けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

朝日新聞の慰安婦問題の訂正&検証記事へのコメント

2014-08-07 00:00:44 | 政治
昨日、朝日新聞が慰安婦問題に対する訂正&検証記事を掲載した。

朝日新聞Digital 2014年8月5日~6日「慰安婦問題を考える

朝日新聞Digitalは多くの記事が有料記事で会員限定だったりするが、この記事は全文を誰もが見ることができる。今日はこの記事についてコメントしてみたい。
まず、この記事の特徴を私なりに要約すると下記の様になる。

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・慰安婦問題が国際問題化した「強制連行」の唯一の根拠である吉田清治氏の全くの虚偽の証言を誤りであると認め、16もの記事の撤回を宣言した
・記事においては、慰安婦ではなく単なる労働目的の動員である「女子挺身隊」と「慰安婦」を混同して同一のものとして扱ったことを認めた
・以上の誤りを認めた上で、他紙も当初は同様の誤りの報道を行っていたことを「独立した章」まで立てて紹介し、朝日新聞だけが悪い訳ではないとの弁解を随所に織り込んでいる
・安倍政権で行った河野談話の検証で明らかになった事実を随所に織り込み、更には慰安婦報道に批判的な現代史家の秦郁彦氏にも今回の記事に対するコメントを求め、そのコメントをそのまま掲載するなど、慰安婦問題に批判的な立場の者に対しても配慮している雰囲気を一生懸命醸し出そうとしている
・ただし一方で、この様な報道の誤り、誤認が幾らあろうが、慰安婦問題が国際社会から批判されている根柢にある「女性の人権問題」に関する日本政府の加害者責任は否定されない
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特に最後の部分が今回の朝日新聞の結論であり、二日間に渡り大々的に報じてきた割に、結論としては「途中段階で色々ミスは犯したが、最終的な結論に対しては何ら揺らぐものではない」ということになる。何ともズッコケてしまいそうな結論である。
以降は上述のポイントを中心に、幾つかコメントしたい。

(1) 議論の「前提」が変わったのに「結論」が変わらない説明がない
まず、一般論として議論を有益なものにするためには、議論の出発点を「対立する両者が納得できる共通認識」からスタートさせるのが良い。お互いが好き勝手に言い合っていては議論は発散するしかしない。今回の慰安婦問題では、多分、共通認識は下記のようなものだろう。

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証拠に基づき、実際にそこで何が起きていたのかを明らかにし、その明らかになった犯罪事実に対して相応のペナルティ、謝罪、補償を行うべきである。
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多分、この出発点に対して多くの人は異論がないだろう。この様な前提条件に立って考えるとき、両者の間で議論となりえるのは、大きく分けて(a)個別の事案を裏付ける証拠能力の有無、(b)犯罪事実に対する対応(ペナルティ、謝罪、補償など)の相応性、の2点であろう。だから朝日新聞が今回訂正した議論の前提となる部分に対し、結論が変わらないというのであれば、その理由をちゃんと論理立てて説明して頂かなければ「検証」したとは言えないのである。
例えば、朝日新聞の「最終的な結論」とは「日本政府の加害者責任」の断定と慰安婦への国家賠償の必要性であるのだが、これまでの議論の「日本政府が加害者となる犯罪事実」が何であり、今回の訂正でそれが変わったのか変わらなかったのかが検証記事の中では明らかになっていない。正確には「明らかになっていない」は正しくはない。朝日新聞の主張では、これまでは「(慰安婦の)強制連行」が犯罪事実であり、その証拠が吉田証言であった。すなわち、「国家が明に加担した強制連行」が吉田証言で明らかであるから、それ相応の対応として韓国への「べた降りの謝罪」と「国家賠償」が必要であると論じていたのだが、唯一の証拠を自ら否定したのだから、まず「犯罪事実」の見直しが必要である。実際、河野発言の検証における報告書に沿って、強制連行を示す証拠が少なくとも朝鮮半島では存在しないことを朝日新聞も今回の記事の中で認めている。インドネシアなどのケースは確かに強制連行的な行為があったが、軍司令部が終戦前に強制連行の事実に気づき、関係者の処罰と慰安所の閉鎖を決めたなどの事実があり、国家として強制連行に関与していたのではなく、逆に国家としては慰安婦制度を違法なものとして制限しようとしていたことの証拠に相当するものである。朝日新聞擁護派の吉見義明氏は、「処罰はしたが厳罰にはしていない」と主張するが、厳罰であるか否かには関係なく、強制連行することを国家ぐるみで行っているなら関係者が処罰対象になる訳がないので、あくまでも軍の意向を無視した一部の関係者が独断で行ったことは認めざるを得ないだろう。そして、朝鮮半島ではこのレベルの証拠ですら見つかっていないのである。

では、朝日新聞はこの検証記事の中で犯罪事実の見直しをどの様に行ったのか?

これは、記事の中の「強制連行 自由を奪われた強制性あった」の最後の部分に要約されている。

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■読者のみなさまへ
 日本の植民地だった朝鮮や台湾では、軍の意向を受けた業者が「良い仕事がある」などとだまして多くの女性を集めることができ、軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません。一方、インドネシアなど日本軍の占領下にあった地域では、軍が現地の女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されています。共通するのは、女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる強制性があったことです。
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つまり、少なくとも朝鮮半島では軍が関与した強制連行はなく、あくまでも「女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる」という内容の事実認定に切り替えたのである。これは、今現在でも借金のかたに風俗嬢に身を落とす人が世界中にいる訳で、当時は多くの日本人も慰安婦として働き、同様に朝鮮半島でも親に身を売られた女性が数多くいたという事実と一致する。この様な悪徳業者を取り締まり、多くの女性が被害を受けることを防げなかったというのが「犯罪事実」であるならば、当初の強制連行とは全く異なるものであるのだから、当然ながら相応の対応の内容も異なるはずである。しかし、「100円盗んだのだから、100円返済すべき!」という対応と、「人を殺したのだから、逸失利益や慰謝料の弁済と、長期に渡る牢獄での拘束」という全くレベルの異なる対応を一緒くたにして「加害責任を追及するという点で、結論に変わりはない」と主張するのはあまりにも強引である。有耶無耶にして責任を回避しようという魂胆が丸見えである。

(2)何故、誤りに気が付いてから訂正までに20年かかったかの説明がない
多くの方が指摘していることだと思うが、既に1990年代には吉田証言は全くの出鱈目で、金儲けのための作り話であることが確定されていたはずであるが、にもかかわらず、なぜ15年以上も経った今頃になってから訂正を行うに至ったのか、その説明が全くなされていない。例えば、1997年には朝日新聞は吉田氏に直接、証言が虚偽であるとの多くの報道を受けての取材を行おうとしたが、本人に拒否されて「真偽は確認できない」と記事に掲載している。一方で、今回の記事掲載に当たっては、今頃になって現地で取材を行い、高々40人の人に話を聞いただけで「強制連行を裏付ける証言はない」とあっさり結論付けている。この程度のことは17年前にもできたはずだが、何故に、こうも長い間、調べれば分かる事実を黙殺し続けたのかの検証、説明が全くない。最近では読売新聞や産経新聞から名指しで「誤報を認めろ!」と非難されていたのだから、もっと早く対応できても良かったはずである。にもかかわらずこのタイミングになった理由は何か?
私の答えは、河野談話の検証報告書の存在である。あの報告書を読めば、多くの人は朝日新聞の報道姿勢に疑問を抱くはずである。多くの読者からの突き上げがあり、購読部数の維持のために、河野談話の検証報告に沿った形で「慰安婦問題の再構築」をする必要に迫られて、仕方なしに今回の訂正記事の掲載に踏み切ったのだろうと思う。しかし、決してその様なことは言えないから、この理由を説明できないのだろう。

(3)朝日新聞の誤報と訂正を長く行わなかったことによる影響の評価がない
朝日新聞が誤報を訂正しないで日本政府を糾弾し続けることで何が起きたのか?朝日新聞ではこの点に対する言及、反省が見られない。自民党の石破幹事長をはじめ多くのかたが指摘しているが、この誤報と河野談話を基に、これまで世界では慰安婦問題に対する誤った認識が定着してしまった。国連の人権委員会で日本政府を非難する1996年のクマラスワミ報告では、この朝日新聞が訂正したはずの吉田証言を根拠とした日本の非難がなされている。その後も同様に、河野談話のさす「強制性」の中に吉田証言による「強制連行」が含まれるという解釈で様々な日本非難の決議がなされたのだから、少なくとも朝日新聞が1997年時点で訂正記事を掲載していたら、現在の日韓の関係はここまで拗れていなかった可能性は高い。にもかかわらず、この当時には訂正をしていた他紙のことを同列に語り、朝日新聞の罪は他紙の罪と同レベルと勝手に決めつけるのは横暴である。

(4)議論のすり替えについて
上述の(2)にも書いたが、朝日新聞が今回、訂正記事を掲載した目的は過ちに対する反省ではなく、河野談話の検証報告により多くの国民が真実を知ることになり、これ以上騙し続けられないとの認識から、議論の再構築を行う必要性に迫られたからである。つまり、「多くの女性が辛い目にあったのは事実だから、彼女たちを助けてやろう!」という論点にすり替え、救済されるべき側(「慰安婦」というより、その背後の「挺対協」と言った方が正しいのだが・・・)の求めるものは「国家による謝罪」と「国家賠償」だから、それに応えるのが日本政府の取るべき道であると議論をすり替えようとしているのである。しかしこれは、そもそもの出発点での共通認識である「犯罪事実に対して相応のペナルティ、謝罪、補償を行うべき」から大きく逸脱したものである。

これまでの日本政府の答えは、「相応」ではないのは承知の上(賠償責任がないという意味)で、アジア女性基金を作って「総理大臣からの手紙」で謝罪し、民間基金からの一人当たり合計で500万円の補償を行うということである。日韓基本条約により言わば示談が成立しているのだから、仏心を出して追加の補償をすると、これまでの示談の実績自体がふいになってしまう。日本政府としてはギリギリの決断であり、法的な問題との整合性を保つウルトラC的な答えをひねり出したことになる。しかし、この日本政府の対応を韓国政府も一旦は同意しながらも、韓国国内の急進的・過激勢力の扇動により、補償を受けた慰安婦狩りが行われ、結局日本政府の努力は水泡に帰した。もし問題解決につなげたいならば、朝日新聞にも「犯罪事実に対して相応のペナルティ、謝罪、補償を行うべき」の立場に立って頂き、当時の日本政府の英断ともいうべきアジア女性基金の再評価を朝日新聞から韓国国民に求めるぐらいのことをして欲しいと思う。

不思議なことに、韓国の報道では朝日新聞の今回の訂正&検証記事は非常に評価されている。それは、議論の前提がひっくり返ったにも関わらず、結論だけは強引に変えないという態度を貫いたからである。朝日新聞には若干の後ろめたさがあるのだが、どうも韓国の新聞はその微妙なニュアンスが分からないようで、朝鮮日報では「朝日新聞が安倍首相に反撃」したと完全に勘違いした記事を掲載している。つまり、議論のすり替えを韓国紙は大歓迎しているのである。決して朝日新聞の反省の色を示すものでないことは明らかである。

以上が私が考えるポイントである。ちなみに、関係者からすればこれほどの大ニュースなのに、昨日も今日も報道ステーションではこの訂正記事を黙殺している。自分に不都合なことでも報道するのが「正義」と言うものだが、彼らには「正義」は無いらしい。この辺りにも、朝日新聞、テレビ朝日系の問題意識がうかがい知れる。

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笹井氏のご冥福を祈る

2014-08-06 00:48:58 | 政治
理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が亡くなった。誠に痛恨の極みであり、ご遺族の無念さは言うまでもなく、この分野における日本の損失がどれだけ大きいかを考えると、何とかならなかったのかと何ともやりきれない思いである。今はただ、ご冥福をお祈りするのみである。

報道によれば、笹井氏は心療内科を受診しており、3月頃には入院までしていたという。その後退院して記者会見を行っていたりしたから、4月の当時は少しは復活の兆しはあったのだと思う。しかし、私の周りの鬱病の方などを見ていると好不調の波が激しく、4月の記者会見以降は調子が単調に低下し、現在が不調のどん底の状況だったのだろう。思考回路が何処かでショートしたように考えがまとまらず、自殺と言う短絡的な結論を選んでしまったのだろう。ただ、一部の報道では小保方氏宛ての遺書には、「あなたのせいではない。STAP細胞を必ず再現して下さい。」とのエールを送っていたというから、STAP細胞が嘘で塗り固めた全くの出鱈目であったことの責任を取っての自殺ではなく、理化学研究所に対し、立ち直れないほどの強烈なインパクトの損失を与えてしまったことに対しての自責の念から来るものであったのだろう。

報道ステーションでは、3月に辞任の意向を笹井氏がセンター長に伝えたのに、理化学研究所が世間から責められるのを回避するために「辞任をまともに扱わず、有耶無耶にした」のが自殺の原因の様に報道していた。本当のところは分からないから間違っているかも知れないが、4月の記者会見からも明らかなように、笹井氏はSTAP現象を「現在でも最も有力な仮説」と表現しており、論文の記載やこれまでの研究成果の管理方法に杜撰な部分はあったとしても、現象そのものには虚偽がないと確信をしていたので、であれば「調査報告書もまとまっておらず、再発防止のための提言もこれからと言うときに、本当は存在するかもしれないSTAP細胞の存在の有無を確認するための調査の道筋すらつけずに辞任するのは如何なものか?あなただって信じているのでしょう?であれば、ここでの辞任は時期尚早では・・・」と引き留めるのは妥当なはずである。タイミングとしては理研や小保方氏の再現実験の報告がひとつの区切りになるから、少なくとも9月末までの引き留めは、私がセンター長でも理事長でもしていたはずである。これは、世間からの追及を逃れて責任を有耶無耶にするためではなく、極めて妥当な引き留め行為だったと考える。

一方で、笹井氏がここまで追い詰められた背景には、報道の過熱ぶりがあったと見ることができる。先日のNHKの報道番組では、笹井氏と小保方氏のラブラブ・メールの演出などは、精神的に追い込まれていた笹井氏にとって、「馬の背を折る一本の麦わら」であった可能性も否定できない。もしこの仮説が正しければ、テレ朝をはじめとする報道陣は「戦犯」そのものであり、本来は自らが責められるべき存在かも知れないが、これを振り払うために「理研叩き」を視聴者に印象付けるために、何か良く分からないロジックで「笹井氏が理研に殺された」的な誘導をしている様に見えて残念でならなかった。

察するに、今回の事件が小保方氏の精神状態にトドメを刺すことにならないかと私は心配である。この状況で小保方氏がSTAP細胞の再現実験をまともに出来るとは思えない。笹井氏がこれほどまでに精神を病んでいたのだから、小保方氏のインパクトはその何倍もあるはずである。しかし、小保方氏の現状を心配する報道機関からのコメントを私は聞いていない。少なくとも報道機関は自責の念を感じてはいないのだ。

多分、(仮にSTAP細胞が実在したとしても)この状況で小保方氏がSTAP細胞の再現に成功することは期待薄だろう。結果として、この問題への決着はさらに長い時間を要することになりそうだ。10年以上の長い年月を経ても誰も再現できないか、ないしは小保方氏以外の誰かが再現実験に成功するかのいずれかであろう。そうなれば、早くこの問題に決着を付けたい人々、それは小保方氏サイドも反小保方氏サイドも、どちらにとっても不幸な状況である。

多くの人が納得する形でこの様な状況を早く断ち切るためにはどうすれば良いのか?もう少しニュートラルな立場で報道機関は考えるべきだと思う。

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世論調査結果から学ぶ

2014-08-05 01:20:10 | 政治
先月末のテレ朝の朝まで生テレビを見ていたら、その番組の冒頭にテレ朝では珍しく、7月19日~20日に行われたFNNの世論調査結果を引用していた。今日はこの集団的自衛権に関する最近の世論調査結果を中心に最近感じていることを書かせて頂く。
まず、下記のサイトを見て頂きたい。

政治に関するFNN世論調査:2014年7月19日(土)~7月20日(日)

先程の朝まで生テレビの冒頭では、上記のサイトのQ10の質問、「Q10. 憲法解釈の変更によって集団的自衛権を使えるようにしたことについて、政府は、国民に十分な説明を行っていると思いますか、思いませんか。」に対し、十分な説明をしているとは思わない人が85.7%にも上ることを紹介していた。実際、閣議決定以降の内閣支持率は単調に下がり続け、第2次安倍政権では最低の支持率まで落ちてきている。この支持率低下の要因は色々あるが、誰に聞くまでもなく、その最大の要因が集団的自衛権行使容認の閣議決定にあることは明らかである。例えば、この時の世論調査のQ4の設問、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する「集団的自衛権」について、政府は限定的な行使ができるよう、憲法解釈を変更する閣議決定を行いました。あなたは、集団的自衛権を使えるようにしたことを評価しますか、しませんか。」に対する「評価する」割合が35.5%、「評価しない」が56%と評価しないが圧倒している。他にも、Q6、Q7の設問などでも、集団的自衛権が抑止力として機能するかとか、集団的自衛権の行使に歯止めがかかりうるるとかの設問を投げかけたが、概ね安倍内閣の主張が過半数以上の国民にとって支持されていないことが示されている。

しかし、閣議決定前の6月28日~29日に行われたこの前回の世論調査も合わせて見て頂きたい。

政治に関するFNN世論調査:2014年6月28日(土)~6月29日(日)

このQ4の設問で、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する『集団的自衛権』について、あなたのお考えに最も近いものを、次の中から1つ選んでお知らせください。」に対し、「全面的に使えるようにすべきだ」は11.1%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」が52.6%で、両方を合わせれば集団的自衛権の行使容認に肯定的な方が合わせて63.7%に上る。

これまでの議論では、概ね国民は「集団的自衛権行使の必要性」には理解を示す一方、憲法の条文に書かれている内容を解釈し直すことで、これまで禁止されていたことを可能とするという「解釈改憲」という手続きは適切ではないという評価が大半だった。しかし、今回は手続き論上の瑕疵を責めるのではなく、集団的自衛権の行使容認に対して懐疑的な傾向が強まったように感じる。この変化は、上記のふたつの世論調査結果から明らかに言えると思う。

今日コメントしたいのはこの点である。

最初の世論調査のQ10であるが、安倍政権が集団的自衛権使容認の判断を下したことに対する「説明責任を十分に果たしていない」と考える国民は85.7%であったが、私はこの結果について少々懐疑的である。例えば、首相官邸のホームページでは、7月1日の閣議決定後の記者会見の様子を文字に起こして紹介している。

首相官邸2014年7月1日「安倍内閣総理大臣記者会見

テレビでも一度は見たことがある方も多いと思うが、もう一度読み直してみると、上手に要点を説明している。最大のポイントは、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはありません。」「日本国憲法が許すのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけです。外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行いません。むしろ、万全の備えをすること自体が日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく大きな力を持っている。これが抑止力です。」である。つまり、これは解釈による「改憲」ではないとし、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許す現行憲法を逸脱することの無い内容の「閣議決定」であることを宣言している。

さらに言えば、「戦争放棄」を謳う憲法の元で「自衛隊を創設」することの合憲性、集団的自衛権が認められないと言いながら「日米安保」が現行憲法と整合が取れている点、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許すはずの憲法下で「国連PKOへの自衛隊の参加」が合法的な点など、幾つかの具体的な例を挙げながら、これらが「解釈による改憲」によりなし得たものではなく、それまでは抽象的であった憲法が許す範囲の具体的な内容を、憲法を深く読み込むことでその精神を掴みとったものとしている。そして、世界情勢の変化の中で抽象的であったものを具体的に焼き直した時に、何処までが「これまでも、そしてこれからも憲法が許すのか」を明確にする作業を行った結果を、閣議決定としてオフィシャルに立場を表明したものである。自衛隊創設にしても、日米安保にしても、そしてPKO活動にしても、その時その時はリベラル系の勢力からボロクソに叩かれていたが、しかし、今となってはどのどちらが正しかったのかは結論がでている訳である。その様な経験を通し、今回も正々堂々と集団的自衛権の議論を戦わせてきた訳である。面白いことに、安倍総理は比較的「正面突破」を図ろうと指向しているのに、野党やマスコミは「ゲリラ戦」に終始している。だから、野党による国会追求でも事の本質を掘り下げる議論などを避けて、重箱の隅を突くような論戦に終始している。
実際、国会が閉会中の中、7月14日、15日と二日間、閉会中審査で集団的自衛権の議論が行われている。あくまでも二日だけなので充分とは言えないが、この中で内閣法制局長官は、「今回の閣議決定は解釈改憲には当たらない。」と明確に答弁しており、これは上述の安倍総理の記者会見の内容と一致している。不思議なことに、先ほどのFNNの世論調査でも「解釈改憲」と明示していたが、これが国民の誤解の源なのだろう。集団的自衛権の行使容認に肯定的な産経新聞系ですら誤解するのだから、国民が誤解しても仕方がないのだが、しかし、安倍総理は明確に解釈改憲ではない旨を説明しているので、これら全ての人の「読解力」の欠如が招いた結果なのかも知れない。

そして、それ以前の問題として、安倍政権の説明責任を不十分だと指摘する人々の遺体どれだけの人が、安倍総理の記者会見の内容を読み込んでいるのかが私には気になるところである。つまり、最大限の説明の努力を仮にしていても、聞く側に聞く気がなければ全く意味がない。その結果が85.7%だとして、それは安倍総理に責任があるのかというのも議論が分かれるところかも知れない。

とは言え、あの閣議決定以降、安倍政権の支持率も集団的自衛権の行使容認への支持率も低下している。これは疑いのない事実である。せめて産経新聞や読売新聞に対してぐらい、首相官邸は「明らかな誤解の指摘」をした方が良いのではないかと思う。

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立場の違いによる番組視聴の感想の差(コメントへの回答)

2014-08-03 00:21:43 | 政治
昨日のブログにコメントを頂いた。長い長いコメントで、多くの方も同様の感想を思ったかもしれないので、こちらのブログで回答をさせて頂こうと思う。私とは見解の相違があるのだが、その根本にあるのは「私はNHKの悪意を感じる」という立場に立ち、コメントの方は「悪意という程のものはなく、客観性を感じる」という立場に立っているからであろう。だから、この辺は「それぞれ(私とコメントして下さった方)は、その様に感じてしまった」のだから仕方がなく、ご指摘は認めた上で、それに対する私の感想という内容の記事となっているのでご容赦願いたい。

まず、コメントの中の最も重要な部分を私なりに解釈すると、最後の部分に尽きるのではないかと思う。その部分を引用させて頂く。

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どうやら酢に漬けるだけでよいという簡単な小保方式STAP細胞取り出し方法では難しいと思われます。論文の多くに捏造データがあるわけで、これでは全く科学論文として成立しえないでしょう。
理研内部の恨みというより、こんな可能性の低い論文にいつまでも世間と理研内部が振り回されていることに、終止符を打ちたい人々が内部に多いのだろうと思われます。
きちんとしたマネージメントで、個々の研究者が本来の研究に打ち込める環境整備を期待しています。
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この点は私も大いに同意する部分である。私の昨日のブログの最後にもまとめたが、「STAP論文における不正行為」と「STAP細胞(現象)の存在の有無」は別物であり、「論文の多くに捏造データがあるわけで、これでは全く科学論文として成立しえない」という点は私も同意するところである。だから、これは不正の度合いの程度に応じたペナルティが課されれば良い話で、多分、STAP細胞が実在しても小保方氏は理研を追放されると私は感じている。ここで、「こんな可能性の低い論文にいつまでも世間と理研内部が振り回されていることに、終止符を打ちたい」というのは小保方氏にしても反小保方派にしても同じである。多くの人は「STAP細胞(現象)の存在の有無」の真実を知りたいと感じているから、仮にここでSTAP細胞の議論を全て封印し、小保方氏を理研から追放したとしても、それは逆に「世間と理研内部が振り回される」状態を長引かせるだけである。だから理研は9月末までと期限を切って、小保方氏にも再現実験を許可したのである。この期間内に再現実験に成功でき中田場合、実際にSTAP細胞が存在していたとしても、世間はその段階で決着が着いたと考えるだろう。その時、小保方氏に異論があるなら、STAP細胞の研究を認めてくれる研究機関を探して研究を継続すれば良い。しかし、理研がらみの問題は決着し、その後にこの問題を理研に対して蒸し返すことは許されない。この様な一種の契約の下で再現実験を行っているのであるから、もし「世間と理研内部が振り回される」状態を早期に断ち切りたいなら、現在の小保方氏の研究の足を引っ張る行為は、目的に対して真逆の行動と言わざるを得ない。NHKのバングにの内容は、タイトルこそ研究不正ではあったが、その結果を待たずにこのタイミングで「STAP論文における不正行為」の認定に合わせて「STAP細胞(現象)の存在」の否定までを行っている内容である。様々な情報リークについても、小保方氏の研究環境を乱すための内容であり、このまま行けば、仮に9月末にSTAP細胞の再現が出来なかったとしても、小保方氏サイドが「研究環境を乱されて研究に集中できなかったから再現できなかった。このままでは納得できない。」などと言いだす口実を与える様なもので、良識ある者であれば9月を待って決着を付ければ良いだけの話である。それを9月末より前に幕引きを図ろうとする行為には、私は「悪意」以外の何物でもないと感じてしまう。

最初の立場の相違については、この様な点に私は立っている。

次に、今回のNHKは物凄い量の情報を入手していた。私はTwitterをやらないので詳細は知らないが、理研内部の誰かがNHKが入手していた情報と同種のリークを頻繁に行っており、NHKはその情報源にアクセスして様々な情報を不正に入手したものと予想される。コメントの中では「内部告発的にマスコミにリークすることはあり得る」とのことであったが、「内部告発」と「情報のリーク」は似ていて非なるものだと思う。一般に「内部告発」とは、組織が隠蔽しようとしている事実に対し、その組織ぐるみの隠ぺい行為を防ぐことを目的として行うものである。一方で「情報のリーク」は政治家などが多用し、報道陣を自らの意図する方向に誘導することを目的として、幾つかあるうちの情報を選別し、誘導に有利な情報だけが全ての様に報道機関に提供することである。多くの場合にはそこには(程度の大小はあるが)悪意が存在し、遺恨や腹いせなどの不純な動機などが背景にある場合も少なくない。少なくとも、この様な不純な動機がある場合には「内部告発」と言えるものではない。例えば、笹井教授と小保方氏のメールの暴露などは、理研として組織ぐるみの隠ぺい行為をしていた訳ではないし、その様なメールも含めて調査委員会は調査していたはずである。個別の個人情報にも相当するメールの公開は、調査報告の本質にかかわるものではなければ公開しないのが妥当だし、この様なものが「内部告発」だと考えるのは公平性に欠けると私は思う。

ES細胞が発見された件についても、仮に小保方氏が悪意を持って若山教授から盗んだとしても、それはSTAP細胞論争の動かぬ証拠ではない。例えて言えば、殺人事件の犯人を捜している時、殺人の動機をもつ一人がアリバイを主張していたとして、そのアリバイが崩れたからと言ってその人を犯人と決めたりはしない。その人が犯人である証拠が最低限必要で、アリバイの成立の有無は捜査対象の一人とするか否かの判断材料でしかない。つまり、今回の情報リークは小保方氏がES細胞を使って偽データを作っていた証拠ではなく、ES細胞を使って偽データを作っていた可能性を単に示すものである。しかし、あの番組を見た視聴者はその様には感じなかったはずである。「物的証拠が見つかった」とミスリードされた方が大半だったと思う。だから、この様な単なる可能性のひとつを誘導するように開示するのはやはり「内部告発」ではない。何らかの方向に誘導する「情報リーク」に相当する。
ただ、小保方氏の周りには、(小保方氏の故意によるものか否かは不明だが)この様な疑念が多く存在することは事実であり、その点は私は否定しない。だから、その疑念を一つ一つ、NHKは肯定派/否定派の両方の立場から検証を行えば、悪意をもった誘導などと言われずに済んだと思う。しかし実際には、番組中にはその様な逆の立場からの検証など何一つなかった。

そもそも、今回の小保方氏の「世紀の大発見」は理研としては組織を挙げての一世一代の大勝負であり、笹井氏や丹羽氏なども何よりも先に「ES細胞の間違い」であることを疑ったはずである。何故なら、ES細胞が混入しなたなどと言うのは極めて初歩的なミスであるはずだから、それが小保方氏が意図的に混入したことも含めて、徹底的に検証を行ったはずである。実際、何度も行われた笹井氏や丹羽氏の記者会見でも、彼らは小保方氏の研究不正は非難しながらも、ES細胞混入説には明確に反論している。この辺は、多くの有識者も「単なる普通のES細胞の間違いでした、チャンチャン、という話ではない。仮にES細胞だとしても、小保方氏が持ち得ない(別の第三者の)特殊な技能を駆使して、笹井氏や丹羽氏なども騙せるような特殊な加工を細胞にしていなければ、今回のケースは説明できない。」と言ったコメントを出している。だから今回のES細胞の発見で、単にアリバイが崩れて「さあ、犯人ですね!」というのは余りに短絡的過ぎるのである。

NHKの過剰な取材による小保方氏の怪我も、これも見方に寄って意見が分かれることを知った。私の感覚では、例えば虐め事件で生徒が自殺し、加害者に聞いたら「そんな酷いことはしていない」と言うだろうが、被害者側がどの様に感じるかと言う点を無視して一方的にその様な主張をしていたら、それは世間的には絶対に許されないはずである。精神的に追い詰められ、「あれで、よく鬱病にならないものだ・・・」と感じる状況にある小保方氏を追い詰め、小保方氏がエスカレータを逆走したのに「そんな無茶する方が悪い」というのは虐め事件の構図に似ている。虐められた生徒がトイレに逃げ込んだとき、そのトイレに張って生徒が出てこれない様にしたとき、当然、虐めた側は「いや、ただトイレの前にいただけ・・・」と悪意がないと主張するだろうが、普通ならばそんな虐めっ子の言い分が通るはずがない。仮に小保方氏に弁護士がついていたとしても、弁護士がついていれば許される様な行為ではない。コメントされた方もその点は理解した上でのコメントだろうが、NHKの悪意を感じた私は「虐めそのものだろ!」と思うのだが、NHKの客観性を感じると「悪いことをした人が逃げ回って怪我をした」となるのかも知れない。例えて言えば、オウム真理教の信者が事件の際にテレビ局に追い回され、それで逃亡しようとして怪我をしても、多分、一般の視聴者は加害者側のテレビ局を責めたりはしないだろう。ただ、私は逆の意見で、法の下の支配にある以上、相手が極悪人であろうが何であろうが、法に則って処罰を受けるより前に怪我をするような行為は、それは法治国家として決して許されないと信じている。

なお、最後に補足であるが、「正式に特許と認められる期限は14年の10月」とあるが、これは正確ではない。下記の記事の通りであるが、若干補足しておきたい。

J-castニュース2014年6月13日「宙に浮いた『STAP細胞』特許 手続き締切日はあと数か月

特許と言うのは国毎に出願しなければ効力がない。ただ、ある国1か国に正式出願すると共に、PCT出願と呼ばれる国際出願手続きを行うことが出来る。これは言ってみれば、「これから各国に出願しますよ。それは、最初の出願国の特許の内容、そのままですよ!」と宣言するものであり、言語は問われない。例えば、小保方氏の場合にはアメリカに出願したので英語で特許が書かれているのだろうが、アメリカに加えて日本や中国、フランス、ドイツなど各国に出願するには日本語、中国語、フランス語、ドイツ語などへの翻訳が必要となる。PCT出願をすると一定期間は翻訳などの猶予が与えられ、その様な各国への出願のし直しのことを「国内移行」と言う。この締切が2014年10月24日だという。間に合わないかどうかは微妙であり、通常は国際特許事務所では翻訳作業などもやってくれる。特許の内容を詳細に説明しておけば、国際特許事務所はそれなりの精度で現地語の明細書を作成してくれるだろうから、間に合わない訳ではないと思う。ただ、英語と日本語程度であれば、発明を行った担当者が翻訳された明細書を読み直し、不備があれば添削をするはずである。小保方氏にはその余裕はないだろうから、別の連名の研究者が添削を行うのだろうが、連名者は相当な高いポジションの人だから、STAP細胞の真偽があやふやな現状で、その添削の稼働を割けるかどうかは怪しい。間に合わない確率が20%、強引に間に合わせる確率が80%ぐらいだろうか?

色々と一方的にコメントされた方に反論をしてしまい、気分を害されるのではないかと心配ではあるが、それは私の意図するところではない。もしそうであれば、謙虚に謝罪したいと思う。ただ、この様な議論はあっても良いのではないかと信じている。立場が変わると、全く真逆の考え方をするのは良くある話で、その時に「理解できない!」というのではなく、「ああ、こういう立場だとこういう考え方をするのか・・・」という理解に繋がれば良いのではないかと思う。

少々、長ったらしくなってなってしまったが、久しぶりのコメントで嬉しくなって(単なるコメントへの回答なのに)長文になってしまった。

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小保方氏の「研究不正」とNHKの「報道不正」

2014-08-02 01:33:16 | 政治
最近は中々タイムリーにメールを書くことが出来ない。ある程度、毎日書く癖がついていた時は良いが、一旦、間が空くと億劫になって間が空いてしまう。そんな中、今日も産経新聞が小保方氏の記事を掲載しており、思い出したように27日の日曜日にNHKで放送された「NHKスペシャル『調査報告STAP細胞 不正の深層』」についてのコメントを書かせて頂く。その前に産経新聞の記事にある程度の説明があるので引用させて頂く。

産経新聞2014年8月1日「【関西の議論】トイレまで小保方氏深追いしたNHK、右手けがで実験に“支障”…『集団リンチ』と代理人を激高させたNスペの顛末

私はこの日、別の作業をしながらの「ながら視聴」であったのと、放送から日数が経ったので忘れた部分があり、誤りの指摘もあるかも知れないが、その際にはご指摘をお願いしたい。

まずこの記事にも記載があるのだが、この番組の構成は明らかで、理化学研究所が行った研究不正の調査結果報告に対し、更なる「深層」が背景にあることを糾弾する構成になっている。小保方氏の代理人を務める三木弁護士によれば、「これまで小保方氏に批判的なコメントをしてきた研究者ばかりを集めて議論させるなど、偏向している。見るに堪えない番組」とのことで、立場的に一方に偏向している批判的な研究者だけに対して取材を行い、逆の立場からの主張や検証は一切なかった。そんな中で幾つか気になった部分についてピックアップしてみたい。

まず、下記の記事を見て頂きたい。

産経新聞2014年7月22日「理研が解析結果を訂正 若山教授のマウスの可能性も

山梨大学の若山教授はこれまでにも何度か話題に上っていたが、どうもこの教授の言動は自らの保身にバイアスがかかった感が強い。初期の頃よりマスコミからは若山教授からの情報発信として紹介された記事が独り歩きし、小保方氏が作成したSTAP細胞が若山提供のマウス由来ではないとの「断定的」な報道が繰り返されてきた。その後、詳細を知る人のコメントによれば、若山氏によるマスコミに対する情報伝達の仕方が不適切で、疑わしいのは事実ではあるが、少なくとも断定できる状況にはないことが知られていた。この記事の報道によれば、少なくとも理化学研究所と山梨大学は、少なくとも小保方氏が作成したSTAP細胞が若山氏提供のマウスで作製されていた可能性があることを認めたことになる。この記事には記載がないが、朝日新聞によれば山梨大学のホームページにも同様の訂正が掲載されているらしい。ただ、どうも若山氏はこの情報の訂正は不本意なようで、本音では「若山氏提供のマウス由来の可能性は残るが、実際には違っているのでは・・・」と思っている節がある。少々若山氏に同情するならば、彼は今回の問題の責任を全て理化学研究所から押し付けられるのではないかという強い危機感を持っていて、自分に罪はないという証拠を何としてでも見つけたいと思っている様だ。だから、今回の訂正は折角これまでに築いた防御線を破壊される様で不満なのだろう。しかし、この訂正の背景にあるのは、小保方氏に提供したマウスに組み込まれた遺伝子は、若山氏の提供したマウスであるか否かをトレースするのに不十分な「不良品」の状態であり、結果的に自らの身を守り小保方氏を断罪するためにも利用できなければ、小保方氏の潔白を証明するのにも利用できないという、何ともプロフェッショナルさのかけらもない中途半端なものだったらしい。小保方氏からしてみれば、「若山氏提供のマウスではない!」との断定的な報道で致命傷を負ったのだから、少なくともその致命傷に対する原状回復をしてもらわなければならないのだが、少なくとも若山氏には積極的にその様な行動に出るつもりはないらしい。今後、仮にSTAP細胞の存在が証明されたなら、何らかの法的措置を取られる可能性はあるだろう。それは結果的に、若山氏は保身に走ろうとし過ぎてドツボにはまったことになる。

さて話を戻せば、この様な事実が放送の4日ほど前には明らかになっていたのだが、NHKの番組ではこの事実には触れていなかったと思う。逆に、素人目には理化学研究所と山梨大の訂正以前の主張をそのまま継続的に採用している。公平性を期すはずのNHKらしからぬ立場である。

次に、天下のNHKがこの様な突っ走った行動の背景を考えてみたい。この番組を見ていて驚くのは、NHKが非常に多くの情報を入手していることである。少なくとも小保方氏の2冊の研究ノートのコピーをNHKは入手しているらしい。しかし、一般的に研究ノートには著作権があり、そこに書いてある機密事項を不正に入手し、それを公開して理化学研究所に損失を負わせたならば、NHKには膨大な損害賠償を含む法的措置が待ち受けることになる。仮にSTAP細胞が存在する場合、その研究ノートには何らかのSTAP細胞作製のレシピのヒントが記載されている可能性もあった訳だから、理化学研究所にとっては最重要な極秘文書との位置づけであったはずである。他にも理化学研究所の内部の人間しか知り得ない情報を多くNHKが握っていることが明らかになっている。実際、笹井教授と小保方氏のメールのやり取りの記録が暴露されており、研究不正の調査に当たったメンバにしか入手不可能な情報が漏えいしているのは明らかだ。これは調査委員会のメンバーが漏えいしたのではなく、その調査状況ないしは報告書などにアクセスする権限を持った人が、意図的にリークしていることを意味している。当然NHKはその人物とのコンタクトがある訳で、その人が小保方氏に対して悪意を抱いていることはNHKは十分に把握可能な立場にある。それが誰なのかはNHKは死んでも明かさないだろうが、相当、バイアスがかかった情報の提供があった場合、プロの報道関係者ならばそれを短絡的に記事にすることはしない。必ず反対側の立場からの検証を行うはずであるが、少なくとも番組中ではその様なスタンスからの検証はなかったように思う。

これは、元々若山教授が理化学研究所にいたときに作成したES細胞が小保方氏の研究室内の冷蔵庫に保管されていたという事実を指摘していた件でも同様でのことが言える。若山教授が自らの保身のために小保方氏の不正を確定したいという願望を持っている中で、若山研究室の留学生があたかも「小保方氏がそのES細胞を不正に入手した」かのような発言をしているのに対し、相当偏ったバイアスがかかっている可能性をどの様に扱うべきかにも関連している。現実問題として、小保方氏の研究態度が杜撰であるのと同様に、若山教授の態度も相当杜撰なものがある。若山氏が理化学研究所から山梨大学へ研究室の引っ越しをするドタバタの中で、何らかの理由で研究の上で親交のある小保方氏の保管庫を利用したという可能性は十分に考えられる。通常はその様な杜撰なことをしないとしても、研究者としてはまだまだアマチュアな留学生のアシスタントがその様なことをしてもおかしくはない。その留学生が自らの落ち度の可能性を正直に告白するとも思えないから、当然ながらその主張は十分に疑って検証を試みる必要があるはずだ。しかし、こちらにしてもその様な検証の形跡はない。

ちなみに、NHKも全くそのような反対側の立場からの言い分を収集しなくて良いとは思っていなかったのだろことは容易に想像でき、多分、その反証が小保方氏への突撃取材だったのだろう。しかし、精神的にも追い詰められた若き女性に怪我を負わせるまでに悪質な取材を何時間にも渡り続けることで反証にしようというのは余りにアマチュア過ぎる。小保方氏が取材を拒否するのは明らかだろうから、当然、その他のアプローチで何とかすべきだが、しかしNHKは小保方氏には悪質な取材を謝罪しながら、反対側の立場からの検証は無視して黙殺した。これでSTAP細胞が実在しようものなら、小保方氏側の法的措置を含めて、相当な打撃を受けることは間違いない。益々、NHKは引くに引けなくなってしまったのではないか?まるで、慰安婦問題をもはや訂正できなくなっている朝日新聞と立場は近いかも知れない。

次に、NHKは理化学研究所が論文発表を急いだ理由を、米国への特許の仮出願制度の締め切りが迫っていたから焦ったとしていたが、これは少々不思議な説明である。まず、米国の特許仮出願制度についての説明は下記のページに記されている。

外国産業財産権制度相談「米国の仮出願の制度について教えてほしい。

この記事を読めば分かるが、仮出願制度はあくまでも特許の正式出願の前に「唾を付ける」様な制度で、完全な特許明細書の提出の代わりに不完全な特許の内訳を示す資料を特許庁に提出し、その発明の権利を最初に得たのは仮出願者であることを宣言するための制度である。勿論、その仮出願に記載のない技術までは権利が及ばないから、何処までの権利かを明示するのに十分な資料の提出は必要だが、完全な明細書の体裁を整えたり、英語以外の言語での仮の権利確保に利用することが出来る。そして、その仮出願から1年以内に本出願をする必要があり、出願をすることでその権利を確定させることができる。
ただし、ここには仮出願から1年という日付と論文提出が関連する制約など何もない。一般に論文は投稿されてから、実際にNatureなどの雑誌に公開されるまで日数がある。これには査読などに要する期間が含まれているのだが、何らかの雑誌の特集号に狙い撃ちして論文投稿するのでなければ、一般には投稿した日と雑誌に公開される日付には規則性がない。特許が有効である条件は、この雑誌に公開される日(すなわち、その雑誌の発行日)において出願が完了されていれば特許としての権利は成立するから、論文への投稿により特許(仮)出願の出願日は制約を受けても、逆に特許の出願のために論文投稿の日程を急がなければならない理由はどこにもない。この様に少し考えれば不自然なことなのだが、何処からもツッコミが入らずに放送で指摘するのだから、こちらの「報道不正」も大したものである。

最後に、番組中で誰もが違和感ももって見たシーンについて指摘したい。それは、笹井教授と小保方氏の間で交わされたメールの朗読のシーンである。明らかに報道番組とは異質な、「ラブラブ・オーラ」満載の少女向けアニメの主人公の男女の会話の様な朗読であった。このシーンの演出は、「なんだ!笹井と小保方が男女の関係だったのが諸悪の根源だったのか!!」と視聴者に決定的な印象を植え付けようとするかのような悪意に満ちたものだった。これが天下のNHKのやることかと疑りたくなるような、あまりにお下劣極まりないものだった。

私のスタンスは、「STAP論文における不正行為」と「STAP細胞(現象)の存在の有無」とは別物で、「STAP論文における不正行為」は不正の度合いの程度に応じてペナルティを与えれば良いが、だからと言って「STAP細胞(現象)の存在の有無」まで否定されるべきものではなく、仮に存在するとしたならば、早期にその事実を検証して権利化や技術の確立を図ることで、国益を守り抜くのが最重要であるとの立場である。どうも理化学研究所内部には小保方氏に対する恨みを抱く悪意に満ちた存在がいて、理化学研究所の外部の人々と結託して彼女を研究の分野から抹殺しようと試みているように見える。当然、その人にとって都合の良い情報は報道機関にリークされ、報道機関はそのリークに踊らされている。大々的なネガティブキャンペーンであり、慰安婦発言直後の橋下大阪市長の様な雰囲気である。

日本にこの様な土壌があるのは我々としては忘れてはならない。それは最近の政治の世界でも同様である。しかし、その様な勢力に負けてはいけないのである。あと2か月の間で小保方氏に何が出来るか?残された時間はそう長くはない。

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