気まぐれ日言己2

日々の出来事や趣味の事、時事ネタなどを気まぐれで書き込みます。

飛燕見てきた その4

2016-11-10 22:40:00 | ノンジャンル
過給機と共に復元に時間がかかったのが『水・滑油冷却器』。



この黒い箱みたいなのが冷却器。

試作17号(6117号機)では最初から無かったので、
1から作ることになったそうで・・・。

ところがこの冷却器に関する情報がめちゃくちゃ少なく、
復元には2年もの歳月がかかったそうです。



主翼の付け根付近にある出っ張りが冷却器があるところ。
ここに冷却器があり、周りを冷却器覆で囲まれています。

知覧に展示されていたときは、翼の下面はあまり見えなかった
ので、今回の展示で初めて見ることができました。



左後方から撮影。
この方向から見てもかっこいいですね。


プロジェクトチームの方々の『飛燕』修復・復元にかける情熱は
相当なものと感じました。

プロジェクトチームは会社に命じられて結成されたのではなく、
有志によるボランティアで結成されたとか。

それもこれも、当時の技術や約75年前に設計・製作に携わった
諸先輩方の情熱や努力を解明すること、そしてそれらを後生の
技術者に伝えるためでしょう。

プロジェクトチームの方々の努力と情熱には本当に頭が
下がります。



大東亜戦争中に培われたいろんな技術や製法が、戦後の
技術大国日本の礎になったことは間違いありません。

当時の設計者や技術者の方々の多くが鬼籍に入られた今、
こうして最新の測定技術を用いるなどして、当時の技術や
情熱などを再評価し、後生に伝えるのは必要なことだと
思います。

戦後70年ほど経過して、ようやくこういうことが出来るように
なったことは喜ぶべきことでしょう。

・・・というより、今でが異常だったのでしょうね。


『兵器』というのは、作られた当時のその国の技術力・科学力・
人材などの結晶であり最高技術の塊です。

当時の技術力を知ることができる”歴史的な産業遺産”でも
あるのです。

それらを解明して知ることが、これから必要でしょう。

何でもかんでも『戦争ニツカワレター』『殺人兵器ダー!』と
レッテル貼りして闇に葬ろうとする流れは間違っていると
思いまする。



『飛燕』の右翼下にあるのはカワサキのバイク『Ninja HR2』。

水冷4ストローク直列4気筒998ccエンジン搭載マシンで、
300馬力を出せるとか。

そしてこのエンジンにはスーパーチャージャーが搭載されて
おります。
スーパーチャージャーすなわち過給機です。

エンジンとスーパーチャージャーの開発にはモーターサイクル&
エンジンカンパニー部門だけでなく、川崎重工グループの
ガスタービン&機械カンパニー、航空宇宙カンパニー、技術開発
本部などの他部門の協力でもって設計されています。

それらの技術は「ハ40」や「ハ140」の液冷エンジン開発の
技術やノウハウを基に約70年も培われてきた技術です。

飛行機とバイクの展示、一見すると『?』という展示内容ですが、
脈々と受け継がれてきたカワサキの技術力があるのだと思います。

●ここにも技術力がー!



カワサキ750Turbo。

ターボチャージャー(過給機)を搭載したバイク。

HR2より30年ほど前の昭和59年(1984年)に発売された
バイク。

とんでもない加速力でエンジン全開にすると大変危険だと言われた
バイク・・・。

バイク雑誌のレビューで「やばいよ~」と遠回しに書かれたという
伝説のバイクです。

最後に姿を見たのは何年前かなぁ・・・。
ここ10年ぐらいは見たことありません。
ま、行く所に行けば見ることができるんだろうけど。

今乗れば、間違いなく自爆します・・・。

過給機搭載ということで、「ハ40」「ハ140」エンジンの末裔に
なるってことで展示されたのでしょう。

<<おわり>>

飛燕見てきた その3

2016-11-10 20:32:00 | ノンジャンル
『飛燕』Ⅱ型(6117号機)ですが、あちこちに部品の欠損や損傷が
見られ、完全な機体とは言えない状態でした。

戦後各地をドサ回りして展示されている間に盗られたり紛失、損傷
したのでしょう。

これらを往時の姿に復元すること、あちこち傷んだ箇所を修復する
ことにしたのです。



依頼を受けた川崎重工は、プロジェクトチームを立ち上げます。

機体の修復作業を中心とするチームと、「ハ140」の復元を担当
するチーム。

それぞれのチームは、残っている設計図や取説書や文献や論文を
調査。

また日本国内や海外に保存されている旧日本軍の機体や
部品なども調査します。
購入できるものは購入し、また所有している方から借りる
などして徹底的に調査したそうです。

とくに「ハ140」エンジンについては、過給機と呼ばれる
空気をエンジンに供給する部品がないため、この復元には
困難をともないまいした。

なにしろ設計図も実物もないので、当時の資料や各種出版物、
ネット情報などを収集。さらに活動に共感された個人の方々が
所有する部品などの実物、資料などにより当時の姿が徐々に
判明。

そして復元されのがこの検証用モックアップ。



写真は吸気側なので分かりませんが、裏側の駆動部
(銀色の部分)がグルグルと回っていました。

このモックアップをつくるにあたり、過給機の分析と調査に使用した
のが、DB603の過給機だそうで・・・。



分解・調査した実物が展示されておりました。
これらの部品をCCD測定した後に3DCADに取り込み
部品形状の参考にしたそうです。

なお、写真の撮影時、この正面ではプロジェクトチームの一員と
思われるエンジニアとやたらと詳しいおっちゃんが白熱した議論を
交わしておりました。
専門用語がポンポン飛び交っていて、聞いていた私はさっぱり
分かりませんですた~ (^^;)

<<その4に続く・・・>>

飛燕見てきた その2

2016-11-10 18:04:00 | ノンジャンル
もう11月です。

すでに公開は終わっておりますが、書きあげます。

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今回展示された『飛燕』はⅡ型と呼ばれる後期タイプ。

ダイムラーベンツのDB601という液冷エンジンをライセンスし
国産化した「ハ40」というエンジンを積んでいたのがⅠ型。

Ⅱ型は、その「ハ40」の能力向上型である「ハ140」エンジンを
搭載したタイプなのです。



エンジンパワーが「ハ40」よりも向上したことで離昇出力が上がり、
高度1000mで編隊が組めるようになり、本土防空への活躍が
期待されました。

ところがこの「ハ140」、高度な製造技術が必要なのと、いろいろと
故障が続出し製造は遅れに遅れることに。

一方、機体は「ハ140」エンジンが予定通りに製造される前提で
製造されたため、エンジンを搭載しない(できない)機体だけが
完成していくという状態になってしまいました。

川崎の工場内には200機近いエンジン未搭載の機体があったとも
言われています。

そんな状況下であったため、昭和19年(1944)8月に、陸軍は
「ハ140」エンジンの製造に見切りをつけてしまい、
『飛燕』Ⅱ型は99機の製造で打ち切られてしまいました。



今回展示された機体は、「ハ140」エンジンを搭載した
試作17号機で、大変貴重な機体なのです。

ちなみにエンジン未搭載の機体は、空冷エンジンの「ハ112Ⅱ型」
(三菱製の金星62型の陸軍での名称)を搭載して『五式戦』と
なったことは有名な話。

<<その3>>に続く・・・