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岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

岡山大空襲展を観る。

2008-06-21 14:46:59 | 戦争を語り継ぐ
1945年6月29日夜、140機のB29が岡山の街を襲った。
岡山市の中心部は文字通り焦土と化し、死者は1700名余りに上った。
その時代の写真や遺留品が駅前で展示されていた。

入り口正面には、天井に届かんばかりの大きな写真が2枚並んで展示されていた。
米軍が、空爆前と空爆後の写真である。
その写真の精密さには驚く。まるでグーグルの写真と同じだ。
米軍には、専門の写真部隊がいたという。
この写真をみれば、空襲前の建物がどのようになったかは一目瞭然である。
私の実家も映っている。2枚とも映っているので戦災には遭っていない。
岡山城は、石垣と櫓ひとつを残して何もなくなった。

米軍は、上空からの動画も残している。様々なコースで写している。
制空権があるのだから、なんでもできる。
もちろん、占領軍が到着してからは地上の映像がカラーで残っている。
長崎や広島のカラー写真と同じだ。
各地で撮影しているのだろう。

米軍のよる無差別空爆の戦略的な意味はなんだろうと考えると、
住民に恐怖心を与え厭戦気分を高めることだろう。
軍事的にはこの時期には意味がなくなっている。

膨大な撮影は、軍事技術研究的なものだろう。
そして、もっとも気になる戦略的意味は、「効率と消費」だ。
まるで現代のテーマのようだが、戦争末期の米軍にはこのことがあった。
まず、太平洋の孤島に大空港を作り、数百機の日本専用の爆撃機を
作った。当然、爆弾も作った。作るだけの生産力がある。
作った爆撃機で業績(戦果)を上げ続ける必要がある。
その対象として、軍事的な意味が皆無な中小都市が選ばれた。
戦争によって、軍民の技術が飛躍的に向上するといわれるが、
米国の資本主義の源泉である「効率と消費」は、第2次世界大戦で
飛躍的に成長したことになる。


かって、小田実がアメリカの公文書館で、大阪大空襲の航空写真を見つけ、
その写真の下で逃げ回っていたことを思い、反戦の意思を強めたことは
有名だ。
これほど、「他人を傷つける」ことに、無関心でいられる殺人はないのでは
ないだろうか。
「相手の顔を見ない殺人には悔悟がない」と言われるが、これがいい例だ。

この展示会に緑川洋一氏(写真家)の「被災」写真が数枚展示されていた。
女優写真家と言われた人だが、被災地写真にも「物語」が映っていた。
同じ被災地が違って映る。
大したものだ。

私の母親は空襲下を命からがら逃げまわっていた。
父親は軍隊に行っていたので空襲を知らない。
おかげで私も生を受けることができたわけだ。

会場では、貴重な「聞き取り」も続いている。
こちらはもう限られた時間だ。
会場の聞き取りでは、被災時には少年少女だった人だ。
成人していた人は、なかなか会場に来られないのだろう。
急がれる。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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持続する志 (bonn1979)
2008-06-23 22:52:42
1945年8月1日富山市への空襲の日は
県内の田舎で疎開していた。
当時4歳でしたが、空が真っ赤になっているのは見えました。異常な体験でその夜のことだけはっきり覚えています。

岡山の様子は初めて拝見しました。
有名な東京大空襲。
桂枝雀の落語のイントロで神戸の空襲を聞いた。
ここ鹿児島でも、爪あとが。
北海道の釧路で博物館で空襲の展示をみました。

貴ブログ「戦争の後始末」19の記事をこの機会に通して読んでみました。
・満州、シベリア、靖国、高砂丸、中国人の強制連行
・坂部晶子、安倍晋三、厚生省援護局、神谷美恵子、皇后、女子ソーシャルワーカー
2005年10月28日から続いているこのテーマへの持続の重さを受けとめました。
知らないことの方が圧倒的に多いです。

「持続する志」は、大江健三郎のエッセイだったかのタイトル(中味は覚えていないのですが)
一番が瀬康子先生から、一番の福祉対策は戦争をしないことと聞かされました。
中島紀恵子(看護学)先生からは、高齢化問題の元は戦争に伴う大幅な人口変動だと聞かされたことがあります。

貴ブログのように
たんねんに先人の後をたどっていくことにしか途はないと気づかされます。
・・・それにつけても、フワフワしたわがブログ。「岩清水日記」を「重し」においているゆえんです。
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ブログの効用 (岩清水)
2008-06-24 12:15:31
bonn1979さま。
コメントありがとうございます。
恐縮するばかりです。
「戦争の後始末」も、ブログの効用かもしれません。
戦時中の「下からのファシズム」を社会福祉の領域でも解明する必要があると思っています。
先人の研究を追っていきたいと思います。
ありがとうございます。
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