岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

【労働】この重いもの。

2004-12-27 09:58:38 | 世界のなかま
テレビでドキュメンタリーを観た。

タイトルは「女たちは綿花を摘む」。

中国国内で、他の地方に出稼ぎに行く話である。
かの地では、労務輸出という。
河南省から新橿ウイグル自治区へ
「綿花を摘みにいく」。
河南省は人が多く仕事が足りない。
結果、失業者が多くなる。
そこで政府の施策として、労務輸出を行うことに
なった。
「綿花摘み」は、機械でもできるが、人の手で摘む
ことが一番とされている。
もちろん、現金収入になる。

約三ヶ月間の仕事に8万7千人が行った。
ある家族からは若い嫁が行くことになった。
また10代の女性は、学校を出たけれど仕事が
なく、携帯ほしさに応募した。

現地では農場の一角のとても立派とはいえない
建物の大部屋に住みこみである。
食事も最低限ですます。昼は蒸しパン。
夜は毎日、白菜である。
ここで金を使っては、持ちかえる金が少なく
なる。仕方ないのだろう。

給料は歩合である。とにかく働かなければ、
給料は増えない。
綿花摘みは厳しい仕事だ。
一日中、中腰で働く。両手先はささくれ立ち、
傷だらけ。家に帰れば治るというけれど、
女性にとってはとても辛いことと思う。

楽しみは雨の日のトランプ遊び。
家にかける電話。家を支えている誇りが言葉に
なる。彼女たちの明るさに助けられる。

やがて、秋になり、農園の温度も下がり、
霜や雪が降るようになる。
零下の気温では体調をこわす人が多くなる。
雪の中の綿花摘みは過酷である。

いよいよ、雪が多くなれば、出稼ぎも終りを
迎えることになる。
収穫量は、多い人で5000kg、少ない人で
1000kgである。こんなに差がつく。
2000kg程度で1万9000円である。
諸経費を除けば、9000円の手取りとなる。

明日帰るという日に皆で街のデパートに
お土産を、わいわいといいながら買いにいく。

携帯を買いたいといった若い女性は、1人
宿舎に残った。

スタッフが「携帯を買わないの」と聞く。
彼女は「いいえ」という。

涙を溜めて、「両親に全額渡す」という。
スタッフは「なぜ?」と聞く。
彼女は答えられず、走り去っていった。

三か月の苦しい綿花摘みは彼女に何を
与えたのだろうか。

身を粉にして彼女が得たものはなにか。

人は「働く」なかで成長していく。

彼女は、両親がどのような努力をして
自分を育ててくれたかを、厳しい「仕事」
の中でみつけたのだろうか。

市場経済では、この9000円で、携帯を
買ってもらいたいという仕組みがある。
彼女はこの仕組みに乗らなかった。

お金より、物より、大切なものがあることを
「綿花摘み」は彼女に教えたのか。

私も、働くことの意味を今も探している。

※働くことについては、
12月13日号でも書いています。

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