和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

革心19/小説「新・人間革命」

2015年05月21日 07時32分41秒 | 今日の俳句
【「聖教新聞」 2015年(平成27年) 5月21日(木)より転載】

【革心19】

 中国訪問二日目となる九月十二日、訪中団一行は、宿舎の錦江飯店で、中日友好協会の孫平化秘書長らと共に朝食をとった。
 山本伸一と妻の峯子は、孫平化と円卓を囲んだ。孫の前には、焼いたメザシ、冷や奴、味噌汁などが並んでいた。
 円卓に着いた孫は、驚きの声をあげた。
 「おおっ、これは、メザシですね! そして、冷や奴! 味噌汁ではないですか!」
 峯子が、にこやかに微笑みながら答えた。
 「前回、中国を訪問させていただきました時に、孫先生は、日本に留学されていたお話をされ、メザシや、お豆腐の味が忘れられないと言われていたものですから……」
 伸一が、峯子の話を受けて語り始めた。
 「最初の中国訪問の時から、孫先生には、大変にお世話になってきました。私たちの感謝と御礼の気持ちを、どうやって表せばよいか、妻と話し合いました。
 そして、孫先生が、留学時代の日本での食事を、懐かしがっておられたことを思い出したんです。『では、日本から、メザシや豆腐などを持参して食事を作り、召し上がっていただこう』ということになったんです。
 これは、妻が作りました」
 「お口に合いますかどうか……」
 伸一と峯子は、そもそも、食材を持ち込むことができるのか、豆腐を崩さずに、どう運ぶかなど、真剣に語り合ったのである。
 「どうぞ、冷めないうちに、お召し上がりください」
 峯子に促され、孫は箸を手にした。好々爺そのものの顔で、メガネの奥の目を細め、嬉しそうにメザシを口に運んだ。
 「懐かしい味です。おいしい! 山本先生と奥様の真心が染み渡ります」
 「孫先生に、そこまでお喜びいただき、本当によかったです」
 伸一が、こう言って相好を崩した。
 それは、伸一と峯子の小さな気遣いであったが、そこには“心”があった。この真心の触れ合いこそ、“友好の魂”といえよう。

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