金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(足利国の国都)60

2018-07-08 07:51:20 | Weblog
 近衛兵の指揮官と覚しき男が演壇に上がった。
高い位置から会場を見渡し、睥睨した。
「この訪問はお忍びである。時間も限られている。
よって略式でお迎えするように」
 重苦しい出迎えの儀式は不要、と注意を受けた。
それに応えて、みんな一斉に背筋を伸ばし、手の平を胸に当てた。
帽子を被っていた者は脱帽し、手に持って、胸元に。
早い話、利き腕を胸元に置き、帯剣に触れぬようにしたのだ。
 大講堂の入り口が大きく、バーンと開けられた。
人よりも先に魔力が押し入って来た。
明らかに隠す気のない探知魔法。
指向性も強く、威嚇するかのように、自在に動き回った。
王妃の一行だから許される行為だろう。
 俺の脳内モニターが動き出した。
警告の文字が浮かび上がった。
「警告。混乱で対処できます。行いますか」
 俺の探知君には相手を混乱させる機能がある。
「否、見守るだけでいい」
 みんなの視線が、入り口に向けられた。
先頭は近衛の女武者。
厳しい視線を左右に走らせながら入場して来た。
彼女が探知魔法の発生源だった。
間隔を空けて二人。
さらに続けて二人。
 それから・・・。
ドレス姿の美しい人が入って来た。
なんとも見目麗しい。
彼女は侍従や裾持ちの侍女ではなく、
無骨な女武者のみを前後に従えていたが、
それでも気品は隠せない。
王妃の高貴なオーラは、
自己主張の塊である筈のティアラですら霞ませてしまう。
俺は王妃の顔を知らぬので、二階の貴賓席の反応から、
王妃その人、だと判断した。
噂通りの人、だとも理解した。
 入場するやいなや、王妃が魔力を発した。
鑑定魔法だ。
新入生の最後尾から一人ずつ、虱潰しに鑑定して行く。
指向性から、誰かを探している、と理解した。
 俺で止まった。
俺のステータスを読んでいるらしい気配。
どうやら俺が目的らしい。
 脳内モニターに新たな文字が現れた。
「警告。撹乱で対処できます。行いますか」
 俺の鑑定君には相手を撹乱する機能がある。
「否、これも見守るだけでいい」
 俺は入学にあたり、ステータスの新たな偽装を行った。
「名前、ダンタルニャン。
種別、人間。
年齢、十才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村住人。
職業、冒険者。
ランク、D。
HP、90。
MP、30。
スキル、弓士☆」
 冒険者としてのランクはFだが、個人としてはDでも問題ないだろう。
国都の人々を参考に、白色発光合格やMPも考慮し、
完璧な偽装を行ったつもりだ。
案の定、王妃の鑑定では俺の偽装は見破れなかった。
彼女は満足したかのように鑑定を打ち切った。
俺を一瞥しただけで、演壇に向かった。
その歩みに疑問の現れは一切ない。
 俺は探知君と鑑定君を同時並行で四六時中稼働させているが、
これまで露呈したことはない。
おそらく俺のSPがMPの上位互換機能にあたるからだろう。
俺は脳内モニターに指示した。
「探知魔法の使い手と鑑定魔法の使い手を、指向性を持たせず、
それとなく調べ上げろ」
 王妃が演壇に上がり、柔和な表情で口を開くが、そこに興味はない。
祝辞を聞き逃し、ただじっと彼女の表情に見入った。
美しいだけではない。
人を惹き付ける魅力に溢れていた。
 王妃は視線を平等に左右や二階席にも走らせるが、
時折、俺に目をくれた。
まるで顔を覚えるかのように・・・。
 風のように現れた王妃は、祝辞を終えると風のように去っていった
それからの式次第の進みは早かった。
まるで空気の抜けた風船。
あっという間に終わってしまった。
 俺は校門までカールを見送った。
本当は東門の外まで見送りたかったのだが、
「これからクラスの顔合わせだろう」と一言で断られた。
 カールは真っ直ぐ戸倉村に戻る、と言う。
そんなカールに俺は礼を述べた。
「色々とお世話になりました。本当に有り難うございました」
「はっはっは、ダンは礼も言えるようになったのか。
これも仕事だ、気にするな。
ただ、最後に一言。
無茶だけはするな。助ける俺はいないんだからな」
「はい」元気に返事した。
 苦笑いのカール。
「それがずっと続けば安心なんだがな」
 俺は肩に掛けたズタ袋から小さな紙袋を取り出した。
それをカールに手渡した。
「これはほんの気持ちだけです」
 紙袋の手触りで、それと分かったらしい。
「これは」紙袋を破いて、物を取り出した。
首から下げる魔道具。
魔力が足りぬ者を補助し、魔力を増加させる魔道具だ。
彼は既に水の魔法を補助する魔道具を所持していたので、これにした。
「鍛冶の為の魔道具です」
 俺の言葉にカールが動揺した。
「これは高かったろう」
「暮れに討ち取った魔物の魔卵が高く売れたので・・・」
 一般の普及品ではなく、ちょっと高めの物にしたが、言葉は濁した。
「それにしても・・・」
「それで鍛冶スキルを得られたら俺に何か作って下さい」
 カールは渋々、頷いた。
「分かった。
その時は連絡する。
・・・。
そうそう、ケイト達に手紙は出したのか」
「ケイトにブレット、デニスの三人には駅馬車便で出しておきました」
 尾張の領都にある佐藤家の屋敷経由で届くように手配した。




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