれる状況はまことに素晴らしい。

そうこうしているうちに、東京都と神奈川県の区境を跨ぐ。
圧倒的に神奈川県を走る距離の方が長いのだから、行きに比べて感激もひとしおだ。
また、東京に入ってすぐの街を二子玉川にしていたのも、我ながらよい選択であった。
普段よく行く街だからこそ、ホームに戻ってきた感が強く味わえる。

ここまで来たら、地図に頼らずに済むからこっちのもんだ。
馴染みのある街をひたすらに進む。
最後の大通りである環七に差し掛かれば、頭の中には鳴るファンファーレ。
そして、ゴール!
この旅の終了である。

総走行距離は約110km。
さすがにぐったりして、帰宅後は風呂・洗濯・コンビニへの買い物以外は、全てソファの上でひっくり返って過ごしたのであった。

この旅で感じたことは、スマートフォンの有効性である。
ルートマップをプリントアウトしたり神奈川県の地図を買ってきたりしたものの、それでも道を間違えたのだが、スマートフォンによって現在位置と照らし合わせて簡単に軌道修正できた。
壊れる可能性だってあるから頼りきってはいかないし、紙の地図を用意したのも後悔していないが、スマートフォンなくしては成り立たない旅だったと思う。

そして、たくさんの人のアドバイスや激励が生きたことを感謝したい。
ようかんは、燃料補給にこうも有効だなんて。
先に自転車の旅を成し遂げ、私に旅欲を焚き付けてくれた友人には一番の感謝を。
本当にありがとう!