小説「新・人間革命」
【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)2月13日(水)より転載】
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勇将1(2/13)
勇将1
厳寒の空に、微笑む星々が美しかった。
静かに波音が響き、夜の帳が下りた海には、船の明かりが点々と瞬いていた。
一九七八年(昭和五十三年)一月十九日の午後五時過ぎ、山本伸一は、高松駅から車に乗り換え、香川県・庵治町にオープンした四国研修道場に向かった。
研修道場に到着した時には、既に日は沈んでいたが、彼は、海を見下ろす庭に立った。
「いいところだね……」
伸一は、四国総合長の森川一正に言った。
「はい。明るければ、左手に、源平・屋島の戦いの舞台となった屋島も見えます。
また、この辺りは『船隠』と呼ばれ、岬の陰になって見えないことから、平氏がたくさんの船を隠したところだそうです」
「屋島の戦いか。勇将・源義経の勇気と英知が光る戦いだったね。
武士から公卿となって、〝平家〟を名乗り、『平家にあらずんば人にあらず』というほどの権勢を誇った平氏が、最後は滅ぼされてしまう。
当時の人たちの多くは、思いもしなかったことだろう。
まさに、『驕る平家は久しからず』だ。
平氏敗北の根本要因は、民衆の心を忘れた驕りと油断にあったといえるだろう。
権勢を手に入れ、それに慣れてしまうと、わがまま、贅沢になり、民衆の苦しみがわからなくなってしまう。
その時に人心は離れ、基盤が崩れ始めていく。だが、それに気づかない。
実は、そこに、慢心の落とし穴がある」
森川は、真剣な顔で頷きながら言った。
「それは、遠い昔のことではなく、すべてに通じる話だと思います」
「そうなんだよ。リーダーというのは、常に民衆の心を忘れず、民衆のために自分を捧げていかなくてはならない。
そして、常に、一人立って、率先垂範の姿勢を示していくことだ。
源氏が平氏打倒に立ち上がる突破口を開いたのは、平氏への忍従の末に決起した七十代半ばの老武将・源頼政だ」
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研修道場に到着した時には、既に日は沈んでいたが、彼は、海を見下ろす庭に立った。
「いいところだね……」
伸一は、四国総合長の森川一正に言った。
「はい。明るければ、左手に、源平・屋島の戦いの舞台となった屋島も見えます。
また、この辺りは『船隠』と呼ばれ、岬の陰になって見えないことから、平氏がたくさんの船を隠したところだそうです」
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武士から公卿となって、〝平家〟を名乗り、『平家にあらずんば人にあらず』というほどの権勢を誇った平氏が、最後は滅ぼされてしまう。
当時の人たちの多くは、思いもしなかったことだろう。
まさに、『驕る平家は久しからず』だ。
平氏敗北の根本要因は、民衆の心を忘れた驕りと油断にあったといえるだろう。
権勢を手に入れ、それに慣れてしまうと、わがまま、贅沢になり、民衆の苦しみがわからなくなってしまう。
その時に人心は離れ、基盤が崩れ始めていく。だが、それに気づかない。
実は、そこに、慢心の落とし穴がある」
森川は、真剣な顔で頷きながら言った。
「それは、遠い昔のことではなく、すべてに通じる話だと思います」
「そうなんだよ。リーダーというのは、常に民衆の心を忘れず、民衆のために自分を捧げていかなくてはならない。
そして、常に、一人立って、率先垂範の姿勢を示していくことだ。
源氏が平氏打倒に立ち上がる突破口を開いたのは、平氏への忍従の末に決起した七十代半ばの老武将・源頼政だ」
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