乙女派作家・嶽本野ばらの同名小説「下妻物語」を“写るンです”や“NTT東日本”といった数々の名CMを手がけたが中島哲也が映画化。ロリータをこよなく愛する主人公に深田恭子、地元ヤンキー役にティーンに絶大な人気を誇る土屋アンナと他にも個性豊かな共演者たちがインパクトを与えている。中島監督の映像センスが光る劇画のようなカット割りには要注目。[もっと詳しく]
「群れない、媚びない、へこたれない」という精神。
「群れない、媚びない、へこたれない」という精神は、みていてとても気持ちがいい。これは少年少女に向けられた言葉というより、いまの時代状況に向けて発された言葉だとしても、僕は本気で支持したい。
コミュニティや協調やコンセンサスや調和や、いろんな言い回しをしようが、「異端は排斥する」という思想が、日常に満ちている。
「ひきこもり」をしようものなら、あぶないものを警戒するような視線で見られる。なるべく、人と同じように見られること、突出することを避ける、平均点でいい・・・。
一見、平和に見える世界の「世渡りの思想」といってもいい。
「下妻物語」のふたりの少女は、そんな「ところてん」のような世界に背を向けて、しっかりと自分の足で立っている。
竜ヶ崎桃子(深田恭子)は、おフランスの香りただよう18世紀ロココの世界に憧れる。レースのパラソルにボンネット、ひらひらフリフリのロリータスタイルだ。
白百合いちご(土屋アンナ)は、ヤンキーバリバリの特攻隊スタイル。50ccの原チャリを族仕様に仕立て上げ、いまどきはやらないつっぱりスケ番スタイルの工業高校2年生。このふたりは、一見すると、もっとも対極にあるようにみえるが、「ところてん」の世界から見れば、同じように、奇抜で突飛で理解不可能な、世界にいる。
人にどうみられようが構わない。世界が自分を拒絶するなら、あえて、世界と和解する必要はない。
原作は「乙女のカリスマ」がキャッチフレーズの嶽本野ばら。
きわもの作家のようにみえるが、どうして、しっかりとした戦略性で、自分を武装している。才能に満ちている。
「ハードボイルドじゃなきゃ、乙女じゃない」という、コンセプトもシャレている。
そして、CM界の奇才、中島監督。
サッポロ黒ラベルの「卓球編」といえば、ニヤリとする視聴者は多いはずだ。
「CMのような瞬発力と少女マンガの感性の融合したエンタテイメント」を目指したという監督の、本作は会心の出来であろう。
たぶん尼崎であろうか、関西の「ジャージー」が住民の制服文化でもあるヤンキー帝国で、しがない父(宮迫博之)と浮気性の母(篠原涼子)を持つ桃子だが、商売の失敗に追われて、祖母(樹木希林)がいる茨城県下妻の実家に逃げ込む父についてきた。
桃子はロリータファッション以外に興味がなく、学校でも一人浮いた存在。
360度みわたせる田んぼの光景の中で、片道3時間をかけて、週末には、好きなカリスマショップがある代官山まで通っている。
父の「バッタモノ」商売を個人販売して洋服代を稼ごうとしたが、その情報につられてきたのが、イチゴである。
クールで辛辣な観察者である桃子と、直情的で突っ張って生きるがどこか甘えたがりのイチゴは、水と油のようにみえるが、なぜか友情が発生する。
規模が大きくなり形式が先行するようになった「族」を、イチゴは抜けることを決意し、ケジメをつけるために、単身、集会場に乗り込む。
心配になった桃子は、祖母のバイクを借りて、追いかけるのだが・・・・。
「貸したものは還ってこない。だから大切なものは人にあげない!」というクールな桃子と「借りたものはなにがあっても返す!」というホットな心情のイチゴ。
このふたりの掛け合いが、とてつもなく、楽しい。元気が出る。頑張れ、と声援したくなる。
人口数万人、豚と梨と米が特産品。ローカル線は、1両か2両建て。
農道を、牛がぼーと突っ立っている。楽しみは、ショッピングモールの巨大「ジャスコ」。観光は、ギネスにものっている、巨大仏像(全長120m)の「牛久大仏」。
どこにでもある、田舎町だ。スタッフもそんなローカルな町で、楽しんでしかし必死に準備しているのが、画面から伝わってくる。
音楽の菅野よう子は、ここでも、菅野ワールドというしかない見事な音曲を、その幅広い引き出しから、自在に出してきている。
従来の邦画の美意識を、とことん否定しているような混沌とした作品だ。
邦画の伝統美である抒情も微細さもあったものではない。
冒頭で、いきなり、農道に不似合いなロリータメルヘンで佇む深田恭子が、牛のべちゃべちゃの糞を踏んづけてしまうんだから。
だけど、このヤンチャでホットな空間は、とてもリアルだ。
現在の資本主義にまみれた地方都市、平均値を求める模倣社会、ださくて、退屈で、冗長な日常。
そんな町に、ギャグのようにあらわれた桃子とイチゴ。本人達が無意識な分だけ、つまりミーハーな分だけ、この等質な世界を食い破っている。
原作には、続編があるが、映画化の予定はまだない。
そのことだけが、とても残念だ。
何回でも、見たくなりますね。
アンナは、これで、新人賞か。子供も出来たし。潔い子だ。
こりゃ、「嫌われ松子」も見に行かなくちゃ。
ある種独特な世界。
ツッパリにしろ、ロリータにしろ
フツーはそんなにええもんには見えないんですが、
キャスティングの妙なのか
監督の見せ方なのか
とにかくかっこよくて
男気(表現がヘンですが)のある二人に感動しておりました。
松子・・のほうも原作未見ですが、
文章だとちょっと重いような、暗いような内容のはずなのに
えらいきらびやかな極彩色ミュージカルになってる。
ちょっと期待。
下妻・・でハマって、同じ監督作だから
松子見に行くって人多いみたいですよ。
下妻は、ここまで、期待していませんでしたね。こうなったら、松子も見なくちゃねぇ。あの、子役がまた出るのかしら?
ふざけているように見えて、芯が一本しっかり通っている。そんな作品でした。
私はその先入観で、しばらく敬遠していたのですが、何でもっと早く観なかったんだろうと思いました。
嫌われ松子も面白そうですよね。
でも、おじさん一人で、さすがに、映画館に入っていく勇気はないですよ。
こちらからもTBしようと思いましたが、何故か送れません。
いやぁこれ、思ったより良かったです。
続編とかあればまた観たいです。
ここ数年の邦画の、大傑作ですよ。まあ、ポスターは、おじさんには、恥ずかしいけど(笑)
知りあいに勧められていたのですが、ほんとに面白いのか実は半信半疑で見たんです。
中盤過ぎてからは、かなりツボをつかれる笑いもあり、じんわり感動もあり、予想に反して「こりゃ面白い」(笑)
見終わったあとでは、思わず「あたいのマシンが火を吹くぜ!」と言ってバイクに乗りそうになりました(^o^;
こちらからもTB返させていただきます
僕も、面白くなければ、途中でやめよう、と思っていたんだけど、とんでもなかったです。演出がいいんでしょうね。ぜんぜん、だれたところはなかったですね。