『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督最新作に、吉永小百合や渡辺謙といった日本が世界に誇る映画人らが総出演。歴史の波にほんろうされながらも、北の大地で懸命に生き抜く人びとを描いた感動のドラマ。映画出演111本目となる吉永小百合がひとまわり以上も年の離れた3人の俳優らとラブシーンを披露する。北海道ロケで撮られた厳しくも美しい自然の風景は必見。[もっと詳しく]
「幻のユートピア」の原型が浮かんでくる。
吉永小百合111本目の作品にあたる。
この映画は、どうみても、「吉永小百合」映画だと思う。
明治の初期、藩政から廃藩置県にいたる混乱の中で、徳島藩と「庚午事変」を起こし、北海道に転藩を命ぜられた淡路・稲田家の546名にのぼる第1次北海道開拓団の十数年にわたる苦闘の物語が、稲田家の家臣小松原英明(渡辺謙)とその妻志乃(吉永小百合)を通して展開される。
これは、ひとつの「ユートピア」を創り上げる物語だが、「武士の商法」ではないが、結局「禄」をはぐくんできた侍たちは、「主君」というものが喪失すると、からっきし駄目で、新しい「権威」が出てこない限り、「ユートピア」を自分たちの価値で形成することができないという寓話みたいなものである。
英明は、当初はずいぶん頼りがいがありそうだが、「病気」もあいまって家族から失踪した後、結局「官吏」となって、再登場し、「お上」をふりかざし、志乃(開拓者)から馬を「徴用」する役割になっている。
結局、「江戸幕府=藩主=藩士」から「明治政府=天皇=官吏」に構造が変っただけなのだ。
「夢は信じて創るもの」ということに忠実になり、「ユートピア」を自分たちの手で作り上げてきたのは、権威を頼まぬ、むしろ、か弱かった志乃たち女性や仕える側の末端の民衆の方であった。
実在の人物らしいが、「北海道酪農の父」といわれたエドウィン・ダンが、雪の中の志乃と娘を救い、数年後、志乃は牧場を経営するまでに自立する場面がある。
北海道の開拓の大地の中で、エドウィン・ダンと洋装の日本人妻、溌剌と牧場を動き回る志乃母娘、そして、愛情を持って親子を見守るアイヌの老人とアシリカと呼ばれるアイヌに身を扮し官憲から逃れる幕末の侍(豊川悦司)そして、ようやく作物の栽培にも成功しつつある移住者たち。
彼らが、雄大な自然の中で、共存し、馬が喜んで疾走する。
この、光景の中に、国籍でもなく、位の上下でも、男女でもない、「幻のユートピア」の原型のようなものが、スクリーンを通して見えてくる。
好きなシーンだ。
この原型を拡張することができれば、僕たちは、もう少し、自分たちの「国」のイメージを、奪還することができるかもしれない。
テーマなんですけどね、僕はこういう「国家正義」じゃないところで、幻想されるコンミューンというのが好きなんですね。
絶対に、未完に終わってしまうんですけどね。
敗北するからこそ、幻想のユートピアなんでしょう。
いつの間にか雪が似合う女優になりましたねえ。
彼女も彼女の演ずる女性も良いと思うのですが、男性諸君は物足りなかったなあ。
撮影も総じて悪くはないのですが、どうもデーヴィッド・リーンと比較している僕がいるようで、満足できませんでした。
嫌いなタイプの作品ではないだけに「惜しい」という思いが強いですね。
ダンさんが実在であったことは、僕も、映画資料で知っただけですが。
初期には、ある種の理想主義的な人たちが、指導に来ていたのでしょう。
エドウィン・ダンさんが実在の人物だというのは私も知りませんでした。
物の数だけ父と呼ぶことの出来る人はいると思いますが、
この人は実際に酪農の父と呼ばれているということで
貢献量はみんなが認めているのでしょうね。
いろんな意味でのユートピア論と、官僚の中央集権制との、戦いはずっとあったでしょうね。
ダンさんって、実在した人物なんですね。びっくりです。
私はこの映画、すごく「うそ臭い」と感じてしまったんですけど、ユートピアを求める観点、っていうのは、案外そんな「うそ臭さ」っていうのが含まれくるものなのかもしれませんね。
ちょっと、新しい視点で考えてみることにします。
いや、僕も充分、自己チューです。
>willbeさん
舞台に立つほうはいかがですか?(笑)
私は映画は大好きなのですが、最近は忙しくて
あまりみられず、北の零年は、ほぼ半年振りに見た映画でした。
タイトルを見ました。私もサーカスや舞台、
裏方に立つのも、観客になるのも大好きです。
私の自己中な映画感想はお役に立てないと思いますよ~。
今、livedoorPICS ってのにハマってます。一度見てみてくらはい。
でわ~
雪国出身の方は、現代では比較にならないくらい便利になったとしても、やはり、豪雪の厳しさが、身にしみているのでしょうね。
僕ももぱらいまは、自宅でDVD鑑賞です。それで、「座布団シネマ」というカテゴリー名にしました(笑)
少し、コメントが遅くなり申し訳ありません。
この映画 私2度観ました。ストーリー展開も
好きですが、私自身が雪国出身なもので あの
映画の中の雪に ただただ 想いをはせていました。
厳しくて優しい私の故郷は こうして開拓者たちに
よって作られたのだと しみじみ思いながら
吉永小百合さんの 美しさに心まで奪われながら
映画を観ていました。映画って 良いですよね。
私は もっぱら自宅でDVD鑑賞なんですけどね。