ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

アルツハイマー治療薬 開発困難

2017-01-31 10:39:24 | 
世界中で増加の一途をたどる、アルツハイマー型認知症の治療薬の開発が難航しているという記事を見ました。

これは非常に珍しいことで、通常開発が失敗したり、難航しているということが報道されることはほとんどありません。特に薬の業界では、臨床試験で良い結果が出ず開発中止なることはかなり多いのですが、開発企業はうまくいかなかった事を公表することは有りませんので、この結果が公の場に出ることはまずないのです。

現役のころは競合メーカーの結果には常に気を配っているのですが、噂としてしか入ってきませんでした。こういった開発失敗がニュースになるといことは、それだけアルツハイマー型認知症の治療薬が待たれているということかもしれません。

今回はアメリカの製薬会社が、2回も臨床試験に失敗し、承認申請を断念したようです。

アルツハイマー型痴呆では、「アミロイドβ」というタンパク質が症状が出る20年ほど前から蓄積し、その後「タウ」というタンパク質が集まり発症するようです。現在使われている薬は、残された神経の情報伝達力を高め、記憶や学習を助ける効果はあるのですが、根本的に治療することはできないわけです。

そこでこの製薬会社は、アミロイドβを除去するような薬剤の開発に取り組んだようです。今回用いた薬が動物実験では十分な効果が得られたことより、臨床試験を行ったのですが、認知症患者には明確な効果が出ませんでした。

このデータを解析したところ、比較的軽症の患者には効果がある可能性が浮上しました。そこで今回は発症初期の患者だけを対象に臨床試験を行いましたが、明確な効果は出なかったようです。

その他の企業でも、高齢になっても認知症を発症しない人が持っている特殊な抗体の臨床試験も進んでいるようです。こういった原因物質の除去と共に進められているのが、治療時期を早める戦略での研究です。

アミロイドβは時間をかけて徐々に脳に蓄積していくため、認知症を発症した時点では神経細胞がすでに死滅しており、発症した時点で除去しても遅いという考え方のようです。

この研究では画像検査で脳にアミロイドβの蓄積が見られる高齢者に、前述の薬を使ってもらい発症予防効果を調べるというものです。しかし私の感じでは、こういった予防効果の研究は非常に時間がかかり、色々他の要素も入ってきてしまうので解析は非常に難しくなりそうな気がします。

私もいつ発症してもおかしくない年齢になりましたので、新しい治療薬の開発を期待したいものです。

全豪オープン 決勝戦

2017-01-30 10:41:40 | テニス
前回全豪オープンほぼ決着ということで、この大会の面白いところは終わってしまったと書きました。

決勝戦が残っていたのですが、女子はウイリアムズ姉妹のビーナスとセレナの戦いになり、10年前の決勝戦の様でした。また男子もフェデラー対ナダルというこれまた10年前のような対決になったのです。

確かに女子は予想通り、妹セレナが強打で上回りストレート勝ちとなりあまり面白いものではありませんでした。しかし昨日の男子は全く異なっていました。

35歳のフェデラーと30歳のナダルでは、あまり良い試合は期待できないと思っていましたが、年齢を重ねた二人のうまさが際立つ戦いとなりました。どちらが勝つかはあまり気にしておらず、どちらかを応援していたわけではありませんが、1ポイントが非常に重く、目が離せない戦いとなりました。

フェデラーは短いポイントで決めようとする戦略で、ナダルは長いラリーに持ち込み決めていくという、対照的な二人でしたが、結果的には長い戦いとなりました。普通の試合で有れば決まってしまうようなショットを、二人とも簡単に返しさらに厳しい戦いになるという、若い選手のような単純な流れはほとんどありませんでした。

ストロークの中でいつの間にかフェデラーがネットに出ており、ナダルは難しいボレーとなるような足元に返すという、すべての場面に見せ場があるという戦いになりました。もともと技のフェデラー、力のナダルという二人でしたが、30歳を超えても二人とも技と力を十分に発揮しました。

試合の方は1セットをフェデラーが6-4でとり、2セットは逆にナダルが6-3で取りかえすという、一進一退の展開となりました。3セットはフェデラーのサーブが決まり、ナダルのミスを誘って6-1でフェデラーがとり流れはフェデラーかと思いました。第4セットは何度もピンチを迎えたナダルがこれをしのぎ切り6-3でナダルが取りました。

ファイナルセットになりましたが、もうどちらが勝つかは全く予想できませんでした。ナダルがリードしたかと思えば、フェデラーが追いつき、本当に1ポイントの差でフェデラーが6-3でとり、見事優勝しました。まさにグランドスラムの決勝にふさわしい良い試合でした。

表彰式の二人のスピーチも素晴らしく、感動してこの2週間の大会が終了しました。この決勝戦は日本時間5時半過ぎに始まりましたので、かみさんは夕食の準備がほぼできていたのですが、試合が終わる9時過ぎまで夕食を摂ることも忘れて見入ってしまいました。

ナダル、フェデラーがこれだけ良い試合をすると、ジョコビッチ、マレーを加えたビッグフォーの時代に逆戻りした1年になりそうですが、これから長い1年間どんなドラマが生まれるか、楽しみが増えた気がします。

「新出生前診断」の問題点

2017-01-29 10:36:15 | 健康・医療
妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」が色々な面で揺れているという記事を読みました。

この診断方法は2013年に開始して以来、受診者が3万人を超える一方、必須のカウンセリングをせずに認定施設外で検査が行われていたりするようです。「命の選別」につながるとされる検査だけに、それぞれの立場で慎重な対応が求められているとしています。

私はこの命の選別という言い方に抵抗があります。こういった出産前診断を何のためにやるのかというと、自分の赤ちゃんが遺伝子などの異常を持っているかを調べるためではないはずです。こういった先天的な障害を持つ子供を育てるという、大きな負担を減らすために、中絶するか否かを判断するための検査だと思います。

私の知人にも軽い知的障害や自閉症の子供を持った人がいますが、成人しても自立することはできていません。成人するまで育て上げること自体大変な苦労があるようですが、親が死んだあとどうなるかが心配の種のようです。

こういった障害があり自立できない人たちをうまく支えるシステムは、あるのかもしれませんが、あまりしっかり機能していないような気がします。こういった施策が確立していないのであれば、障害者を減らす工夫をするべきだと思っています。

また「どうなろうとも、どんな命にも意味がある」というような言葉は、この記事中にも出てきます。こういう感じで障害者を育てた人は本当に立派だとは思いますが、この言葉は他人に押し付けるものではないと考えています。

この新出生前診断には、認定した施設でのみ行うとか、遺伝カウンセリングをおこなう、出産時年齢が35歳以上などという条件が付いているようです。しかし都内の民間業者は、こういったルールを無視して、英国の検査会社と提携して斡旋しているようです。こういった流れはそれほど悪いものだとは思われません。

この本来の条件もあまり意味がないような気もします。特に35歳以上の限定している理由がわかりません。たぶん若い人でも検査を受けたい人はいるはずですので、こういった業者がでるのは当然のような気もします。この検査のように血液採取だけででき、精度も高くリスクが少ない技術なのですから、もっと広く実施すべきと思っています。

但し正確にはまだ臨床研究として導入されているようで、この3年間で3万615人が受診し、547人が陽性と判定されました。その後の羊水検査で染色体異常が確定した417人のうち、394人が妊娠中絶を選択したとされています。

こういった良い検査方法ですので、変な倫理観など気にせずに普及することを望んでいます。

全豪オープンテニス ほぼ決着

2017-01-28 10:37:42 | テニス
全豪オープンテニスも今日、明日の決勝を残すのみとなり、ほぼ決着したと言えます。

決勝戦が終わっていないのに決着というのはおかしいのですが、楽しみにしていたカードが終わってしまいました。

前回までに書いてきましたが、第2シードのジョコビッチが敗れ、No1のマレーまでが姿を消し、荒れる全豪らしい展開となりました。いよいよテニス界も世代交代の時期に入ってきたかと期待していました。

男子テニスは10年来ビッグフォーと呼ばれた、ジョコビッチ、マレー、ナダル、フェデラーが圧倒的強さを見せ、例外はありますが、この4人が引っ張っている時代でした。2,3年前から世代交代が始まったかといわれ、その筆頭が錦織、ラオニッチ、チリッチ、ディミトロフの4人でした。

しかしこの4人もビッグフォーの壁に阻まれ、それほど良い成績を残せていませんでした。今回の全豪オープンはこの4人にとって絶好のチャンスといえます。フェデラーとナダルは昨年後半にけがのため欠場し、今回が復帰戦となりましたが、ともに30歳を超え全盛期の強さはなさそうな感じでした。

チリッチは早期敗退しましたが、残り3人は頑張っており、このうちだれが抜け出すかが今回の見どころの一つでした。しかし期待の錦織は4回戦でフルセットを頑張ったのですが、フェデラーに敗れてしまいました。錦織のライバルとして頑張ってほしいラオニッチも、準々決勝でナダルにあっさりかわされてしまいました。

結局準決勝に残ったのは、30代のフェデラー、ワウリンカ、ナダルとこのところ力をつけてきたディミトロフでした。

準決勝のフェデラー-ワウリンカ戦は5時半からでしたが、録画して夜ゆっくり見ました。復帰戦のフェデラーがすばらしいテニスで、1,2セットをあっさりと取ったところで寝てしまいました。ところがここからワウリンカが巻き返し、2-2でファイナルセットまでもつれこんだのです。結局はフェデラーが取りましたが、なかなか良い試合だったようです。

昨日のナダル-ディミトロフ戦は5時半からのライブを観戦しましたが、素晴らしい接戦となりました。二人とも良いサーブがありますが、エースで決めることはほとんどなくストローク戦となりました。ほとんどすべてのポイントが激しいラリーの末決まるというパターンで、一進一退の展開となりました。

最初のセットはナダルが取りましたが、次はディミトロフが取り返すという、本当にどちらが勝つか分からないまま、ファイナルセットまで進みました。結局ほぼ5時間という長時間の試合を勝ったのはナダルでした。

結局決勝はフェデラー-ナダルという、2009年以来の対戦となりました。この決勝をゴールデンカードという見方もあるようですが、まるで10年前に戻ってしまったようです。この荒れる全豪で新しい世代の幕開けかと思いましたが、またビッグフォーの時代に戻ってしまったようで残念な結果となってしまいました。

ガン細胞排除する仕組み解明

2017-01-27 10:38:39 | 健康・医療
京都大学の研究グループが、ガンの前段階にある細胞が周囲の正常な細胞から攻撃されて、取り除かれる仕組みを解明しました。

こういった前ガン細胞は、毎日千個以上生まれるとされていますが、遺伝子の修復機能やアポトーシスという細胞死によってガン化が防がれているようです。またそれを免れた前ガン細胞は、免疫システムによって駆除されるとされていましたが、正常細胞が攻撃するという現象が10年ほど前から見つかっています。

私はこういった免疫システムや正常細胞の攻撃が加齢によって低下し、ガンが発症してしまうと考えていました。

こういった正常細胞によるガン細胞の排除現象は、「細胞競合」と呼ばれ、2010年あたりからハエを使った研究や哺乳類でも見つかったという報告がされているようです。この現象はガンの予防という観点から、世界中で注目されているようです。

研究グループはショウジョウバエをモデル生物として使い、正常組織中に生じたガンのもとになる細胞を排除するのに必要な正常細胞の遺伝子を探索しました。

具体的にはガンのもとになる変異細胞をハエの目の組織に生じさせ、同時に正常細胞の様々な遺伝子を一つずつ破壊し、変異細胞が排除されなくなる遺伝子を探しました。その結果Sasと呼ばれるたんぱく質をコードする遺伝子が破壊されると、排除できなくなることが分かったようです。

このSasと呼ばれるタンパク質は、細胞表面に存在し、隣接する細胞の表面タンパク質と結合させることで、隣接細胞の性質を変化させることができるようです。この辺りの詳細は私もあまり理解できていませんが、ガンのもととなる細胞のPTP10Dというタンパク質と結合することを発見しました。

このPTP10Dというタンパク質と結合し活性化すると、ガン細胞内の色々な部分が不活性となり、増殖能と生存能が著しく低下し死滅するようです。この研究成果は、異常な細胞や危険な細胞を積極的に組織から排除する現象に、普遍的にかかわる可能性があり、生物学の基礎や医学研究に新たな視点をもたらすことが期待されるとしています。

研究グループはこの2つのタンパク質の作用が、ヒトを含む哺乳類でも働くかを明らかにし、新しいガン治療法につなげていきたいとしています。

私のような有機化学から見ると、このPTP10Dというタンパク質を活性化するような物質を作れば、新しいメカニズムの抗ガン剤になりうるということですが、たぶんそれほど単純なことでは無いでしょう。それでもまた新しい攻める方向が見つかったというのは、非常に興味深いと思っています。