小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

重層的ハラスメントの所在はいかに(2)

2018年04月23日 | エッセイ・コラム

 

「テレ朝記者セクハラ事件」における重層的なハラスメントの所在を、浅学菲才の素人考えで申しわけないが、想像力を働かせて読み解いてみたい。

各層別にその特徴を記すが、ほとんどが個人的見解に基づくものだと断っておく。また、ブログ全体についてもいえるが、自己学習・自己啓発を主たる目的として書き記している。

 第1層 性差・容貌・貧富など見た目にもとづく単純なハラスメント(表層:誰にも認知でき、誰もが無意識に侵してしまう可能性がある。いわゆるポジショントークが拡張してハラスメントに至る場合があるので要注意)

財務省事務次官によるセクハラ問題でいえば 「胸さわっていい?」「縛っていい?」などの発言がそれに当たる。用例は省くが、身体性、容貌などについて侮蔑的な表現も含まれる。つまり、全体の文脈いかんに関わらず、言葉、慣用句そのものによる端的な表現が問題とされる。

「能なし」「馬鹿」などの言葉はパワハラやモラハラに分類されるのだろうが、そういった定義づけ・分類はキリがないと思うのだが、微妙な差異があるからこそハラスメントは重層的に発生し、反復される。だから、その錯綜するハラスメントの根絶はたいへん難しい。

ハラスメント被害者は、身近な人、関係者、専門家に相談するのが最適だ。ただし、子どもの「いじめ」がそうだが、大人といえども気軽に相談できる環境は整っていない。

孤独で八方ふさがりの被害者はまず逃げる、関係を断ち切る。将来にあって関係性が続くなら、自らが「加害者との関係性」の改善・修復に励む、ときに諦め・断裂まで視野に入れて対策を講じるしかない。それが不可能な場合、最終的に法的手段に訴える。

また、ハラスメントではない用語・表現であっても、その言葉の用法がTPOにふさわしくない場合、意味の取り違いや誤解を招きやすく、結果的に深刻なハラスメントになるケースもある。

コミュニケーションにおける齟齬、乖離などは、男女双方向(LGBT含む)のみならず多世代間においても成立するので、特にセクシュアリティに関する発言はデタッチメント(意識的にふれないこと)するのが賢明とされる。


第2層 主従・優位劣位・序列に基づくパワー・ハラスメント(第1層より深化しているが、表層に出る場合もある。また、以下の各層も数字が増えるからといって、そのハラスメントの深度をあらわすものではない。)

「テレ朝記者セクハラ事件」に引きつけていえば、ある種の主従関係におけるハラスメントだといえる。財務省が「主」で、テレ朝が「従」である。この関係は暫定的であり、いわゆるポジショントークの発展型である。

(欧米では人権思想、正義と平等意識が徹底されている。取材する、される側に格差・力関係の偏向はないとされる。建前としてだが・・。)

(一般者や容疑者を取材する場合では、その主客が逆転して、対象を上から目線あるいは追及型の取材になるケースがある。客観的でフラットな視線による取材、そのための確たるディレクションが必要だ)

「報道の自由」が憲法で保障されているにもかかわらず、その主従関係の優位・劣位は、見えない壁のように実在し、取材の困難さやハラスメントが発生する下地がある。また、「従」である民放各社が競争関係にあり、それぞれ独自の戦略があるためか、取材対象者への歪んだアプローチが現出する。各社を統合する倫理規定・報道規制、あるいは暗黙の民主的なルールなどは無きにひとしい。

これらは「アクセス・ジャーナリズム」といい、リーク依存型の取材に陥りやすい。したがって、有能で美形の女性記者がいた場合、男性の記者よりも活躍する機会が増える。仮定の話だが、セクハラをうまく躱すスキルを身につければ、記者として怖いものなしの評価が得られる。(但し、以上を想像して書いたが、このことの論理的帰結が正しいのか、我ながら首肯できない)


第3層 これは無意識の、言語構造的なハラスメントのこと。モラル・ハラスメントに近いか。(この源泉には、職業、宗教、階級、地位、貧富などの格差・差異が伏流している)。もっと具体的にいえば、社会階層・身分階級は事実上実在することを認めざるを得ないだろう。欧米の先進諸国をみれば明らかだ。

財務省事務次官など霞が関官僚の超エリートは、東大法卒がほとんどである(財務省でも法学部卒が多し。つまり法律と言葉の整合性を瞬時に判断でき、説明できる能力が尊重されるのだ。先の佐川何某は経済学部卒なので傍流だとされる)。

霞が関官僚のすべてが、いわゆる「東大話法」なる優れた使い手かどうか知らない。しかし、テレビのクイズ番組で東大生を見ると、言語能力の優位性は群を抜いている。

(東大話法の類の詭弁から自己防衛をはかるには、無反応・無視・沈黙があるが、関係のない人にそれをやると逆ハラスメントになるのでややこしい)。

恐るべき東大話法、その20の用例は、東大教授・安冨歩によって発見、紹介された。

(参考までに⇒「東大話法と京大話法」https://blog.goo.ne.jp/koyorin55/e/783e3401b761de516c28608fb68b607e

今回のセクハラ発言の場合には以下の4例が該当すると思われる。

 ○自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。

都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。

自分の立場に沿って、都合のよい話を集める。

都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。

以上の4件について、福田何某は東大話法を無意識に使っていて、今回のセクハラではものの見事に証明することになった。彼は一貫して「(週刊誌に掲載された文言は)録音された一部しか明らかになっていない。全体をみてほしい」と主張している。

その内実は、彼にとって都合のわるい発言は、なかったもの・関係ないものとして徹底的に排除したい意図が見え見えなのだ。さらに、そのことがさも正当かのように理路整然と語り、記者たちに斟酌せよと訴える。(録音テープの音声が公表された後でも!)

正直言って、筆者は週刊誌を読んでいないので、掲載された二人のやりとりをここで再現することはできない。しかし、夜おそくの酒席で女性記者が財務省のトップ官僚に対して独占的な取材を行った。このシチュエーションの事実は、森本・加計問題浮上後に頻繁にあったことは想像に難くないし、信ぴょう性は充分にある。

(以上いずれの場合も、両者の関係性は闇のなかで、憶測で書いている。最終的に加害者、被害者となったことは事実。そのことが重く、峻厳なのだ)。

モリカケ問題について、当時賑わせていた佐川前長官の証言などについて、財務省内部の話を事務次官から話がきけるのは、ある意味特権的だ。テレ朝女性記者は十分にそれを承知し、特ダネを得ることは最上の目的であり至上の悦びのはず(だが、実際には、社命だから仕方なく厭々取材していたか?)。

一方、福田何某は美人記者のそうした心理を読みつつ、その彼女を相手にして日頃の憂さを晴らすこと。それが主なる目的だったか? この会合はそもそも、どちらのイニシャチブによって成立したか、もはや問題外だ。

この会合の支払い、諸経費の費用の支払いは、主従関係から明白であるからといって、テレ朝側がすべて支払ったとは断定できない。なぜなら、麻生大臣はじめ財務省側は法廷で争う意向を示し、へんに強気なのが不思議なこと極まりない。

接待・饗応などの服務倫理規定はクリアしているのか・・。福田何某は取材される際の場所、飲食等の経費を自腹を切って、テレ朝記者を招き入れたのか。だからこそ気持ちよく酒に酔って、セクハラなる言葉を吐くほど意識も飛んでしまった、というのか。

取材と称した会合は何回もあったらしいが、話の核心に触れるような場合には、セクハラ的な発言をすることで話の腰を折る。婉曲に避けたい質問には、ある種の符号のように下卑た話題を持ち出したのか・・。

東大話法を使う福田何某は、セックスへの潜在欲求を隠すことができず、セクハラすると冷静さを失うタイプだとみた。複数のことを同時に論理的に考える能力が、いやらしい妄想で座礁してしまうのだろう。

つまり福田前事務次官は、全体の文脈とは明らかに異なる「関係のない話でお茶を濁」したつもりになっていた。しかし、お茶を濁す話がセクハラ的発言だったことはほぼ無意識であり、全体の話の文脈では、財務省の現状と事務次官としての最適な役割とトークが中心だった、と彼自身は記憶している。だから、録音されたセクハラ用語の一部分だけをピックアップされても意味がないと強弁したかったのであろう。

(以下想像の範囲をでない:最初はセクハラ的な発言は慎んでいたかもしれない。ところがある時、その女性記者があまりにも執拗に絡んでくるので、取材拒否する意味で女性が嫌がる何かの単語を言った・・。彼女は一瞬驚くが、取材を継続したいがために一旦その話をうけて返した。その応答がだんだんエスカレートもしくは常態化し、セクハラ発言の過激化に歯止めがきかなくなった可能性大か)。

東大話法の優れた使い手は、同時に3つ以上の事柄を思考し、言葉を操ることは朝飯前と言われている。(各委員会での答弁、部下への命令・伝達事項、目の前の女性記者へのポジション的な最適な返答、さらに当日の相場を勘案しての明日の私的資産運用の算段etc.、事務次官ならごく普通に脳内で同時処理していたであろう)。

しかし、そんな高度な能力も、頭の中はエロス的妄想に支配され、鋭い質問を忌避するときにはセクハラ用語で撃退できると思い込んだのか・・。

(録音された言葉の声紋鑑定というのは、法廷の場で有力な証拠となりえるのか、筆者は知らない。福田何某はじめ財務省側はいやに裁判闘争にこだわっていたが、その根拠はなんだろうか。声紋鑑定がクロでも、勝訴できる別の根拠があるのかしらん)

 

さて、女性記者はこの期に及んで上司に相談したであろうし、今後の取材について社内的方針を打ち立てたはずである(いや、現状維持で、打開策は先延ばしだったかな・・)。

福田何某はテレ朝の意向など関係ない、その女性記者を一存で指名し、深夜にでも電話すれば指定場所に来るように命令したはずだ。それが1年間半も続き、女性記者はもう相手の露骨なハラスメントに忍耐の限界にきた。取材記者としての職業的使命感もリミットに達した。一個人の女性として自分を見直し、今までのセクハラ、パワハラ等の重層的な圧力から逃れるために、やむを得ず新潮社にこれまでの経緯を話すことになったのであろう。

(再三、繰りかえすが女性記者に関する言及は憶測の域をでない。でも、書かずにはいられないのだ、悪しからず。反論・異論はコメントでお願いしたい)

 

第4層 メディア・ジャーナリズム業界内における、特有のハラスメント・・。

 詳しく知らないし、専門外なので省略する。

テレビ業界は女子アナを頂点として、美形の度合いが序列ランクされたり社風に適合するかなど、就活から配属までが管理職・採用担当者によって決定されると、個人的に関係者から聞いたことがある。

テレビ局によっては、アナウンサー試験においても何次目においては水着審査、あるいは更衣室にける彼女たちの会話を録音し、その性格、態度、人間関係力、コミュニケーション能力などを審査する。これはもう20年以上前のことだが、以上のような職場環境・社風が温存されているとしたら、女性たちを取巻くマスコミ業界特有のハラスメント構造はいまだに解消されていない、と筆者は見なしている。

第5層 潜在的ハラスメント、一歩手前のハラスメントなど実害はないが、人格、尊厳へのハラスメントについて。

これがいちばん厄介で、粘着タイプのハラスメントだと思う。研究者でもない筆者が、言語化することはとても無理だ。端的な用例として、「結婚しないの」とか「子どもまだ?」などがそれだ。これらの言葉は実害というより、人によっては心が傷むのだ。こういうソフト・ハラスメントは、ボデイブローにように後から効いて来、セクハラやパワハラが重層的に絡んだりすると、心の傷は深まりその解消と回復に多くの時間を費やすといわれる。

能力の高い学者の卵がいる大学研究施設、それこそ東大卒キャリア官僚がひしめく霞が関、一流トップ企業などには、以上書いてきたハラスメントとは次元の違う、常人にはうかがうことの知れない未知のサイコ・ハラスメントもあるかもしれない。

 

さて、福田何某は自分は「シロ」であるといいつつ、役職を辞任した(退職金5300万円)。その理由は「業務に支障を呈しているから」というのが主たる理由だ。組織内のトップに君臨していたに関わらず、業務に滞りがでる。たぶん女性職員のネグレクトがあり、その実質パワーが事務次官の業務を停滞させたからだと思われる。共同新聞のニュース・アーカイブには、女性幹部職員のなかで認知され、省内の女性たちに浸透されているとの風聞もあった。

兆候があるのに是正されないのは、霞が関のモラルハザードが旧態依然のままということだろう。厚生省の「ハラスメント指針」をみれば、実体を伴わないお題目だということがわかる。

過去にはノーパンしゃぶしゃぶ事件など、国家予算を牛耳る旧大蔵省時代からの男性性中心の組織風土が臭ってくる。国家の大黒柱としての威信、その矜持が歪んだものとして、女性軽視のハラスメント体質を形成してきたのではないかと思われる。

 

女性へのセクシャルハラスメントの被害や状況などの記事はあまり読んでいない。「はあちゅうさん」の事件はネットで読んだが、加害者の男への侮蔑で頭がいっぱいになった。被害をうけた女性に対して自分なら何ができるか。ケアの方法さえ無知で、途方にくれるしかない。過去を思い起こして、あのとき彼の行為はハラスメントだった。それを私たちは黙認していた。今はそんな状況に出くわしたら、お互いに注意し合いハラスメント手前でストップをかけたい。身近なところから、自分自身を含めて、ハラスメントをなくすように心を砕くしかないのだ。 

筆者のような素人にこんなことをまで想像させるまでに至った、今回の財務省事務次官セクハラ問題。彼を頂点として、官僚たちの人間的劣化はそうとう進んでいるのだろうか。それとも、安倍首相に一本釣りされた目端のきく有能エリートごく一部、彼らだけの腐敗度が目立っているのだろうか。

この稿、あと少し続く。


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