ごっとさんのブログ

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ガンによる経済負担1兆円は「予防可能」

2023-08-31 10:33:13 | 健康・医療
 高齢になってくるとガンの発症確率が高くなりますが、ガンは1981年以来日本人の死因1位を占め、年間100万人が罹患し、38万人が亡くなっています。

国立がん研究センターなどの研究グループが、ガンが日本社会に与える経済的負担が2015年時点で2兆8597億円に上るとの推計を発表しました。このうち禁煙やワクチン接種などで予防可能なガンが1兆円超を占めたとしています。

研究グループは「適切なガン対策は命を救うだけでなく、経済的にも重要であると示された」と述べています。リスク要因の中には、感染や喫煙など予防可能とされるものも多いようです。

研究グループは、2015年時点にガンで治療を受けた約400万人のデータを基に、治療にかかった治療費や、働けなくなったり死亡したりした場合の労働損失を推計しました。

ガン全体だけでなく、予防できるリスク要因によって引き起こされるガンについても経済的負担を産出し、全体の35%に相当する約1兆240億円と試算しています。男女とも胃ガンの経済的負担が最も高く、男性は肺ガン、女性は子宮頸ガンが続いています。

ここでガン予防について私見を述べてみます。ガンは「遺伝子変異による細胞の病気」と定義されており、その大部分は細胞増殖時に生ずる遺伝子のコピーミスによるようです。

このコピーミスはかなり生じてしまいますが、生物の体内にはこれを修復するメカニズムがあり、大部分は修復されています。また修復されなかった場合は、アポトーシスと呼ばれる細胞自死作用により死んでしまい、遺伝子変異のある細胞は生き残れないようになっています。

それでもごく稀にこれをかいくぐって生き残る細胞があり、このうちのいくつかがガン細胞となってしまうわけです。実際にほとんど増殖しない心臓にはガンは発症せず、動物のうちでほとんどガンにならないとされるゾウは、遺伝子修復能が非常に高いとされています。

つまりガンの発症は生きていくために必要な自然現象であり、これを予防することはできないというのが私の考えです。

確かに喫煙やパピローマウイルスによって遺伝子変異は起きますが、その頻度はコピーミスに比べてごく僅かで、たとえそれを完全に防いだとしても、ガンの発症率はほとんど変わらないような気がします。

最近はピロリ菌を除菌すれば、胃ガンはなくなるというような話がありますが、ほとんど影響がない程度だと思っています。

若年層にガンが増加したというと、その要因をあれこれ指摘している記事を見かけますが、あくまで自然現象が偏って見えるたまたまの状況にすぎないと思っています。

世の中にはガンの発生を促進するというようなことは多いのですが、それは無視してもガンの発生率は変わらないというのが実情ではないでしょうか。単に個人の安心感だけのような気がします。

DHAなどオメガ3脂肪酸は「肺の健康」にも重要

2023-08-30 10:37:52 | 健康・医療
肺の機能は新型コロナのような呼吸器疾患によって損なわれるだけでなく、加齢によっても低下します。

病気や化学物質への暴露、加齢が原因で起こる腫れや炎症によって気道が部分的にふさがれ、呼吸が制限される場合もあるようです。

最近新たな研究により、抗炎症作用を持つことが知られている「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる栄養素の摂取が、肺機能の低下を緩やかにすることが示されました。

オメガ3脂肪酸は、特定の構造に基づく脂肪酸の分類のひとつで、米国衛生研究所(NIH)によれば、心臓や脳の健康増進や免疫系の強化、血圧の低下、ホルモンレベルの改善に役立つとされています。

代表的なオメガ3脂肪酸としては、α―リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の3種があります。体内でオメガ3脂肪酸を作ることができないため、バランスのとれた食事によって摂取する必要があります。

ALAの摂取に向いている食材は、クルミなどのナッツ類、栄養強化卵、大豆、亜麻仁油、エゴマ油などに含まれる陸生植物の油となります。DHAやEPAは、サーモン、マグロ、サバ、イワシ、ニシンなどの海産物に含まれています。

米心臓協会は、心臓病と脳卒中のリスクを低下させるためにオメガ3脂肪酸を食事に取り入れることを薦めていますが、今回の研究は肺にとっても重要であることを示しています。

今回の研究では、まず米国人1万5000人以上の血液サンプルデータの分析を行いました。サンプル提供者の健康状態は、平均で7年間にわたって追跡されていました。参加者は人種的に多様であり、平均年齢は56歳で、人数は女性の方がやや多くなっていました。

すべての参加者の血液サンプルを測定することにより、オメガ3脂肪酸と肺機能(肺活量や最初の1秒間に吐き出す空気の量)の加齢に伴う低下の度合いとの関連を見出しました。この発見を裏付けるために、研究チームはヨーロッパ系の人たちの大規模データを分析しました。

その結果、オメガ3脂肪酸の血液中の濃度が高い人ほど、肺の健康が保たれていることが分かりました。

研究チームは現在、ヘビースモーカーや慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者など、健康状態が良好でない人のオメガ3脂肪酸の血中濃度も評価し、今回の研究と同じような関連性がみられるかどうかを調べています。

日本でもかなり前にDHAやEPAが話題となり(なんに良いかは忘れましたが)、非常に多くのサプリメント類が販売されています。

当時は当然肺への効果など分からなかったのですが、こういう成果が出るとまたサプリが売れ出すのか、様子を見たい気もします。

紫外線でリサイクルできる接着剤を開発

2023-08-29 10:36:11 | 化学
私は退職後勤務した研究所で、高分子樹脂の研究を行っていました。この高分子は被膜用の樹脂でしたが、せっかく高分子研究をするなら接着剤をやってみたいと思っていました。

接着剤には本当にいろいろな種類があり、一旦くっつくと剥がれないものや、カップヌードルの蓋のようにぺりぺりと簡単にはがせてくっついたりしないもの、ウエットティッシュの出口のように簡単に外れてまた接着できるものなど多種多様になっています。

こういった性質と化学構造とにどんな関連があるのか調べてみましたが、非常に難しそうでした。この研究所には8年も勤務しましたが、残念ながら接着剤の研究はできませんでした。

さて物質・材料研究機構(NIMS)が、波長の違う紫外線をスイッチにして強い接着と容易な剥離を両立し、リサイクルが可能となる接着剤を開発しました。プラスチックなど接着しにくい素材に対応するうえ、水中を含めた湿潤な環境でも使えるようです。

NIMS高分子研究センターでは、ムラサキイガイやフジツボなどが海岸の岩礁や船底に付着する仕組みに着目し、付着を防ぐコーティング剤などを研究していました。

今回の研究では、コーヒーをはじめ植物全体に存在する「カフェ酸」に注目しました。カフェ酸は波長365ナノメートルの紫外線を当てると分子が橋渡しをしたようにつながる架橋反応を起こし、波長254ナノメートルの紫外線を当てると脱架橋反応で元に戻る性質があります。

カフェ酸の化学構造にムラサキイガイが分泌する接着成分に多く含まれるカテコール基があることより、架橋反応によって接着強度が高まり、脱架橋反応によって接着強度がなくなる接着剤の開発を目指しました。

カフェ酸を組み込んで開発した接着剤は、まず基材に塗り365ナノメートルの紫外線を当てると表面に塗膜ができて保存が可能になります。これを80℃程度に加熱しながら基材同士を合わせると主にカテコール基部分が働いて接着します。

接着したものは無理やりはがしてまた加熱してつける操作を30回繰り返しても接着の性能は変わりませんでした。接着を止めるときは、まず接着剤に波長254ナノメートルの紫外線を当て、カフェ酸の脱架橋反応で高分子が元の直鎖上に戻り、基材から離れやすくします。

機材の表面についた接着剤を溶剤で洗い流すことで基材、接着剤共に回収し再利用できます。この接着剤は機材の制約を受けないのが特徴で、プラスチックや木、カーボン、金属などで強い接着強度が得られます。

このように紫外線で着脱でき、カテコールを含むため湿潤下や水中でも接着できるという面白い性質を持っています。

このため手術時の体内で用いる医療用接着剤や、洋上建造物の補修工事などに寄与することが見込まれるとしています。

「関節痛」の幹細胞医療が始まっている

2023-08-28 10:32:47 | 健康・医療
歳をとると「関節痛」が出る人が多くなり、私の友人知人にも悩んでいる人がかなりいます。

ほとんど運動ができなくなったり、痛みをごまかしながらゴルフをするといった話をよく聞きます。この半ば治療をあきらめている関節痛を手術せずに、再生医療を使って完治できるようになってきたようです。

日本国内に3000万人もの患者がいるとされる関節痛ですが、これだけ多くの人が悩まされているにもかかわらず、完治をあきらめている人が多いのが現状です。

近くの病院に行っても湿布薬を渡されるだけで、根本的な治療をしてもらえず、また痛んでくるが歳のせいだとあきらめてしまう人が多いようです。近年では関節痛にも「再生医療」の提供が始まっており、関節痛は完治する病気になりつつあります。

野球で活躍している大谷翔平選手が、肘の治療に「幹細胞治療」という再生医療を試したことで話題になりました。そもそも関節痛はどのようにして起きるのでしょうか。

「軟骨がすり減って痛む」といいますが、ある面では間違っており、軟骨の中には神経が無く軟骨自体が痛むことはないのです。軟骨がすり減ってくると、付近の組織が本来のバランスを保てなくなり、骨のヘリがぶつかったり筋肉が引っ張られたりして炎症が起こります。

炎症を繰り返すうちに、関節を修復する「滑膜」が過剰に反応して腫れ始めます。関節の痛みが長く続くと安静にしたくなりますが、安静にしていると靱帯が硬直したり筋肉の伸びが悪くなったりして、かえって痛みが悪化してしまいます。

こうして慢性的に「関節痛」に悩まされるようになるわけです。治療としてのリハビリには「物理療法」と「運動療法」があります。物理療法は超音波や電機の刺激で痛みを緩和するもので、運動療法はトレーニングでの身体づくりを指します。

患部への「ヒアルロン酸注射」も関節痛医療のひとつで、関節の間にある関節液にはもともとヒアルロン酸が含まれており、これを注射することで関節の動きを滑らかにしたり、痛みを抑える効果が期待できます。

また重度の関節痛の治療では、人工関節を埋め込む手術を行うこともあります。「幹細胞治療」は今まで懸念されてきたデメリットを解消しながら、より大きな効果が期待できる画期的な治療法です。

この治療では「幹細胞」を患者から取り出して培養し、体内の損傷がある部位に注入します。これは傷の修復だけでなく、すり減った軟骨の回復や変形した関節の修復にも効果があることが明らかになっています。

治療期間は症状の進行度合いによって変わりますが、大体3〜6か月程度のようです。関節痛の再生医療にはその他「PRP治療」なども開発されており、ほぼ実用化されていると言えるようです。

これには約60万円とかなり高額になりますが、完治できるのであれば試してみる価値はありそうな気もします。

脳の学習の仕組みを説いた「ヘップの法則」の先見性

2023-08-27 10:33:07 | 自然
近年脳科学は飛躍的に発展し、「記憶」や「学習」の仕組みはほぼ解明され、最も難しいとされる「意識」の問題が残っているだけという説もあります。

脳は多くのニューロン(神経細胞)が集まってできており、遺伝情報を収納している核を含む細胞体や他のニューロンからシグナルを受け取る樹状突起などいくつかの部位に分かれています。

なかでも他のニューロンにシグナルを伝える部位を軸索といい、その先端部分を軸索終末、他のニューロン接合部をシナプスと呼んでいます。

ヘップの法則とは「シナプスに結合しているニューロン同士が同時に発火するたびに情報伝達の効率が上がっていき、逆に長い間発火しなければ伝達効率が落ちる」という仮説に基づいた、学習や長期記憶についての基礎的な法則です。

この学説が注目をあ浴びるのは、発表されて20年以上たってからでした。その有効性は多くの研究結果から確認されており、今では神経科学におけるもっとも重要な法則のひとつと考えられています。

神経線維はいくつものリレーをして遠くまで信号を伝達しています。この神経線維のつなぎ目、あるいは神経線維と筋肉のつなぎ目は何が起こっているのでしょうか。神経線維同士の接点のことをシナプス、神経線維と筋肉の接点は神経筋接合部と呼ばれています。

つなぎ目にはシナプス間隙と呼ばれる隙間があり、およそ20〜40ナノメートルと、肉眼では見分けがつかないほどの微小な空間が存在しています。このおかげで電気的には隔てられているので、活動電位はここから先に伝わることはできません。

電気信号が神経の末端までくると、それを一旦化学信号に変換してから次のニューロンあるいは筋肉へと情報を伝達するといった面倒なことを行っています。

神経線維の終点にはシナプス小胞と呼ばれる化学物質が詰まった小胞が存在していて、活動電位が軸索の上を伝播してくると、小胞が神経線維の終末の細胞膜に融合し、シナプスの隙間に化学物質を放出します。

この化学物質のことを神経伝達物質と呼び、代表的なものとしてグルタミン酸やGABAが知られています。電気信号を化学物質に変換するのは効率が悪いように見えますが、この仕組みによって情報の「質」を変えることができるというのがポイントです。

情報伝達物質には様々な種類があるため、記憶や学習、喜怒哀楽などの複雑な脳の働きを可能にしているのです。

その他にもこの記憶や学習に関しては、複雑な仕組みが解明されていますが、基本的には電気信号と化学物質を使い分けることで、シナプス間隙においてドラマチックな現象が展開されていることが分かってきました。

今後記憶から意識に関することがどこまで解明されるのか興味深い点といえるようです。