
道を掃いていたら木の葉のようなものがあった。
掃く寸前、それは2頭の蛾で、それも交尾の真っただ中であることがわかった。蛾が尻と尻をくっつけるところをはじめて見て興奮した。交接したところから溢れ出ている黄色のものは何だろう。世の中は知らないことばかりだ。
これはまさしく人間の「まぐはひ」といっていい。くっつき合うところはなんとエロティックであることか。
やおら左の蛾が右の蛾を引きずって動きはじめた。
歩道から車道へ出て行くではないか。そこのけそこのけクルマが通る。轢かせたくないので紙にふたつを載せて歩道の奥へ持ってくると、なんということか、また1頭の蛾がもう1頭を引きずるように人が通るところへ。
もう俺は知らぬ。
多摩川へ桑の実採りに出る。約2時間ほどして帰るとまだ交尾が続いていた。人間の男女よりしつこい。
気になるのは引っ張るほうの蛾が元気なのに対し、引っ張られるほうは元気がない。もう死んでいるようにさえ見える。
桑の実を水洗してそこへ来ると、そこには元気な蛾が1頭いるだけであった。もう1頭は影も形もない。
残った1頭が雌なら未来はあるがこれが雄ならこの交尾は無駄ではなかったか。
命のあはれを見せつけられた。
交尾をまぐはひと思ったが、虫の世界に快楽を貪ることはないと見る。まぐはひは目合である。広辞苑には①目を見合せて愛情を知らせること。めくばせ。②男女の交接。性交。とある。
蛾の交尾はもっぱら生殖あり、愛情を交すめくばせなどない。
人のみが生殖の営みに愛情を持ち込む。まぐはひは①と②を同時に果たす行為である。
そして、生殖を拒否するまぐはいが当然のように横行する。昼夜なく。
これまた、あはれではないか。
元気な下の蛾が翅を打ちふるう。しばらくして上の蛾は消えていた。


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