三十路の食卓

食事の記録・食にまつわるあれやこれや
かっこいいごはんも いいかげんな飯も 全ては私のリアリズム(おおげさ)

スラバヤ

2013-03-12 08:05:31 | 食とレビュー
〈1月31日の食事〉
朝:ミニフランスパンにずんだジャム キィニョンのスコーン コーヒー
昼:お弁当(玄米、肉と野菜の炒めもの?、ベーコンとピーマンの炒めもの、カボチャサラダ)
夜:ゆで卵入りカツカレー(セブンイレブンで購入)

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先日、桐野夏生さんの小説『ナニカアル』を読んだ。
昭和の女流作家・林芙美子氏を主人公とし、史実をもとにしながらも、「発見された私小説とおぼしき原稿には、驚くべき真実が…!」という、大胆な仮説が綴られた作品である。
歴史をよく知らず、林芙美子作品を読んだこともない私すら惹き付ける、とても面白い小説だった。

さてこの作品は、その「未発表原稿」の引用、という形をとっている。
舞台は太平洋戦争時の日本とアジアだ。
私はそれで初めて知ったのだが、様々な人気作家が、東南アジアの戦地に派遣されて赴くことがあったらしい。
戦地の様子を書いたものを新聞に載せ、国民の高揚感を煽るためである。

その芙美子氏が訪れた地名のうちの一つを目にして、ドキリとした。
とあるエスニック料理のチェーン店の名前でもあったからだ。
その他、カレーの商品名として使われていて、馴染みのある地名もちらほら。
そうか、みんな地名を由来としているのか。

戦時中、そして戦争の記憶が色濃く残っているときには、戦争が喚起されるような地名を使わないと思うのである。
翻って現在。
戦争が終わってしばらく経った。
戦争を体感した人ももう高齢者だ。
お店のターゲットは若者で、そういう時代だからこそのネーミングなのだろう。

そもそもが、チェーン展開するような店が登場するほど、東南アジアの料理が日本に浸透しているということ自体、戦争は遠い日の記憶となりつつあるということなのだろう。
だがしかし、その店の名の由来を忘れないでいようと思うのだ。
そして、これをカジュアルにネーミングに使えるという世の平和を、ありがたく受け取ろうと思うのだ。

と、重い目線で感想を書いてしまったけど、これはれっきとした恋愛小説である。
恋愛感情と作家としてのプライド。
「灰色の臓器」のくだりには胸が詰まった。
これは比喩であり、戦時中の話だからといってそのものが出てくるわけではない。
けれど臓器という喩えにうなったので、是非ともご一読されたい。

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