ごっとさんのブログ

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水素水とミトコンドリア

2019-04-06 10:03:36 | 化学
ヒトの身体は37兆個の細胞で構成されていると考えられています。その細胞一つひとつに「ミトコンドリア」と呼ばれる数百から数千のエネルギー工場があります。

活性酸素は主にそこで作られ、そのため酸化の影響を最も受けやすいものもミトコンドリアです。しかも細胞膜と同じように不飽和脂肪酸を非常に多く含んだ脂質膜で覆われています。

そこでミトコンドリアの内外には、活性酸素を無力化する「抗酸化酵素」が豊富に配備されています。抗酸化酵素の量、つまり抗酸化力は成長とともに増え、20歳前後でピークに達します。

それ以後は年齢とともに減少し、それに伴ってミトコンドリアの劣化が進み、体力や基礎代謝の低下という形で表れてきます。多くの人が30歳を過ぎるころから太り始めるのも、ミトコンドリアの劣化が原因のひとつです。

また高齢者のフレイルなども同様の理由で進行すると考えられています。その為最近では「ミトコンドリア活」などと言った話も出てきており、適度な運動でミトコンドリアが活性化できるとか、針やお灸が効くとか根拠の薄い話がネットや健康雑誌などによく見かけるようになってきました。

その中のひとつに「水素水」があります。もともとは「ミトコンドリア病」などの治療のために10年以上も前に考案されました。ミトコンドリアの働きが落ちることにより、筋力低下や脳の発達障害などが起きる難病です。

その他にも活性酸素が関与すると考えられる病気の治療にも期待さていました。活性酸素と水素を反応させて水に替え、その毒性を中和することによって、ミトコンドリアの劣化が止まり病気が改善されると期待されていました。

この水素水はあくまで治療のための開発ですので、科学的論証がされてきましたが、いまではほとんど効果はないという評価になっています。病気の改善にも抗酸化力の強化にもほとんど影響しないようです。

この水素は私の仕事ではなじみの深いもので、もちろんボンベからのガスですが色々な反応に使っていました。水素は酸素と混じりあうと爆発するという性質があり、危険なものでしたが非常に分子が小さく、通常の風船のようなものではすぐ抜けてしまうという面倒な性質もありました。

またほとんど(全くと言っても良いかもしれません)水に溶けませんので、水素水というもの自体何か怪しさを感じていました。

ところが日本では意外と人気で、今でもアルミのボトルがコンビニなどで普通に売られています。微量の水素ガスを水に溶かしただけのものですが、結構いい値段がついているようです。

ミトコンドリアを若返らす確実な方法は見つかっておらず、水素水は効果がないという結果が出てから販売が活発化したというのも面白い消費者心理と言えるのかもしれません。