忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」(1982)
何をかいわんや、である。ご存知世界のSAKAMOTOとロック界の大御所清志郎のありえないコラボレーションである。ルージュというテーマだけで、この二人がこんなありえない曲を生み出したということは、今考えると日本のポップス界の奇跡といってもいいかもしれない。(本人たちにとってはどうなのだろう?)
1982年というと、坂本はYMOで油の乗っていた時期だし、清志郎はRCサクセションで名曲「雨上がりの夜空に」などを出したすぐ後で、やはり絶頂だった頃である。
そんな二人が、資生堂の口紅のCMのために、このメイクでジャケット写真どころかPVまで撮り、しかもそのPVの中でキスまでするというハマり様。もはや、言葉は不要であろう。
そんな、周辺事情が真っ先に思い浮かぶこの曲であるが、私は個人的にはマンモス(=veryの意味。いわゆる「のりピー語」である)好きである。何度聴いても気分が高揚してしまう。ドラムで刻まれるリズムとキーボードの響きが絶妙に絡み合っていて、思わずカラダが動き出してしまうのである。それに、清志郎の独特の搾り出すようなヴォーカルがまた、カラダの毛穴から沁み込んでくるようである。
私は、RCのふつうの曲も好きだし、YMOもそこそこ聴いているが、「雨上がりの夜空に」より、「RYDEEN」より、「い・け・な・いルージュマジック」が好きである。
私事であるが、学生時代、私のカラオケの定番はこの曲であった。当然、清志郎ばりに声を絞り出すのだが、これを歌うとしばらくは呼吸困難に陥っていた。それでも、この二人のスーパースターの音楽を自らが体現しているという、なんともいえない幸福感があったのを憶えている。
なかなかCD化されなかった(=本人たちが望まなかったのかもしれない)が、何年か前にRCのベスト版の「ボーナストラック」にこの曲が入っているのを見つけ、すかざず入手した。願わくば、あの歴史的PVをスカパーの音楽番組でゲットできないものか?とアンテナを張っているところである。
「い・け・な・いルージュマジック」。二人のスーパースターの一夜限りの禁断の奇術だったのかもしれない。