先月末のテレ朝の朝まで生テレビを見ていたら、その番組の冒頭にテレ朝では珍しく、7月19日~20日に行われたFNNの世論調査結果を引用していた。今日はこの集団的自衛権に関する最近の世論調査結果を中心に最近感じていることを書かせて頂く。
まず、下記のサイトを見て頂きたい。
「政治に関するFNN世論調査:2014年7月19日(土)~7月20日(日)」
先程の朝まで生テレビの冒頭では、上記のサイトのQ10の質問、「Q10. 憲法解釈の変更によって集団的自衛権を使えるようにしたことについて、政府は、国民に十分な説明を行っていると思いますか、思いませんか。」に対し、十分な説明をしているとは思わない人が85.7%にも上ることを紹介していた。実際、閣議決定以降の内閣支持率は単調に下がり続け、第2次安倍政権では最低の支持率まで落ちてきている。この支持率低下の要因は色々あるが、誰に聞くまでもなく、その最大の要因が集団的自衛権行使容認の閣議決定にあることは明らかである。例えば、この時の世論調査のQ4の設問、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する「集団的自衛権」について、政府は限定的な行使ができるよう、憲法解釈を変更する閣議決定を行いました。あなたは、集団的自衛権を使えるようにしたことを評価しますか、しませんか。」に対する「評価する」割合が35.5%、「評価しない」が56%と評価しないが圧倒している。他にも、Q6、Q7の設問などでも、集団的自衛権が抑止力として機能するかとか、集団的自衛権の行使に歯止めがかかりうるるとかの設問を投げかけたが、概ね安倍内閣の主張が過半数以上の国民にとって支持されていないことが示されている。
しかし、閣議決定前の6月28日~29日に行われたこの前回の世論調査も合わせて見て頂きたい。
「政治に関するFNN世論調査:2014年6月28日(土)~6月29日(日)」
このQ4の設問で、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する『集団的自衛権』について、あなたのお考えに最も近いものを、次の中から1つ選んでお知らせください。」に対し、「全面的に使えるようにすべきだ」は11.1%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」が52.6%で、両方を合わせれば集団的自衛権の行使容認に肯定的な方が合わせて63.7%に上る。
これまでの議論では、概ね国民は「集団的自衛権行使の必要性」には理解を示す一方、憲法の条文に書かれている内容を解釈し直すことで、これまで禁止されていたことを可能とするという「解釈改憲」という手続きは適切ではないという評価が大半だった。しかし、今回は手続き論上の瑕疵を責めるのではなく、集団的自衛権の行使容認に対して懐疑的な傾向が強まったように感じる。この変化は、上記のふたつの世論調査結果から明らかに言えると思う。
今日コメントしたいのはこの点である。
最初の世論調査のQ10であるが、安倍政権が集団的自衛権使容認の判断を下したことに対する「説明責任を十分に果たしていない」と考える国民は85.7%であったが、私はこの結果について少々懐疑的である。例えば、首相官邸のホームページでは、7月1日の閣議決定後の記者会見の様子を文字に起こして紹介している。
首相官邸2014年7月1日「安倍内閣総理大臣記者会見」
テレビでも一度は見たことがある方も多いと思うが、もう一度読み直してみると、上手に要点を説明している。最大のポイントは、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはありません。」「日本国憲法が許すのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけです。外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行いません。むしろ、万全の備えをすること自体が日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく大きな力を持っている。これが抑止力です。」である。つまり、これは解釈による「改憲」ではないとし、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許す現行憲法を逸脱することの無い内容の「閣議決定」であることを宣言している。
さらに言えば、「戦争放棄」を謳う憲法の元で「自衛隊を創設」することの合憲性、集団的自衛権が認められないと言いながら「日米安保」が現行憲法と整合が取れている点、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許すはずの憲法下で「国連PKOへの自衛隊の参加」が合法的な点など、幾つかの具体的な例を挙げながら、これらが「解釈による改憲」によりなし得たものではなく、それまでは抽象的であった憲法が許す範囲の具体的な内容を、憲法を深く読み込むことでその精神を掴みとったものとしている。そして、世界情勢の変化の中で抽象的であったものを具体的に焼き直した時に、何処までが「これまでも、そしてこれからも憲法が許すのか」を明確にする作業を行った結果を、閣議決定としてオフィシャルに立場を表明したものである。自衛隊創設にしても、日米安保にしても、そしてPKO活動にしても、その時その時はリベラル系の勢力からボロクソに叩かれていたが、しかし、今となってはどのどちらが正しかったのかは結論がでている訳である。その様な経験を通し、今回も正々堂々と集団的自衛権の議論を戦わせてきた訳である。面白いことに、安倍総理は比較的「正面突破」を図ろうと指向しているのに、野党やマスコミは「ゲリラ戦」に終始している。だから、野党による国会追求でも事の本質を掘り下げる議論などを避けて、重箱の隅を突くような論戦に終始している。
実際、国会が閉会中の中、7月14日、15日と二日間、閉会中審査で集団的自衛権の議論が行われている。あくまでも二日だけなので充分とは言えないが、この中で内閣法制局長官は、「今回の閣議決定は解釈改憲には当たらない。」と明確に答弁しており、これは上述の安倍総理の記者会見の内容と一致している。不思議なことに、先ほどのFNNの世論調査でも「解釈改憲」と明示していたが、これが国民の誤解の源なのだろう。集団的自衛権の行使容認に肯定的な産経新聞系ですら誤解するのだから、国民が誤解しても仕方がないのだが、しかし、安倍総理は明確に解釈改憲ではない旨を説明しているので、これら全ての人の「読解力」の欠如が招いた結果なのかも知れない。
そして、それ以前の問題として、安倍政権の説明責任を不十分だと指摘する人々の遺体どれだけの人が、安倍総理の記者会見の内容を読み込んでいるのかが私には気になるところである。つまり、最大限の説明の努力を仮にしていても、聞く側に聞く気がなければ全く意味がない。その結果が85.7%だとして、それは安倍総理に責任があるのかというのも議論が分かれるところかも知れない。
とは言え、あの閣議決定以降、安倍政権の支持率も集団的自衛権の行使容認への支持率も低下している。これは疑いのない事実である。せめて産経新聞や読売新聞に対してぐらい、首相官邸は「明らかな誤解の指摘」をした方が良いのではないかと思う。
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まず、下記のサイトを見て頂きたい。
「政治に関するFNN世論調査:2014年7月19日(土)~7月20日(日)」
先程の朝まで生テレビの冒頭では、上記のサイトのQ10の質問、「Q10. 憲法解釈の変更によって集団的自衛権を使えるようにしたことについて、政府は、国民に十分な説明を行っていると思いますか、思いませんか。」に対し、十分な説明をしているとは思わない人が85.7%にも上ることを紹介していた。実際、閣議決定以降の内閣支持率は単調に下がり続け、第2次安倍政権では最低の支持率まで落ちてきている。この支持率低下の要因は色々あるが、誰に聞くまでもなく、その最大の要因が集団的自衛権行使容認の閣議決定にあることは明らかである。例えば、この時の世論調査のQ4の設問、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する「集団的自衛権」について、政府は限定的な行使ができるよう、憲法解釈を変更する閣議決定を行いました。あなたは、集団的自衛権を使えるようにしたことを評価しますか、しませんか。」に対する「評価する」割合が35.5%、「評価しない」が56%と評価しないが圧倒している。他にも、Q6、Q7の設問などでも、集団的自衛権が抑止力として機能するかとか、集団的自衛権の行使に歯止めがかかりうるるとかの設問を投げかけたが、概ね安倍内閣の主張が過半数以上の国民にとって支持されていないことが示されている。
しかし、閣議決定前の6月28日~29日に行われたこの前回の世論調査も合わせて見て頂きたい。
「政治に関するFNN世論調査:2014年6月28日(土)~6月29日(日)」
このQ4の設問で、「Q4. 同盟国アメリカなど、日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本に対する攻撃とみなして、一緒に反撃する『集団的自衛権』について、あなたのお考えに最も近いものを、次の中から1つ選んでお知らせください。」に対し、「全面的に使えるようにすべきだ」は11.1%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」が52.6%で、両方を合わせれば集団的自衛権の行使容認に肯定的な方が合わせて63.7%に上る。
これまでの議論では、概ね国民は「集団的自衛権行使の必要性」には理解を示す一方、憲法の条文に書かれている内容を解釈し直すことで、これまで禁止されていたことを可能とするという「解釈改憲」という手続きは適切ではないという評価が大半だった。しかし、今回は手続き論上の瑕疵を責めるのではなく、集団的自衛権の行使容認に対して懐疑的な傾向が強まったように感じる。この変化は、上記のふたつの世論調査結果から明らかに言えると思う。
今日コメントしたいのはこの点である。
最初の世論調査のQ10であるが、安倍政権が集団的自衛権使容認の判断を下したことに対する「説明責任を十分に果たしていない」と考える国民は85.7%であったが、私はこの結果について少々懐疑的である。例えば、首相官邸のホームページでは、7月1日の閣議決定後の記者会見の様子を文字に起こして紹介している。
首相官邸2014年7月1日「安倍内閣総理大臣記者会見」
テレビでも一度は見たことがある方も多いと思うが、もう一度読み直してみると、上手に要点を説明している。最大のポイントは、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはありません。」「日本国憲法が許すのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけです。外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行いません。むしろ、万全の備えをすること自体が日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく大きな力を持っている。これが抑止力です。」である。つまり、これは解釈による「改憲」ではないとし、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許す現行憲法を逸脱することの無い内容の「閣議決定」であることを宣言している。
さらに言えば、「戦争放棄」を謳う憲法の元で「自衛隊を創設」することの合憲性、集団的自衛権が認められないと言いながら「日米安保」が現行憲法と整合が取れている点、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許すはずの憲法下で「国連PKOへの自衛隊の参加」が合法的な点など、幾つかの具体的な例を挙げながら、これらが「解釈による改憲」によりなし得たものではなく、それまでは抽象的であった憲法が許す範囲の具体的な内容を、憲法を深く読み込むことでその精神を掴みとったものとしている。そして、世界情勢の変化の中で抽象的であったものを具体的に焼き直した時に、何処までが「これまでも、そしてこれからも憲法が許すのか」を明確にする作業を行った結果を、閣議決定としてオフィシャルに立場を表明したものである。自衛隊創設にしても、日米安保にしても、そしてPKO活動にしても、その時その時はリベラル系の勢力からボロクソに叩かれていたが、しかし、今となってはどのどちらが正しかったのかは結論がでている訳である。その様な経験を通し、今回も正々堂々と集団的自衛権の議論を戦わせてきた訳である。面白いことに、安倍総理は比較的「正面突破」を図ろうと指向しているのに、野党やマスコミは「ゲリラ戦」に終始している。だから、野党による国会追求でも事の本質を掘り下げる議論などを避けて、重箱の隅を突くような論戦に終始している。
実際、国会が閉会中の中、7月14日、15日と二日間、閉会中審査で集団的自衛権の議論が行われている。あくまでも二日だけなので充分とは言えないが、この中で内閣法制局長官は、「今回の閣議決定は解釈改憲には当たらない。」と明確に答弁しており、これは上述の安倍総理の記者会見の内容と一致している。不思議なことに、先ほどのFNNの世論調査でも「解釈改憲」と明示していたが、これが国民の誤解の源なのだろう。集団的自衛権の行使容認に肯定的な産経新聞系ですら誤解するのだから、国民が誤解しても仕方がないのだが、しかし、安倍総理は明確に解釈改憲ではない旨を説明しているので、これら全ての人の「読解力」の欠如が招いた結果なのかも知れない。
そして、それ以前の問題として、安倍政権の説明責任を不十分だと指摘する人々の遺体どれだけの人が、安倍総理の記者会見の内容を読み込んでいるのかが私には気になるところである。つまり、最大限の説明の努力を仮にしていても、聞く側に聞く気がなければ全く意味がない。その結果が85.7%だとして、それは安倍総理に責任があるのかというのも議論が分かれるところかも知れない。
とは言え、あの閣議決定以降、安倍政権の支持率も集団的自衛権の行使容認への支持率も低下している。これは疑いのない事実である。せめて産経新聞や読売新聞に対してぐらい、首相官邸は「明らかな誤解の指摘」をした方が良いのではないかと思う。
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