金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)438

2015-04-29 20:11:40 | Weblog
 姜雀が老侍女を見詰めた。
「奥歯に衣着せてどうするの。はっきり言いなさい」
 老侍女は周りを見渡し、思案した。
自分が仕えている姜雀の気性は知っている。
信頼に値する。
しかし他の正室と、そのお付きの侍女、彼女達とは年齢差があるせいで、
それほど親しく交わって来なかった。
気心なんて、さっぱり知れない。
  姜雀が迷っている老侍女に促した。
「当主が亡くなったので後見する者が定まるまでは、
しばらく女三人で袁家を動かさねばならないのよ。
でも正直、女三人では手に余ると思う。
それで、それぞれに付いてる侍女のうちから、心利いた者を選び、ここに同席させたの。
正室三人で合議する際にも貴女方三人には助言を期待しているの。
だから何も隠したくない。隠したら良い助言なんて出来ないでしょう。
私達六人は同じ船に乗っているの。泥舟、分かるでしょう」
 侍女二人が椅子から立ち上がり、老侍女に向かい深く拱手をした。
それを見て姜雀が満足げに頷いた。 
 老侍女は話すことにした。
「私は袁燕お嬢様がお産みになった子は健在である、と信じています。
生まれたのが男子であったので、禍にならぬように自分の傍から遠ざけた。
あの方の気性からすると、そうに違いありません。
死産は偽りです。
おそらく別の誰かが乳母となって育て、首が据わったのを待って、左志丹が引き取り、
姿を消したのでしょう」
 姜雀が嬉しそうな表情を浮かべた。
比べて高夢春と賀璃茉の二人は戸惑うだけで何も言わない。
 姜雀が表情を改め、老侍女に意地悪く問う。
「聞かせて。
貴女はその子を袁術の跡継ぎにでも担ぎ上げたいのかしら」
 途端に高夢春と賀璃茉、その二人の侍女、それぞれの表情が強張った。
 老侍女は年の功、動揺を露わにしない。
「それはありません。
お子は残念なことに表には担げない生まれです。
理由はお分かりでしょう。
当人の為にもなりません。誹られるだけです」
 昔の事なので理由を知る者もいれば、知らぬ者もいた。
それを横目に老侍女は続けた。
「それより、左志丹と二人で居るということに関心があります。
左志丹は無骨な武人です。
その男が手ずから育てているのです。
さぞや立派な武人に育て上げているのではないでしょうか。
そのお子であれば、後見に相応しいのではないか、と思います」淡々と答えた。
 姜雀が片手を顎に当て、撫で回した。
賀璃茉に視線を向けて口を開いた。
「ねえ賀璃茉、貴女は今でも袁燕を憎んでいるのかしら」優しく問い掛けた。
 賀璃茉は両手を上げて、宙に遊ばせた。
「今さら何を・・・。
袁燕様は無論、袁逢様まで・・・、私を残して当の二人は亡くなってしまいました。
今では、あの事はもう遠い昔話」弱々しい言い様。
 袁燕は姜雀の愛娘であった。
実に美しく生まれた。
が、病弱であった為に深窓に暮らした。
それが罪深い恋を成就させ、懐妊までしてしまった。
今思えば、その時が彼女の幸せの絶頂であったかも知れない。
出産を契機に、より体調を衰えさせ、薬師達の看護も虚しく二年後に亡くなったからだ。
 袁逢も姜雀の子。
先代の当主にして、賀璃茉の夫であり、袁術の父。
その彼も五年前に病死した。
 姜雀が、みんなを見回して言う。
「その子が後見に相応しいかどうかは分からないけど、
育て上げている左志丹が傍にいれば心強いわね。
とにかく健在であれば一度会ってみたい。
生まれはどうあれ、私の孫ですものね。
・・・。
しかし探すにしても手掛かりがないわね。
袁燕の世話をしていた侍女達はとうの昔に散り散り。
袁逢の近習の者達も散り散り。
この屋敷に残っているのか、領地に戻ってしまったものか、それさえ分からない。
どうしたものか」
 手立てが思い浮かばないので、みんな押し黙ってしまった。
長い沈黙を破ったのは意外にも賀璃茉。
「この手のことは私共には無理です。
どうでしょう。信頼の出来る者に命じて、密かに探させては」
「そうね。
誰か、そのような者に心当たりはないかしら」
「一人だけ」と賀璃茉、
「左文元をご存じですか。
兄の左志丹が姿を消すや、その留守を守っていた弟です」と続けた。
 思い出したのか、姜雀が笑顔。
「あの者か。愛想だけの軽い男よね」
 賀璃茉が片手を振った。
「違います。誤解です。
兄の息子に家を継がせる為、敵を作らぬように腰を低くしていただけです。
そのように袁逢様が漏らしておられました。
その左文元はすでに隠居の身。
どこをどう動き回ろうと、誰にも怪しまれません。
それに、
・・・、
密かに兄と連絡を取っているかも知れません」




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