村上春樹の『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだ。
去年図書館で予約して、1年かかってやっと順番が回って来たのだ。
題名が少し変わっているし、やたら長いなあと思った。
しかし…村上春樹の小説の書き方は、本当にうまい。
最初に「謎」を出してきて、「えっ、なぜなの?一体それって何なの」と思わせてしまう。
私も、見事に著者の技にはめられて、先を読みたくて仕方なくなった。
しかし、1番最初の謎は、一応最後には解けたが、途中で不思議な話が出てきたり、怪しい人が出てきたり、犯人は誰なんだとか、沢山の気がかりが湧き出して、結局ほかの謎は解かれないままだった。
「えっ、もう終わるのお?」と言いたい気分だった。
この小説には続きがあるんじゃないかと心残りがした。
しかし、謎と言うものは解けると途端にそれまでの精彩を失うとも感じた。
「なんだ、そんなことだったのか」と言いたくなる。
しかし、人生こんなものかもとも思った。
「彼の巡礼の年」と言う題はそうだねと言う感じ。
リストのピアノ曲のイメージをうまくを使っているのは、彼らしいテクニックだなと感心した。
何となく最後の方でばからしくなったのだが、次々謎を出しては、人の心を虜にしていく。
読まずにいられなくさせるのは、確かに凄いと思った。
この本の中の言葉「人と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ」
うん、確かにそうかも。
そして、私は何となく煮え切らない思いで取り残されている。
それでも、夏休みにこの本とばおばぶの8月の読書会の課題本だった分厚い本と、子供の本を数冊読み上げた。
今年の夏休みの読書は、まあ、こんなものかなと思う。
そして、今日は8月31日で、明日から2学期。
蔵書点検、3日間ぶっ通しと言うキツイ始まりを迎えることになるのだが…
それでも、今年の夏を病気にもならずにどうにか乗り越えられたのは良かった!ラッキー!と思っている!
木莉
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