金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(大乱)218

2021-05-28 05:31:37 | Weblog
     ☆

 国王陛下の国葬が各地から駆け付けて来た貴族諸侯、
そして国都の平民多数に見送られ、滞りなく行われた。
式次第は三日間通して王家の威風を遍く示し、
権力のありどころを目に見える形で顕示した。
王妃様の思惑通りと言っても過言ではない。
 俺も在都貴族なので列席した。
お子様にして無職、そんな訳で席順は末席に近かった。
棺桶の中の陛下のご尊顔を配し奉る立場でもなかった。
王妃様の姿が見えない席だったけど、まあ、文句はない。

 暇だったけど退屈ではなかった。
俺の周りの貴族達がよく喋る、喋る。
近くに上級貴族の姿がないので油断したのだろう。
遠慮会釈のない会話がただ漏れ。
出世した貴族への妬みから始まり、話は自然、西方の情勢に傾いた。
「島津伯爵軍が善戦しているそうだ。
討伐軍を領外へ押し返しているらしい」
「尼子伯爵軍も討伐軍を領境から一歩も入れぬらしいな。
王家の軍は弱くなったのか」

 巷でもそんな噂を聞いた。
王家にとっては芳しくない話に聞こえるが、真相は違う。
王家は選別した上で、都合の悪い貴族等を西方へ送っているので、
彼等が磨り潰されるのは、かえって好都合。
島津や尼子に感謝したいくらいだろう。

 退出する際に驚く光景を目にした。
『プリン・プリン』パーティメンバーが王家の列にいた。
平民三名が葬儀に相応しい衣服を身に纏っていた。
周囲の王族一門衆と並んでも全く見劣りしない。
あれは実家が商家だからと言って用意できるものではない。
王妃様自らの口利きによるものだろう。
 女児四人の輪の中にイヴ様の空間。
その空間をパーティメンバー八名が囲んで移動していた。
シンシアが俺の視線に気付いた。
軽く微笑み、片手を上げて挨拶してきた。
流石、大人。

 幼年学校の一年次を終えて進級した。
このレベルでの脱落者がいる訳がない。
と言うのに、淡々とは進級しない。
国都の平民は一味違った。
商家の子が中心になって進級お祝いパーティを企画した。
下町の心意気と言うのだろうか。
子供のくせに衒いがない。
 学校近くの料理屋を借り切った。
酒がないだけ、ふんだんな料理と飲み物が並べられた。
集めた会費では足りるのか。
どうするんだ、会費の追加か。
そう思っていたら幹事が俺の方へ来た。
顔色が悪い。
「子爵様」小声で泣きついて来た。
 小さな子供に頼られた。
俺と変わらないけど。
「分かってる。
計算を間違えたんだろう」
「違うよ。
女の子達の追加注文だよ」
「断れなかったのか」
「大勢に囲まれたんだよ」
「分かった、任せろよ」貴族の矜持。

 近くで聞いていたキャロルが俺を手招きした。
「男の子って甘いんだよね」
「仕方ないよ。
口では敵わないんだから」
「ふっふ、ところで子爵様、冬休みはどうするの」
「まだ領地に行ったことがないから、そっちだね」
 同じテーブルのマーリンにも尋ねられた。
「木曽の大樹海だったっけ」
「そうだよ、来るかい」
「イヴ様の予定が入って私達も忙しいのよ」
 モニカも言う。
「ニャ~ンは来ないのって」
「後宮は入れないよ」
「だよね、後宮だものね」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 昨日今日明日あさって。(大乱... | トップ | 昨日今日明日あさって。(大乱... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事