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《本記事のポイント》
- 手塚治虫が警鐘を鳴らす人類絶滅の危機
- 念動力で動く宇宙船に見る、手塚治虫の予言者的資質
- 全宇宙の生命を司る、創造神の化身 火の鳥とは
"漫画の神様"と謳われ、今も世界中で敬愛される巨匠・手塚治虫。その代表作にしてライフワークともなった名作『火の鳥』のうち、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」が初めてアニメーション映画化された。製作に7年間をかけたというスペクタクル巨編から、「未来へのメッセージ」が流れ出す。
荒涼たる辺境惑星エデンに1台のロケットが降り立った。わけあって地球から逃亡してきたロミ(声:宮沢りえ)と恋人のジョージ(声:窪塚洋介)は、この星を2人の新天地にしようと誓うも、未開の惑星での生活は厳しく、ジョージは井戸掘り中の事故で命を落としてしまい、ロミは一人息子のカインとAIロボットとともに、孤独なサバイバル生活を送ることになる。
ロミはカインのために自分の命を少しでも引き延ばすことを決意し、コールドスリープ(冬眠カプセル)に入る。だが、機械の故障で1300年間も眠り続けることに。
ようやく目覚めたロミは、新人類が築いた巨大な町・エデン17の女王となる。
そんなある日、心優しい少年コム(声:吉田帆乃華)は、宮殿で悲しみに暮れる女王ロミと出会う。ロミの望郷の想いを知ったコムは、「一緒に地球に行こう」とそれが無謀な挑戦だと知りながら2人で広大な宇宙に飛び出していく。
旅の途上で、地球人の宇宙飛行士・牧村や宇宙のよろず屋・ズダーバン(声:イッセー尾形)が故郷の地球を目指す。
手塚治虫が警鐘を鳴らす人類絶滅の危機
今回の作品は、全16巻に及ぶ漫画版の一編である望郷編が原作となっている。同編は、旧約聖書の創世記をベースとしたもので、アダムとイブに相当するカップルが惑星エデンに移住して、新たな人類の始原となるストーリーだ。
宗教や神話に強い関心を払い、転生輪廻や仏教の日本伝来などの宗教的教養をふんだんに漫画に取り込んだ手塚治虫ならではの一編である。
旧約聖書は、ソドムとゴモラなど、悪を犯し続ける人類に対する神の峻厳さという終末的テーマの源泉でもあるが、今回の映画でも、人類が犯す罪、即ち強欲、堕落、殺し合い、そして最後の審判といった"終末論"が中心的なテーマとして描かれている。
その一方で、ロミの望郷の旅路とともに、原作にはない"新しい始まり"が新たに付け加えられており、観る者の心を打つ作品に仕上がっている。
念動力で動く宇宙船に見る、手塚治虫予言者的資質
壮大で神秘的な宇宙空間の映像の美しさと共に、本作の注目すべき点は、念動力で動く宇宙船が登場する点だ。
現時点では、地球にあるどんな動力源でも「光を超える速度は出ない」とされる。
数万光年の時空を超えて人類が移動できるようになるには全く別の原理が必要で、このことについて幸福の科学・大川隆法総裁は『小説 十字架の女(3)〈宇宙編〉』のなかで、230万光年を一瞬でワープする宇宙船は、「精神エネルギーを物質化したもの」であることを明かしている。
またアメリカで回収されたUFOの中には、「(燃料ではなく)精神エネルギーで動かされている」と思われるものが存在することも確認されている。
本作に登場するUFOはそれらの一部が反映されているようにも読み取れ、手塚治虫のある種の「予言者的資質」を再確認することができる。
もう一つ見逃せないのが、新人類が築いた巨大な町・エデン17の滅亡の危機に、邪悪なる宇宙人が関わっているとしている点だ。
幸福の科学・大川隆法総裁は著書『地獄の法』のなかで、人類滅亡の危機の裏には地獄界の悪魔の働きがあるとした上で、「地獄界にはまた"この地球ならざるもの"も入り込んでいるということです。これは、残念ながら、地上の人類にとってはまったく理解できていない事柄です」と指摘。宇宙存在のなかに「暗黒のパワー」で悪しき影響を与える邪悪な存在があり、「宇宙からの影響や介入ということに対して、あまりにも無知である、あまりにも抵抗力がなさすぎる」ことが問題なのだとしているが、手塚治虫がこのような宇宙人の介入という隠された真実を「火の鳥」で描いていたことは特筆に値する。
大宇宙の生命を見守る火の鳥とは
ところで、火の鳥とは一体いかなる存在なのだろうか。
原作漫画では、もともと不毛だった惑星エデンに生命を根付かせ、文明を存続させるために、地震などの天変地異を抑えてきた、宇宙的な生命力の一部が火の鳥として現れているとされている。
つまり火の鳥は、この大宇宙の生命そのものの顕現であり、漫画版の一つ、未来編のなかでは、道を誤って滅亡していく人類文明について、火の鳥が「一度無にかえして、生みなおさなければならないのです。もう一度、人間は新しく生まれて新しい文明を築くのですよ」と語り、その後、数十億年の歴史を見守るシーンもある。
宗教対立や文明の衝突が人類最大の危機となりつつある今、宇宙的視点から民族・人種の違いを超えて人類を共生へと導く、"存在の愛"としての神の存在ほど、希求されるものはない。
その「大いなる愛」の発見に人類の運命がかかっていることを告げ知らせるべく描かれた、手塚治虫の畢生のライフワーク「火の鳥」。そこにあるのは、「わたしは、必ずあながたと共にいる。」という、人類に対する究極の「愛のメッセージ」だ。