天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

宮脇淳子に注目する

2015-06-13 08:01:09 | 


なにげなく宮脇淳子の『世界史のなかの満洲帝国』(PHP選書/2006)を読んだ。

ぼくは中国がなぜ「支那」と呼ばれるのが嫌いかわからなかった。東シナ海という呼称を変更するよう世界に訴えたりしている。
支那はシナでありChinaであり国名「秦」に由来するのになぜか理解できなかったが、宮脇さんがシナは日本が中国への蔑称としてつくった名称と思っているからだと断じている。
そういえば中国は自分以外の国や人物に漢字でもって卑しめる傾向が強い。
「匈奴」「吐蕃」「夷狄」「倭」…どれも劣ったというニュアンスのこめられた漢字である。「卑弥呼」にしても「卑しい」という侮蔑感をこめている。
中国はそのように他国を蔑称してきたから他国もそうするに違いないと思い込んでいるのだ、と説明している。

宮脇さんは「中国5000年は嘘でせいぜい2200年」という。
日本の企てた満洲国建設はいまでは侵略の烙印を押されがちだが当時の世界情勢のなかでどうだったのだろうか。
日本の中国への侵攻はヨーロッパの先進近代化諸国に倣ったものでありそれがいいこととは今では思わないが、近代化した欧米諸国から一方的にそしられるべきことでもない。
それにしては極東軍事裁判はひとり日本を袋叩きにしたものであるという思いを持つにいたっていた。

それに宮脇さんのいうように清朝末期の中国北東部に国家と呼べるような組織、体制があったのであろうか。
中国中央でさえ一体感のある国家運営はなされていなかった。
それは琉球が清の冊封を受けながら薩摩藩に属しているという二重構造に対して清政府が強く咎めていないことにもあらわれている。

宮脇さんの歴史認識は反左翼である。しかしその種の偏りをあまり感じない。
中国の近代化は日本に負っている、特に日清戦争に負けたことがきっかけになっているとしているが、古代の中国の日本に対する影響はしっかり認めている。
黄河中流に誕生した都市文明は交易路に沿って植民都市をつくり、漢字を使った商業ネットワークを周辺地域に広げていったという見方は斬新。
東北アジアの諸民族はすべて中国文明に影響を受けて国家形成をおこなった。ではわれわれ日本人がなんだろう、という問題を知っておかなければならないというあたりは謙虚で宮脇さんの見方は広い。
注目していい歴史研究家だと感じた。
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