和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

奮迅48/小説「新 ・人間革命」

2013年06月29日 07時56分38秒 | 今日の俳句
    小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)6月29日(土)より転載】


奮迅48(6/29)

 戸田城聖は、短時間だが、御書講義の要諦を山本伸一に語った。


 「御書講義にあたっては、深い講義をすることだ。
深い講義というのは、難しい言葉を並べ立て、理屈っぽい講義をすることではない。
むしろ、わかりやすく、聴いた人が“なるほど、そうなのか! 目が覚めるようだ。
それほど重要な意味があったのか。
確信がもてた”と言うような講義だ。


 つまり、受講者が理解を深め、広宣流布の使命に目覚めることができる講義こそが、本当に深い講義といえる。


 一、二年したころには、川越地区を、今の支部並みの組織にするんだよ」


 戸田の指導を胸に、伸一は小雨のなか、勇んで川越地区の講義に出かけていった。


 職場である大東商工のあった市ケ谷から池袋に出て、東武東上線で川越に向かった。
成増駅を過ぎると、ほどなく埼玉県である。


 既に夜の帳が下りた車窓に、田園が広がっているのが、うっすらと見えた。


 伸一は、“大埼玉の天地に出でよ。
数多の地涌の菩薩よ!”と、題目を大地に染み込ませる思いで、盛んに心で唱題し続けていた。


 池袋駅から五十分ほどで川越駅に着いた。
「小江戸」と呼ばれ、城下町として栄えた川越には、落ち着いた風情が漂っていた。
講義会場の家は、徒歩で一、二分のところにあった。


 午後七時前、伸一は元気な声で、「こんばんは!」と言って会場に姿を現した。


 八、九人の受講者が集っていたが、一人が小声で「こんばんは」と応えただけで、皆、怪訝そうな視線を伸一に向けた。
ほとんどの人は、伸一のことを知らなかったし、彼があまりにも若かったために、担当の講師とは思わなかったのである。


 しかし、確信に満ちあふれた、音吐朗々たる題目三唱に、皆、全身からほとばしる気迫を感じ、思わず姿勢を正した。


 「戦場はここだ。戦うのはここだ。
わたしはあくまでここで勝つ気だ!」(注=2面)――劇作家イプセンが戯曲に記した言葉である。

※ 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 イプセン著『民衆の敵』竹山道雄訳、岩波書店=現代表記に改めた。


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