ごっとさんのブログ

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自己免疫疾患のCAR-Tによる治療

2019-04-14 10:26:49 | 健康・医療
日本でもB細胞性白血病に発現しているCD19を標的にして、CAR-T治療が認可されました。

CAR-TとはC(キメラ)、A(抗原)、R(受容体)を略したもので、白血病の細胞表面に発現しているCD19に対する抗原結合部位と、T細胞を活性化する刺激を伝えるT細胞受容体部分が一つになった分子をコードする遺伝子を導入した自分のT細胞のことを意味します。

これを導入されたT細胞は、CD19抗原を持っている細胞ならすべてを殺すことができます。白血病に限らず、B細胞はすべてこの抗原を発現していることから、一度CAR-Tを注射すると白血病が新たに増えても次々殺してくれることが期待できます。

このようにCAR-Tの魅力は、ガンに発現する抗原からガン細胞を殺すところまで一手に引き受けてくれるところにあります。これまでの報告を総合すると、様々な治療に反応しなくなった末期の白血病でも、CAR-Tは5割以上の白血病の増殖を抑えることができます。

しかしCD19抗原は正常なB細胞にも発現しており、ガンだけでなく正常のB細胞を殺すことは予想されていました。事実CAR-Tを移植された患者では、ほぼ完全に正常B細胞が消失しています。

ガン治療から考えると正常B細胞が消えてしまうことは副作用になりますが、この副作用を逆転させて作用にできないかを考えたのがテネシー大学の研究チームです。

免疫システムが自己の成分に対して炎症を起こすことで生じるならば、免疫システムの重要な一員であるB細胞を除いてしまえば、自己免疫疾患を抑えることができるという発想です。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、自分自身の免疫システムが誤って自分の正常な細胞を攻撃してしまうという難病です。この発病に様々な自己抗原に対する抗体がつくられることが関わっていると考えられ、B細胞を除去することでSLEを治療できるのではと考えられてきました。

SLEのモデル動物としてNZWマウスを用い、CD19を標的とするCAR-Tを準備し、これを自己免疫病が発症したマウスに注射しました。

すると期待通りMRLマウスはCAR-T注入で見事にB細胞は完全に消失し、SLEの指標である抗DNA抗体は11週からほぼ完ぺきに抑えることができました。マウスの生存曲線を見ると大体6~7割のマウスが長期生存しました。

また症状の点でも尿にタンパク質は全く検出されず、脾臓肥大が治り、腎臓や皮膚の病理像が大幅に改善しました。

このデータはおそらく人間でもすぐに治験に入れそうですが、作り続けられるB細胞をCAR-Tが殺していくというサイクルをどこまで続けるかなど課題は多そうな気がします。