
天領ひな陣屋を出て御幸通リを奥に進んで歩いてきた方向からも写真に写したくなる街並み、白壁に黒い瓦の軒先が連なり格子がアクセントになって、それも落ち着いていていい感じ、こういう見事な通りは車の通行を制限したらいいのにね。こちらよりも帰り道となった上町通りはもっと車が多かったが、そちらのほうは覗いてみようという店は少なくなってはいたが、このメインの通りは電柱は無くして道路舗装も含めて修景しているようで、これだけ江戸期にタイムスリップした雰囲気に近づけようとするなら自動車は似合わないですぞ。でも生活道路となると無理ですかね。
御幸通りを反対側から
御幸通りの一番奥の方に草野本家があり、江戸時代の建物も残っていて重要文化財に指定されている。四国の砥部も蝋問屋の大きな屋敷が見事だったがこちらも江戸時代に精蝋業で繁栄したとか、元禄時代に建てられ明治期まで増改築されてきたということで、ここが観光用に初めて雛飾りを公開(今回のためのポスターは冒頭写真のように単独で作っていて、通常よりもこの期間の入場料金は100円高いんだそうだ)したというその人形も見て見たかったが、それ以上に建物だけでも見物に値したと思われるのに、開くのが遅くて見られず仕舞いというのは残念でしたねぇ。
重要文化財の草野本家
草野本家の隣には天領資料館があって、ここでは地元で古くから作られたというおきあげびな展という看板が道路側に、これはホテルなどでも見てきたからと時間もないこともあってこちらもパス。ここからは上町通リに続く中通りの道筋に入って、廣瀬資料館に向かうことに。
天領資料館
他の横道はやや閑散としていたが、天領資料館前から入って行くこの通りだけは店が多く、中でも民芸店などが多くて、下町通リからこの通りの最期までが観光の中心になっているようだ。それにこちらは電柱はあるけれど細い道で、車はほぼ通らないでしょう、そんな遠慮が働く道だ。ここまでのウインドウショッピングで見掛けただけでもちょっとばかり面白い民芸品をいくつか見つけたが、草野本家も見られなかったから日田にはまた機会を見つけてきてもっとジックリと品定めしようかと、こういうものは是非ともというわけじゃないから飛びついて買うこともないものね。それで僕が興味があったおきあげ雛を売っていないのはどうしてかと、ひなまつりの最中なら雛関連の民芸品がまだ多くあってもいいと思うのに、むしろこれからの端午の節句関連のものの方が目を引くものがあったみたい、ほかにはこの地の焼物である小鹿焼などを専門に扱う店があってもよさそうなのに無かったのか目につかなかったのか。
中通りも石畳風でいい雰囲気
入れ子みたいな鯉のぼり人形が愉快
石を加工した鯉のぼりもアイデア物
中通リの中央付近に日田出身の儒者で教育者だった廣瀬淡窓生家が廣瀬史料館となっていて、その遺品や江戸後期の文化や生活を偲ばせるものの展示と、この時期は日田雛まつりに協賛した展示をしているというので見物してみた。館内は撮影禁止となっていたが、こちらでは最後に大きな享保雛があってこれは写真OKと、でも僕が興味を引いたのは雛人形よりもここで聞いた当時の天領日田の役割というか位置づけのようなことについての説明で、ここも飛騨高山陣屋と同じく陣屋があって代官所と言うよりも布政所というべきだと、天領十万石以上の直轄地は郡代でそれ未満が代官だそうで郡代というのは全国に四ヶ所のみ、長崎奉行所からの報告もここを経由して江戸に贈られたという。
この私塾は明治まで続いて4000人以上の入門者があったという、その中には高野長英や大村益次郎などもと、当時としては国内最大級のものだったとか、江戸時代の各藩からは地方であっても中央に負けない人材が育っていた文化的実力があったということで、中央集中の弊害が指摘される今とは大きく違っていたわけだ。
その中でも江戸期の日田は九州外様大名の目付としての政治的役割と年貢収納の役割と幕府の重要拠点だったということで、しかも交通の要所でもあったことから町人の経済活動の中心ともなって栄えたというのは、今の時代の余所者にはピンとこなくなってきていて現在は観光だけと見られているかも、もっとPR宜しきを得ればこういう団体ツアーが全国から集まるかもしれませんぞ。
廣瀬資料館入口
かなり大きい享保雛
豆田地区最後の観光場所というか地酒試飲が目的というか、時間が残り少なってしまったが薫長酒造にも立寄ってみたら、ここにも花飾りが、それと奥には酒造りの資料館があったがそちらも見る時間は無くて、入口すぐの販売所で見学後に試飲をというのを真っ先に飲ませてくれと。新酒のしぼりたて生原酒とにごり酒を飲み比べてみたが、どちらもいい酒だがアルコール度18%の生よりも20%のにごりの方が僕の好み。日田の酒は全国区とはなっていないようだが侮れませんな。
薫長酒造内
試飲
薫長酒造の雛飾り
途中の町屋で見た階段箪笥利用のミニ雛飾り
街には日田祇園というお祭りのポスターがあって立派な山鉾の写真が、九州で一番早く開催の祇園まつりだそうで町が一番賑わう時らしい、この時を組み入れたツアーはありませんかね。
2012年の時のポスター
このあとはまっすぐにバスに戻って、日田のひままつり見物はアッという間に終わってしまった。