ごっとさんのブログ

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ペニシリン発見者のすごい想像力

2019-04-19 10:21:09 | その他
50年ほど前まで、人類は細菌との戦いに全く無力で、指先の小さな傷などから細菌が入り、命を落とすことも稀ではありませんでした。

この状況を一変させたのが、抗生物質「ペニシリン」の発見で、近代医学の勝利ともいえる世紀の発見ですが、このフレミングについて面白い逸話が出ていました。

1922年イギリスの科学者フレミングが、細菌を培養する実験をしていました。その時くしゃみをしてしまい、鼻水がシャーレの中に飛び散ってしまいました。ところが翌日見てみると、鼻水の周囲だけ細菌が増殖していないことに気づきました。

フレミングは、鼻水だけでなく涙や唾液などにも殺菌効果がみられることを見出し、酵素の働きによるものだろうと推定しました。この酵素をを分解酵素の意味を込めて「リゾチーム」と命名し、成果を論文に発表しましたが、全く注目されなかったそうです。

現在ではリゾチームは、溶菌酵素として風邪薬などにも配合される一般的な有用酵素となっていますが、この発見者(命名者)がフレミングであるとは知りませんでした。このリゾチームの研究が、その後ペニシリン発見へと大きく貢献することになりました。

1928年フレミングはブドウ球菌の培養に使ったシャーレを、流しに放置したまま旅行に出かけました。シャーレは消毒液に浸してありましたが、山のように積みあがっていたため一部が消毒液からはみ出していました。

休暇から戻るとはみ出していたシャーレにアオカビが生えていましたが、よく見るとカビの周囲だけ細菌が増殖していないことに気づきました。

その時彼の脳裏にリゾチーム発見時の記憶がよぎり、鼻水に抗菌作用があるなら、カビもまたそうではないのかと気付いたわけです。このカビはペニシリウム属に属するものだとわかりましたので、抗菌物質を「ペニシリン」と命名して発表しました。

これがやがて何百万もの命を救うことになる大発見が、世に明かされた瞬間でした。このカビをコンタミさせたことによってペニシリンを発見したというのは、教科書的な有名な話ですが、リゾチームの件がからんでいるというのは知りませんでした。

この話は最近セレンディピティの良いモデルとしてまた取り上げられていますが、大発見というのはちょっとしたミスや偶然がからむことが多いような気がします。

フレミングは後年、「私は細菌で遊ぶ」と語ったほど、喜々として細菌でいろいろな実験をして、珍しい現象を見つけては喜んでいたようです。

その旺盛な好奇心とちょっとずぼらな性格が、「奇跡の薬」の発見の糸口となったのは面白い事と感じています。