小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

プーチン、純心からの邪悪

2023年05月07日 | 国際・政治

プーチンの生誕は1952年、戦後の生まれである。両親は共に40歳を越えていて、プーチンには二人の兄がいたが、どちらも夭逝している。

父親は独ソ戦で重傷を負い、戦後は年金で生活していたかと思う。両親にとってプーチンは、かけがえのない最後の宝だったから大切に育てられた。言い換えれば、甘やかされて育てられ、プーチンはサンクトペテルブルクでは、ヤンチャな少年時代を過ごしたことになっている。

それほど刮目されたことはないが、プーチンの祖父は料理人であったことが知られている。レーニンその後スターリンの専属シェフとして。まあ、クレムリンではなく、別荘(ダーチャ※追記)ではあったが…。

▼スターリンの別荘。下記の追記2 を参照されたし

プーチンは祖父を尊敬していたし、話しを聞くことは好きだった。それがどんな内容であったか、プーチンの伝記の類いは幾つか読んだが、具体的には伝わってない。しかし、権力者スターリンの人柄や、周辺の人々の噂話なども含まれていたと思われる。

いや、稀代の専制君主は、専属の料理人とはいえ、そんな権力者の秘密の裏話を軽々に語らないかな…分からんな。

ここからは、小生の与太話として受け止めていただきたい。

ともあれ、祖父は孫に自身の経験をまじえて、男としていかに生きるべきか語ったはずだ。スターリンがどんな権力者だったか、何が好きだったか、仁義に篤いか、それとも極悪非道か、それらしきことをとくとくと語ったのではないか…。

スターリンは、政敵、スパイ、反体制者、捕虜、犯罪者、素行の悪い人民など多くの人々を粛清、もしくはシベリアへ流刑させた。その根拠はいうまでもなく「情報・インテリジェンス・密告」である。政府機関としてはKGBがあるが、周辺には通報者もいる。プーチンが働くダーチャにも、そんな人間たちが出入りしていたのであろう。

閑話休題。

先日、BSドキュメントでゴルバチョフとレーガンの軍縮交渉がテーマの番組を視聴した。当時、ソ連は軍事費拡大で国家が傾きかけ、ゴルバチョフはなんとしても、軍縮と安全保障の両立をめざしていた。

一方、仮想敵国がいないと国がまとまらないアメリカ。超保守になった元俳優レーガン大統領は、宇宙から核ミサイルを打ち落とすという、未来型核戦略SDI計画をぶち上げていた。グレート・アメリカだ。

思惑が正反対ならば、まとまるものもまとまらない。ゴルバチョフはそこで奇策をうって出る。軍事交渉の場に夫人同伴という提案だ。レーガンもOKした。ナンシー夫人も積極的だったかのような番組の演出もあったかな。そして、交渉のあとで両国交代で「晩餐会」が主催されることになったのである。

「晩餐会」で軍事交渉の潮目が変わった。美味しいものを食べながら、人は剣呑な話はしない。胃袋は正直、料理を褒め、素材や造り手を礼賛する。皆の心が和み、相手の話を聞き、ふと本音を洩らすこともある。そう、すなわち肝胆相照らすことになった。

一応、まとめておこう。国が傾いていたゴルバチョフは必死だった。潮目が変わったとはいえ、交渉は行き詰まることもあった。ゴルバチョフはそこで夫人同伴でアメリカに乗り込んだ。ワシントンの沿道で多くの人々を見た二人は、突然クルマから降り、アメリカ市民と交流し始めた。ゴルバチョフは、ゴルビーとしてアメリカ人の人気を集めたのである。冷戦溶解、軍事費削減。  閑話休題終わり。

以上、大雑把な見方であるが、ゴルバチョフは前向きで、今どきのことばを使えば陽キャに分類出来る(外交的、自由志向、ペレストロイカ、改革派…)。では、プーチンはどうか。どちらかと言えば、陰キャでしょうな(保守的、伝統志向、秘密主義、専制的…)。

先に、サンクトペテルブルクでの少年時代、プーチンはヤンチャな不良であったと書いたが、証言や傍証などはなし。

「プーチン 少年時代」で、ぜひとも検索してほしい。小生の記事より詳しいものが見つかる。また、彼の思春期のころの写真がけっこうある。その頃のなんと繊細な顔立ち、か細き体躯。大男の多いロシアの地で、プーチン少年は、ガチにタイマンを張ったのであろうか。

祖父はもちろん父親も、プーチンを権力側の人間として成長してほしかったと仮にしておく。表舞台で活躍するより、裏方でもいいから末永く生きてほしいと願った。ソ連の現実を深く知る二人の男は、このか弱き、純心な息子或いは孫に対して、こう提案した。

「KGBはお前に向いている」。

15,6歳のころ、プーチンは単身でサンクトペテルブルクにあるKGBの本部に乗り込んだ。この辺のエピソードは以前に書いたので割愛する。ポイントは柔道に本腰を入れたこと。KGBのアドバイスを聞き入れ、大学の法学部に入るために猛勉強を始めた。要は日陰者であっても、権力側の超エリートへの途を歩み始めたのだ。

ベルリンの壁の崩壊の時、プーチンはまさに東ドイツのKGB本部に勤務していた。その後は、サンクトペテルブルクに戻り縁故のある知事の補佐役となった。手元に何もないので覚束ないが、これが転回点になったのか。政治的手腕を発揮するようになる。

一方、ソ連崩壊は加速し、帰属している多民族国家が離反するようになる。その急先鋒がイスラムのチェチェン共和国だが、そのテロ組織が民間マンションを爆発させ、多くの犠牲者を出した事件がおきる。実はこれ、プーチンの画策とされ、詳細な分析、検証を重ねた本から暴露本まで色々ある。最終的には、国民が保守的にまとまり、権力機関が質実剛健ならば、安全、安心であることを植えつける狙いであろう。

当時、混乱に乗じて、旧ソ連のインフラや資産を格安で購入し、私腹を肥やす人々がいた。初期のオルガルヒである、そのなかのリベラルで反体制の人間は、国外追放や暗殺されたが、これもプーチンの手がかかっている。「邪悪なプーチン」の誕生である。その彼に目を付け、保身のために側近に迎えた、それがエリツィンである。

プーチンはそれからモンスター化していくが、少々筆致が偏向しているかんじなので、筆を置くことにしよう。(マルチタスクができないスマホは疲れる)

 

追記/先日、クレムリンのドームの上でドローンが爆発した映像が流れた。映画の爆発シーンのような、大袈裟な火薬の燃焼。声を出して笑ってしまった。軍事目的ではない、単なるショータイムの爆破だ。

翌日、民放BSの2局が特集。それぞれに元自衛隊参謀の専門家が分析、解説していたが、狙いは、火を見るからに明らかだ(笑)、と。まあ、メディア側はこのネタで3,4日は視聴率を稼げる。だから、幾つかの選択肢をだして、これにも解説させて、話を複雑にさせる。狡いったらありゃしない。

かと思えば、昨日ワグネルのプリコジンが多くの傭兵を従えて、バフムートから出ていくとわめいていた。ショイグらが弾薬を回さない、もうやってられない! ロシア軍は、なんだかグダグダになってそうな。

三回ほどムショに入ったプリコジンは、何処でどうプーチンに見初められたのか。真相は分からないが、プリコジンにケータリング会社をやらした。そう、料理を提供する企業だ。ナチズムとも縁があるワグナーを会社名にして、料理どころではない、暗殺・特殊工作はじめ邪悪な軍事全般を提供するようになった。なんか映画になりそうで嫌だな。

もう一つ言いたいこと。メディアを痛烈に批判する識者は多くなった。そんな御仁が持論を展開するとき、外国の二流メディアから都合のいい記事を引用するのは、如何なものか。同じ穴の狢でしょうが。

 

※追記2:5月22日、NHKのTV番組『映像の世紀・バタフライ・イフェクト』において、『独ソ戦』が放送された。そのなかでスターリンの別荘(ダーチャ)が、ほんの一瞬だが紹介された(ダーチャといっても、一般のものとは違う)。これはと思い写メしたので、ここに転載することにした。なお、独ソ戦の死者数において、ドイツ、ソ連の合計死者数は3000万人という数字が語られた。本ブログでは、たぶんソ連、ドイツの死者数が正確でない数字で表記されていると思われる、たぶん。したがって、この追記によって統一をはかりたい。(2023、5月23日・記)

また、独ソ戦について、NHKの定義では「軍事的な合理性を失った絶滅戦争」であるとして、それは独裁者ヒトラーとスターリンが互いに「憎悪と復讐」を駆り立てたことにより多大な損失、犠牲者を生んだとした。まったくその通りである。

 

 


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2 コメント

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メディア論について (rakitarou)
2023-05-09 07:16:42
小寄道さん、ブログを続ける体力、気力維持頑張っておられる様で安心しました。

メディア論について、仰る通り。私も自分のブログで種々のマイナーなメディア取り上げて自説展開してますが、取捨選択はやはり自分の考えに沿ったものとなります。
一流、二流の定義は資本力なのか20世紀からの評判(当時は本当に自由でよかったかも)か難しいですが、やはり一次情報をいかに取捨選択して伝えるかの編集方針を明確に示して対論も明記した上で論理展開がなされているかだと思います。その意味では昔一流と言われたメディアも衰退していると私は思います。
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Unknown (小寄道)
2023-05-10 02:02:34
コメントありがとうございます。
Rakitarou様からいただき望外の悦び。また、今日は昨日から院内が面会解禁となり、小生も午後いっぱい、何人かの来訪者との面談で、自身のブログチェックをいたしませんでした。
それゆえ、コメントの来着にまったく気づきませんでした。大変失礼しました。お詫び申しあげます。

さて、メディアが一流か二流かは、もちろん主観的なものです。社歴、日刊、記者の陣容など、もちろん客観性、中立性などの内容が一番ですが…。
昨今、SNS全盛で、そちらに傾きがちで、裏付けのあるしっかりした記事は少ないですね。
だから、一流の定義も怪しいし、その意味では小生の二流の使い方は、なんか筆の勢いだったかもしれません。
英字新聞だったら、困ったらロイターあたり、見にいきます。特派員が世界にいて、一つのテーマでワールドワイドかつ客観的な記事を載せているんじゃないかと…。
いやー、これも主観的でかなり習慣的なもので、恥ずかしい限りです。

最後になりますが、rakitarou様を批判はしてません。ジャーナリズムの現場にいて、それで飯を食べるているフリーの識者。大学にいながら世界のアーカイブ、その最新論文などもチェックしてないような識者、テレビ出演だけを目的に、ただただ扇情的なニュースソースで持論を受けそうな層に垂れ流す、自称評論家などです。
長くなりました。コメントありがとうございました。
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