「赤鼻のトナカイ」
むかしむかし、ルドルフというなまえのトナカイがいました。
ルドルフは世界でたったいっぴき、
赤い大きな鼻をもつトナカイでした。
ですから、みんなから「赤鼻のルドルフ」とよばれていました。
ルドルフはじぶんの鼻が大きらいでした。
みんながじぶんの鼻を見て、大わらいするからです。
「やーい、赤い鼻、赤い鼻。ルドルフの鼻は、まっかっか!」
こう言われるたび、ルドルフはいつも泣いていました。
「ぼくはみんなとちがう。どうして赤い鼻なんだろう。どうしてみんなとちがうんだろう。こんな鼻、なければいいのに。」
こんなルドルフを、かぞくはみんなかわいそうに思いました。
けれども、どうすることもできなかったのです。
ルドルフのもって生まれた赤い鼻は、ずっと赤い鼻のままなのですから。
ある年のクリスマスイヴのことでした。
サンタクロースはでかける準備をしていました。
あのダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセムの八匹のトナカイをつれて、世界中をまわるたびの準備をしていました。
8匹のトナカイをそりにつないで、
そりの中にオモチャを沢山つみこんで、
もういつでも出発できるようになりました。
ほかのトナカイたちもみんな、
サンタクロースとトナカイたちを見おくろうと集まっていました。
だって、サンタクロースのトナカイは、
トナカイみんなのヒーローなのですから。
どんなトナカイも、いちどはサンタクロースのトナカイになりたい、
と思うくらいです。
しかし、たいへんなことになってしまいました。
夜になるにつれて、とつぜん、霧があたりいちめんに立ちこめてきたのです。
やがて、霧は地球全体を包みこんでしまいました。
「しまった、これではえんとつがどこにあるかわからんぞ!
みんなにプレゼントを渡すことができない!」
サンタクロースが叫ぶと、みんなそわそわしだして、
どうすればいいかわからなくなってしまいました。
そうしてみんなが困っていたとき、
ルドルフはひとり森の中にいました。
みんなの前に行きたくなかったからです。
サンタクロースの見おくりに行くと、赤い鼻を見られて、
みんなにわらわれてしまう、と思ったのです。
家族もみんな行ってしまいました。
そんなとき、見おくりに行ったはずの妹がか帰ってきて、
ルドルフに言いました。
「お兄ちゃん、サンタさんのお見おくりに行こうよ。
もうしゅっぱつしちゃうよ。」
ルドルフは最初は嫌がりましたが、妹が何度もしつこく言うので、
ついにはあきらめて、サンタクロースの見おくりに行くことになりました。
ルドルフはびくびくしながら、
みんなの集まる所へ行きました。
すると、やっぱりみんなはざわざわと騒ぎはじめました。
来るんじゃなかった、とルドルフは泣きそうになりました。
そのとき、サンタクロースもみんながさわいでいるのに気がつきました。
「どうして、みんなさわいでいるんだい?」
と近くのトナカイにたずねました。
「ルドルフ、赤鼻のルドルフが来たんです。」
とトナカイはこたえて、ルドルフのいるほうに鼻をむけました。
サンタクロースはルドルフを見るなり、たいへんびっくりしました。
ルドルフの鼻が赤かったからです。
どんなものよりも明るくて、ぴかぴか光る赤い鼻だったからです。
「これでだいじょうぶだ、ルドルフの鼻があれば、こんなにふかいきりの中でも、えんとつのあるばしょがわかるぞ!」
とサンタクロースは思いました。
サンタクロースはいそいでルドルフのいるところへ行きました。
ルドルフはびっくりしました。
なにせ、目のまえにサンタクロースが来たのですから。
「ルドルフくん、わしたちといっしょに、世界をまわってくれないかな。」
とサンタクロースは言いました。
「でも。」
ルドルフはどうしていいかわかりませんでした。
じぶんにまったく自信がなかったのです。
みんなとちがうじぶんに、いったい何ができるのか、
と思うと、返事ができませんでした。
「でも、ぼくは赤い鼻のトナカイで、みんなとちがいます。」
ルドルフの目は、なみだでいっぱいでした。
「ぼくは赤鼻のトナカイなんです!」
ルドルフは言いました。
けれども、サンタクロースは言いました。
「そうだ、きみは赤鼻のトナカイだ。みんなとはちがう。でも、だからすごいんだ。きみのぴかぴかの赤鼻は、みんなとちがうけれど、くらい夜道をてらすことができる。だから、やくに立つんだよ。」
「ぼくが、やくに立つ?」
とルドルフが聞きました。
「そうだ、やくに立つんだ。さぁ、こっちに来てくれ。」
サンタクロースはルドルフをつれて、そりのところまで行きました。
ルドルフを8匹のトナカイの前、一番前のところにつなぎました。
サンタクロースはそりにのりこみ、さけびました。
「おい、ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン! そら、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセム――そして、ルドルフ! やまをこえて、うみをこえて、ゆくぞ、ゆくぞ、そらゆくぞ!」
サンタクロースと9匹のトナカイは飛びたちました。
「がんばるぞ、ぼくはがんばるぞ!」
とルドルフは思いました。
はりきって、赤い鼻で前をめいっぱい明るくしました。
前が見えるように、煙突が見えるように。
霧だけではなく、雨がふっている町もありました。
雪がふっている町もありました。
みぞれがふっている町もありました。
けれども、ルドルフの鼻のおかげで、どんな煙突も、
どこにあるかはっきりわかりました。
ルドルフのおかげで、その年のクリスマスイブ、
みんなにプレゼントを届けることができたのです。
ルドルフは、この夜から、一番有名なトナカイになりました。
それだけでなく、みんなのいちばん大好きなトナカイになりました。
最初は、はずかしかった大きな赤い鼻だけど、今ではみんなの憧れです。
その年のクリスマスイヴからいままで、
ずっとルドルフは9匹のいちばん前にいます。
そしてたのしく、元気に、まえを明るく照らしているのです。
サンタの追跡~調査
皆さん 素敵なクリスマスでありますように~
むかしむかし、ルドルフというなまえのトナカイがいました。
ルドルフは世界でたったいっぴき、
赤い大きな鼻をもつトナカイでした。
ですから、みんなから「赤鼻のルドルフ」とよばれていました。
ルドルフはじぶんの鼻が大きらいでした。
みんながじぶんの鼻を見て、大わらいするからです。
「やーい、赤い鼻、赤い鼻。ルドルフの鼻は、まっかっか!」
こう言われるたび、ルドルフはいつも泣いていました。
「ぼくはみんなとちがう。どうして赤い鼻なんだろう。どうしてみんなとちがうんだろう。こんな鼻、なければいいのに。」
こんなルドルフを、かぞくはみんなかわいそうに思いました。
けれども、どうすることもできなかったのです。
ルドルフのもって生まれた赤い鼻は、ずっと赤い鼻のままなのですから。
ある年のクリスマスイヴのことでした。
サンタクロースはでかける準備をしていました。
あのダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセムの八匹のトナカイをつれて、世界中をまわるたびの準備をしていました。
8匹のトナカイをそりにつないで、
そりの中にオモチャを沢山つみこんで、
もういつでも出発できるようになりました。
ほかのトナカイたちもみんな、
サンタクロースとトナカイたちを見おくろうと集まっていました。
だって、サンタクロースのトナカイは、
トナカイみんなのヒーローなのですから。
どんなトナカイも、いちどはサンタクロースのトナカイになりたい、
と思うくらいです。
しかし、たいへんなことになってしまいました。
夜になるにつれて、とつぜん、霧があたりいちめんに立ちこめてきたのです。
やがて、霧は地球全体を包みこんでしまいました。
「しまった、これではえんとつがどこにあるかわからんぞ!
みんなにプレゼントを渡すことができない!」
サンタクロースが叫ぶと、みんなそわそわしだして、
どうすればいいかわからなくなってしまいました。
そうしてみんなが困っていたとき、
ルドルフはひとり森の中にいました。
みんなの前に行きたくなかったからです。
サンタクロースの見おくりに行くと、赤い鼻を見られて、
みんなにわらわれてしまう、と思ったのです。
家族もみんな行ってしまいました。
そんなとき、見おくりに行ったはずの妹がか帰ってきて、
ルドルフに言いました。
「お兄ちゃん、サンタさんのお見おくりに行こうよ。
もうしゅっぱつしちゃうよ。」
ルドルフは最初は嫌がりましたが、妹が何度もしつこく言うので、
ついにはあきらめて、サンタクロースの見おくりに行くことになりました。
ルドルフはびくびくしながら、
みんなの集まる所へ行きました。
すると、やっぱりみんなはざわざわと騒ぎはじめました。
来るんじゃなかった、とルドルフは泣きそうになりました。
そのとき、サンタクロースもみんながさわいでいるのに気がつきました。
「どうして、みんなさわいでいるんだい?」
と近くのトナカイにたずねました。
「ルドルフ、赤鼻のルドルフが来たんです。」
とトナカイはこたえて、ルドルフのいるほうに鼻をむけました。
サンタクロースはルドルフを見るなり、たいへんびっくりしました。
ルドルフの鼻が赤かったからです。
どんなものよりも明るくて、ぴかぴか光る赤い鼻だったからです。
「これでだいじょうぶだ、ルドルフの鼻があれば、こんなにふかいきりの中でも、えんとつのあるばしょがわかるぞ!」
とサンタクロースは思いました。
サンタクロースはいそいでルドルフのいるところへ行きました。
ルドルフはびっくりしました。
なにせ、目のまえにサンタクロースが来たのですから。
「ルドルフくん、わしたちといっしょに、世界をまわってくれないかな。」
とサンタクロースは言いました。
「でも。」
ルドルフはどうしていいかわかりませんでした。
じぶんにまったく自信がなかったのです。
みんなとちがうじぶんに、いったい何ができるのか、
と思うと、返事ができませんでした。
「でも、ぼくは赤い鼻のトナカイで、みんなとちがいます。」
ルドルフの目は、なみだでいっぱいでした。
「ぼくは赤鼻のトナカイなんです!」
ルドルフは言いました。
けれども、サンタクロースは言いました。
「そうだ、きみは赤鼻のトナカイだ。みんなとはちがう。でも、だからすごいんだ。きみのぴかぴかの赤鼻は、みんなとちがうけれど、くらい夜道をてらすことができる。だから、やくに立つんだよ。」
「ぼくが、やくに立つ?」
とルドルフが聞きました。
「そうだ、やくに立つんだ。さぁ、こっちに来てくれ。」
サンタクロースはルドルフをつれて、そりのところまで行きました。
ルドルフを8匹のトナカイの前、一番前のところにつなぎました。
サンタクロースはそりにのりこみ、さけびました。
「おい、ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン! そら、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセム――そして、ルドルフ! やまをこえて、うみをこえて、ゆくぞ、ゆくぞ、そらゆくぞ!」
サンタクロースと9匹のトナカイは飛びたちました。
「がんばるぞ、ぼくはがんばるぞ!」
とルドルフは思いました。
はりきって、赤い鼻で前をめいっぱい明るくしました。
前が見えるように、煙突が見えるように。
霧だけではなく、雨がふっている町もありました。
雪がふっている町もありました。
みぞれがふっている町もありました。
けれども、ルドルフの鼻のおかげで、どんな煙突も、
どこにあるかはっきりわかりました。
ルドルフのおかげで、その年のクリスマスイブ、
みんなにプレゼントを届けることができたのです。
ルドルフは、この夜から、一番有名なトナカイになりました。
それだけでなく、みんなのいちばん大好きなトナカイになりました。
最初は、はずかしかった大きな赤い鼻だけど、今ではみんなの憧れです。
その年のクリスマスイヴからいままで、
ずっとルドルフは9匹のいちばん前にいます。
そしてたのしく、元気に、まえを明るく照らしているのです。
サンタの追跡~調査
皆さん 素敵なクリスマスでありますように~