小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

オバマが私にもたらしたもの

2016年06月03日 | 国際・政治

 

 

オバマ大統領が広島を訪問したことは、私だけでなく多くの人々にいろいろな感慨を抱かせたのではなかろうか。

核廃絶を謳いノーベル平和賞をもらったオバマの、実質的な大統領任期は今年までだろうから、この度の広島訪問は彼にとって、「有終の美」の仕事として臨んだことと思う。

平和記念公園での演説は、就任演説のときの静かなパッションを彷彿とさせたし、練りに練られた卓越した表現との評価が高い。残念ながら、わが東京新聞に掲載された翻訳は、丁寧な逐語訳とはいえ巧みな日本語とは言い難い。原文がかもし出している「パトスと抑制」の絶妙な言表を、充分に映しきれてない感じがする(もちろん私感)。

20160527オバマ大統領演説広島にて、全部日本語字幕付き

(参考まで。19分の演説。字幕付き)

 

精確な彼の言表を確かめたくてネットを検索していたら、オバマに関する心外なニュースを発見した。日本のメディアで報道されていたはずだから、私たちだけが見逃していたのかもしれない。

それは、2年前の2014年6月、フランスで行われた第2次世界大戦の「ノルマンジー上陸作戦」の70周年記念式典での、オバマ大統領の言動及び表情についてである。米英仏ロシアなど20か国以上の大統領、首相が参加。連合国の敵国、ナチスが支配したドイツからはメルケル首相、英国のエリザベス女王らも参列。作戦に関わった退役軍人や一般人ら、総勢9000人が参集した歴史的な戦勝式典であり、世界平和に向けてのレジェンドを祈念したセレモニーだった。

式典の最後に、会場の大スクリーンに戦争の歴史を物語る映像が映し出された。そして締めくくりの映像は、原爆投下した直後、閃光がさく裂しキノコ雲になっていく、あの広島上空のモノクロの実写である。このとき、会場から大きな拍手が自然に沸き起こった。(ドイツのメルケル首相は拍手せず、ロシアのプーチン首相は胸の前で十字架を切って、哀悼の意を表しているかのように見えた)

多くの参列者と同じくオバマ大統領も無表情に拍手していたと、日本人特派員は伝えた。(ガムを噛みながらという補足記事も別にあった)

それが下記の映像。お暇な方は確かめていただきたい(約4分、他のネット放送では、もっと詳細な30分の映像があるらしい)。

 2014,6,13ノルマンディー上陸作戦記念式典

私はこれにより、オバマの広島演説を欺瞞だとか、仮面を被った人倫に悖(もと)るアメリカ大統領、と批難するつもりはない。この短い映像は当然、編集されている可能性もあり、事実を精確に伝えているか保証の限りでない。ただ私が注目し、書きたいことの真意は、実はオバマが拍手したことではないのだ。

(オバマの拍手は、場の雰囲気の心理的な共振と同調であり、彼のアイデンティティにも関わることだと私は判断した。付和雷同に近いが、やはり決定的に違う、諦めのような白人たちへの「逆差別」の感情的なあらわれか。それだったら許容できるのだが・・・この分析は、自分の手に余るがいつか試みてみたい。私見だが、オバマは何らかの事情を背負って、アメリカの大統領になったと考えている。WAPSやユダヤ金融資本がうっすらと垣間見え、オバマが後年に手記を書くことを、この極東に生きる老日本人は期待していることを記しておく)


まず、このフランスの式典で原爆の投下のシーンを見た多くの欧米の政府関係者、軍人及び一般参列者がなぜ拍手したのか、という事実について考えたいのだ。

式典に参加した彼らからすれば、広島の原爆さく裂シーンは、戦争終結の間違いないメタファー。そして、世界戦争の終結と、第二次世界大戦の勝利が心情的にオーバーラップし、戦争当事者であった彼らの悲願を達成したシンボルにもなったはずだ。ヨーロッパ戦線で繰り広げられた悲惨な殺戮、民間人への無差別攻撃、都市破壊、そしてユダヤ人のホロコースト。ヒトラーという狂信的独裁者を生みだした歴史的な背景と矛盾。これらを一挙に止揚し、戦争を終結に導くものとしての原爆。最後まで抵抗し続ける、「どうしようもない不思議な日本人」との、不毛な戦いを終わらせたいがための核爆弾だった。その存在意義、重要性は、彼らの合理的精神に徹底的なものとして植えつけさせたに違いない。

核抑止力という考え方は、こうした認識から生まれたと私は考えている。

ヒトラーは自殺し、ドイツが無条件降伏した当時、ヒロヒトはヒトラーと同様の悪魔的存在と見做されていた。これは、一面的かつ表層的な間違った「歴史認識」であると思う。が、欧米一般人の標準的な見解は、自分たちの生命さえ放棄する、不可解な日本人への侮蔑と不信感であった。「ナチズム、ファシズム、ジャパニズム」は、当時の同義語として理解されていた事実として踏まえたい。

単刀直入に書こう。欧米の人たちは、原爆の力によって日本は降伏したものと思い込んでいる。(過去形にしたいところだ)それも1発ではなく2発も必要だったのだ、と。この歴史的エビデンスを私たちは直視し、真率に受け止めなければならない。

もし、これをお読みいただいている方がいるなら、思考実験をしてもらいたい。太平洋戦争の終結は、いつの時点で降伏すべきだったか? あなたが決定権者ならどう考えますか。



バラクよ、聴いたことがあるよな。あなたの身近な若者たちの叫びだ。

Alabama Shakes - Future People (Official Video - Live from Capitol Studio A)

たぶん、トランプは消せ!というだろうな。

 


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