ちょいボケじじいの旅・酒・エーとそれとね

毎晩酒を愛で古き日本と温泉を愛す、少し物忘れも出始めた爺が、旅日記やコレクション自慢などと、時々の興味のままを綴る。

パワースポット戸隠を巡り、藤村ゆかりの田沢温泉の宿に 第一日目その2

2010-11-26 17:45:17 | 旅日記

 2時半を過ぎてもう本日の宿がある田沢温泉に向わないといけないと、長野ICまではまた同じ道を戻り、高速はナビが教える更埴ジャンクションから中央道側に向う長野道で姨捨を抜けてすぐの麻績ICで降りて一般道となる。まもなく長野県の中ではマイナーな地名の筑北村となって石仏で有名な修那羅峠を越えればR143に合流して義民の里を名乗る青木村に入り、一気に坂を降りきってから右折して細い道をまた登れば、すぐに山あい突端にある温泉地に到着する。

 ここの共同浴場の有乳湯は気に入っていて、軽井沢滞在中は時々訪れるからこのあたりはよく見知っている。旅館は数軒でどこも木造の鄙びた建物の中で、群を抜いて大きい木造3階建てが予約したますやだ。かの島崎藤村が無名時代にこちらに逗留して、千曲川スケッチの構想を練ったということで知られており、その藤村の間というのは今も残っていて宿泊できるということだ。ということは、建物は明治初期には建てられていたはずで、登録有形文化財になっている。その当時にこれだけの建物を建てたということは、さぞかし集客力がある温泉地だったと思われるのだが、今はひっそりとした取り残された小さな温泉地となってしまっている。

                   ますや玄関

 しかし最近はここの卓球室をモチーフにした卓球温泉という映画でも話題になった。そんな古めかしい旅館は女房の好みで、一度泊まってみようということになったわけだ。木造3階建ての本館(冒頭写真は本館を正面から)、別館、宴会棟など4棟と別に蔵までがあって、宿泊料金は別館や藤村の間に比べて本館は安い設定となっている。本館と言うからには一番最初の建物だろうから設備的に難があって安いのだろうと、そういうのは我々夫婦は気にしないからその安い部屋で食事はややアップしたものをネット予約してみた。
 4時半に到着して玄関に入ったが出迎える人はいない、やや女房はまごついて帳場らしきを探したらチンと鳴る鈴があって、鳴らしたらすぐに奥からオバチャンが出てきて、まずは風呂の場所と朝の食事場所を教えてもらい、部屋に案内されることになる。その1階には昔のものだからやや狭いものの、ソファーがあるロビー風の場所があって、時代物の籠や軽井沢彫りらしい椅子などが雑然と置かれていて、ここの居心地はあまりよさそうじゃないね。
          玄関に続くロビー風

 本館の客室は今はどうやら2階だけ使っているようで、畳二間となった客室は既に手前には布団が敷いてあり、奥の間が床の間がある座敷となっている。暖房はガスストーブが1台あるだけで、客が来てから点火して夜寝るときには切って下さいという。実にレトロな建物だから、昔の母の実家みたいに外周部は全て廊下というか縁側というか3尺ばかりの板張りが巡らされていて、中の仕切りは入口側の襖以外は障子だ。そして外側は木製建具のガラス戸となっているのだが、約150年と年季が入り過ぎているから建付けが悪くなっていて隙間風が入ってくる。これは真冬に泊まるのはチト厳しいなと。よくよく廊下部分の板敷を見たら内側に沈んでいて、居室部分の方が荷重が大きいから廊下の内側全体がやや沈下しているのだ。やはりこういう大型木造建築は400年に一回は大修理、100年に一回は何らかの修理が必要と言うが、温泉地などはやや無理な場所に建てられるからこれはその中間ぐらい以上の修理が必要でしょうな。しかしこの規模全体を一気にジャッキアップして直さないといけないだろうから、よっぽど文化財としての補助金が付かないと難しいよね。床の間の掛軸も破れが目立つから経営も大変そうだし。

    

   2F廊下、最奥に洗面とトイレ              二間続きの客室
 温泉は昔からの本館地下にある小さな浴槽二つは家族風呂になっていて、新しいもっと大き目の風呂は連絡通路を別館、宴会棟とズンズンと歩いていった一番端っこにある。その途中の大広間の下の階に卓球室があるらしく、この日はキャアキャア、ワイワイと若者が大騒ぎしているのが聞こえてくるが、客室からは離れているから迷惑にはならない。風呂上りに覗いてみたら20人ばかりの若者の男女が興じていて、映画を見ての団体客が入っていたんだね。

    

    映画ポスターがあった                  卓球室には3台も
 温泉に入ったらかなり温めの湯でうっすらと湯の華が浮かぶ、注がれている湯に触ったらこれはやや温度が高くて加熱しているようだが、湯量が間欠的に変化しているしコップも置いているから源泉から直接ということが分かる。露天もあって、この日はやや気温が低かったものの、温めの湯でも周りが囲われて風がないから普通に入れる。柔らかい温る湯にジックリが田沢温泉の流儀とか、長く浸かっていれば顔が汗ばんでくるから温泉の効能は確かだ。じっと浸かっていて気が付いたのが共同湯の有乳湯みたいに細かい泡が肌に付いてこないこと、ハテ!この湯は加温しているからなのかと、すぐ隣にあるのにちょっと不思議、それとあちらは湯の華は見かけなかったしね。有乳湯には宿で入浴券を買えば半額の100円というから、そちらには翌朝に入ってみようと。
 食事は基本のものからちょっとだけランクアップしたもので、地元の食材を使った田舎料理だからプロの料理人を置いていないとすぐ分かる、どうやら風呂帰りに見かけた若主人が取り仕切っているらしい。この時期はやはりキノコ料理の先付けがいくつか、それと刺身は信州サーモンと鯉は洗いじゃなくて刺身という。この鯉はコリコリシコシコで格別、肉料理は豚肉を温泉の湯で蒸すというもの、茶碗蒸しは素人の味ではあったが天ぷらは薄切のゴボウとはんぺんが面白い味、最後には松茸ご飯と松茸風味のお吸い物、中でも旨いと言わしめたのが鯉のアラと内臓や卵を旨煮にしたもので、これはコクのある味わいで上手に材料を使い切っているね。松茸は宿で山を持っているそうだから、今年は豊作で出てきたんだろうね。酒は上田の和田龍という銘柄の吟醸生酒、これは相当に辛口でもう少しふくよかな方が僕の好みだな。

  

    コウタケ、鯉、芋がら、燻りがっことチーズ             キノコが2種類

           

           信州サーモンは長野のブランド、鯉の刺身は洗いより美味しい

      

    この鯉のアラと肝などの旨煮が秀逸           茶碗蒸しはダメ

              豚肉温泉蒸し

           

            天ぷらは手前のゴボウと右奥のはんぺんが面白い味で          

           

                  松茸ご飯に松茸のお吸い物、野沢菜漬

 総じていい器を使っているし、座卓など立派な漆器で老舗旅館だからの風格はこういうところでは感じられる。とにかく木造建物としては規模が大きいし、レトロな見所が多いからちょっとした探検気分を味わえる、一見の価値はあるな。
 あとで知ったのだがこの旅館でトイレ付の部屋は藤村の間だけだそうで、本館のトイレと洗面は廊下の一番端っこにあるだけ。トイレはウォシュレットになっているのだが、洗面はブリキの昔のままで貧相だしオンボロになっているから、寒々としてくる時期にはちょっとねものだ。これも改善の必要があると思うのだが、若者の団体が泊まっているらしい別館はどうなんだろうね。それと寝具も時代物で掛け布団は毛布と綿布団、夜は暖房を切るとなると暖かい羽毛布団にしてもらいたいな。

     

     階段の上が藤村の間         蔵の右手3階部分が藤村の間で眺めが良さそう         
 この時期はもうかなり冷え込むから、さすがに寝る前にもう一回温泉に浸かってからおやすみなさいということになった。


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